司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

本人に無断で理事就任の登記をした事件

2010-04-21 19:18:58 | 法人制度
毎日新聞記事(4月16日)
http://mainichi.jp/area/saga/news/20100416ddlk41040473000c.html

産経新聞記事(3月24日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100324-00000044-san-soci

 いささか旧聞に属するが,「財団法人黒澤明文化振興財団」が本人らに無断で,ジョージ・ルーカス,スティーブン・スピルバーグ及びマーティン・スコセッシの3氏が理事に就任した旨の登記をしていたそうだ。

 さて,どうなるのか?

 就任承諾がないということであれば,理事の就任の登記は,登記事項無効により抹消すべきということになる。

 同財団法人の定款によれば,理事の員数は,「7人以上12人以内」(第16条第1項)であるが,現任の理事数は3名(上記3名は,当然除かれている。)ということである。これは,定款所定の員数を満たしていない状態である。

 したがって,抹消の登記と同時に,辞任又は任期満了による退任の登記がされた「前理事」の登記の抹消回復をする必要がある。彼らは,定款第19条第2項の規定により「任期が伸長されている」からである。

 よって,5月に開催される理事会には,それまでに評議員会(この財団法人は,評議員会の招集については,理事長の権限で行うことが可能である。)が新理事を選任していないのであれば,「前理事」たちにも招集の手続をとらねばならない。この場合,特例財団法人の「理事会」であり,法定の機関ではないから,招集の手続に関する定款第25条第3項に違反するに過ぎないわけであるが,法的に瑕疵があることになる。

cf. 財団法人黒澤明文化振興財団寄附行為
http://www.kurosawa-foundation.com/dotation_rule.html

 おそらく,任期満了による改選の時期に,総数7名を確保しなければならないにもかかわらず,後任者が見つからなかった(大物映画監督が理事に名前を連ねていると見せかけて,対外的信用の増進を図ろうとする目的もあったものと思われる。)ことからの,苦肉の策であったのだろう。

 こういう事件があると,取締役,理事等の役員の就任の登記の際には,印鑑証明書の添付を義務付ける動きが起きるかもしれない。就任承諾書について,議事録の記載の援用が認められている取扱いも,否定されることになるかもしれない。法律上第三者責任を負うべき役員の就任承諾に関しては,もっと慎重に取り扱うべきであろう。現行法においては,代表権を有する者に限られている「住所」の登記も,役員一般に拡大すべきではないだろうか。
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