江頭憲治郎著「株式会社法(第3版)」(有斐閣)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641135543
会社法施行後の第3版が刊行された。実務家の利用に耐える体系書としては,やはり稀有の存在。
ところで,はしがきを読むと,「本書は,登記実務・学説等が実務の工夫を封ずるべきではないとの考えを基調として,定款自治の限界,契約に盛り込むべき条項等を記述している。」とある(初版から一貫として。)。いわゆる通説に囚われない見解を数多披瀝されており,改訂の都度購入を続けている江頭会社法であるが,意外の言辞である。
会社法は,なんでもできるツールボックスと言われるが,もちろん無制約の「自由」であるはずもなく,「自由」の中にも「公正」であることは当然求められる。したがって,実務家としては,「公正」にも配慮すべきであるが,登記所は,手続が適法,かつ,要件を満たす限り,「公正」には関知しない。
また,登記実務は,公示の観点から,形式的にせよ最終段階でチェックする立場にあり,保守的にみられがちであるが,適法である限り,実務の工夫を封ずるようなことはないし,新機軸で判断が難しい事案であっても,要件を満たす限り,最終的には裁判所が決めることであるとして,当該登記申請は受理されているように思われる。
さらに,司法書士の中にも,「自由,かつ,公正」を模索しながら,定款自治の限界に挑んでいる者は大勢いるのである。
登記実務は,決して実務の工夫を封じてはいませんよ。
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641135543
会社法施行後の第3版が刊行された。実務家の利用に耐える体系書としては,やはり稀有の存在。
ところで,はしがきを読むと,「本書は,登記実務・学説等が実務の工夫を封ずるべきではないとの考えを基調として,定款自治の限界,契約に盛り込むべき条項等を記述している。」とある(初版から一貫として。)。いわゆる通説に囚われない見解を数多披瀝されており,改訂の都度購入を続けている江頭会社法であるが,意外の言辞である。
会社法は,なんでもできるツールボックスと言われるが,もちろん無制約の「自由」であるはずもなく,「自由」の中にも「公正」であることは当然求められる。したがって,実務家としては,「公正」にも配慮すべきであるが,登記所は,手続が適法,かつ,要件を満たす限り,「公正」には関知しない。
また,登記実務は,公示の観点から,形式的にせよ最終段階でチェックする立場にあり,保守的にみられがちであるが,適法である限り,実務の工夫を封ずるようなことはないし,新機軸で判断が難しい事案であっても,要件を満たす限り,最終的には裁判所が決めることであるとして,当該登記申請は受理されているように思われる。
さらに,司法書士の中にも,「自由,かつ,公正」を模索しながら,定款自治の限界に挑んでいる者は大勢いるのである。
登記実務は,決して実務の工夫を封じてはいませんよ。
私が受ける印象では、『株式会社・有限会社法』の初版が刊行された平成13年当時は、学説は定款自治について極端に抑圧的であったとともに、登記所における実務も実務にとってフレンドリーではないところが多々見られたと思います。また、会社法の制定と前後して、登記実務は大きく実務フレンドリーな方向に転換したという印象も持っています。
後者については、内藤先生のご感触と同じということかと思います。以上、中身のないコメントで失礼いたします。
「学説は定款自治について極端に抑圧的であった」という点は,恥ずかしながら無理解でしたが,「登記所における実務も実務にとってフレンドリーではないところが多々見られた」という点は,ある意味ご指摘のとおりです。私が,ややコンサバのせいか,「フレンドリーではない」と考えることが少なかったのだと思います。
ご承知のとおり,登記の可否といっても,根本は,実体法の解釈の問題ですから,登記実務の取扱い(法務省民事局商事課)も実体法の解釈(同参事官室)の変遷によって影響を受けることになります。会社法(平成17年改正前商法を含む。)がユーザー・フレンドリーであれば,登記実務も同じ舵取りとなります。
平成10年代の相次ぐ商法改正によって,登記実務も柔軟化路線にありましたので,会社法の施行によって大きく転換したという印象はありません(基本的に旧商法時代の取扱いが維持されていますので。)。とはいえ,一昔前と比較すれば,隔世の感と言えるほど,ユーザー・フレンドリーですが。
ご返事、ありがとうございます。なるほど、先生の感触をうかがうことができ、私のと少し違っていることがとても興味深かったです。私の先のコメントの「多々見られた」は誇張表現であり、訂正すべきように思い始めました。やはり、現場で実務に当たっておられる先生の感触には耳を傾けるべきだと思います。
どうもありがとうございました。来年も宜しくお願いいたします。