司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

社会福祉法人の理事の変更の登記について

2011-03-31 11:18:36 | 法人制度
社会福祉法
 (理事の代表権)
第38条 理事は,すべて社会福祉法人の業務について,社会福祉法人を代表する。ただし,定款をもつて,その代表権を制限することができる。

 社会福祉法人の登記において,役員に関する事項としては,組合等登記令第2条第2項第4号の規定により,「代表権を有する者の氏名,住所及び資格」を登記するものとされているが,社会福祉法第38条ただし書により理事の代表権の全部を制限した場合には,もはや当該理事は代表権を有する者ではないから,代表権を有する者としてその氏名,住所及び資格の登記をすることを要しない(昭和39年4月25日民事甲第1623号民事局長回答)とされている。

 ところで,社会福祉法人の理事の任期満了による変更の登記においては,登記実務上,理事全員が再選され,構成員に異動がない場合には,「代表権を有する者」を予選することができるが,構成員に異動がある場合には,予選をすることはできず,任期満了後に後任者の就任の効力が生じてから,定款で定める方法(通常は,「理事の互選」である。)により「代表権を有する者」を選定しなければならないと取り扱われている。

 したがって,「代表権を有する者」が再任されるケースにおいても,前者の場合は,「重任」と登記することができるが,後者の場合は,タイムラグが不可避であるため,「重任」と登記することが困難であり,「退任」&「就任」と登記するという取扱いである。

 ところが,社会福祉法第38条の規定をよく見れば,社会福祉法人の理事は,全員が代表権を有するのが原則であり,互選により選定された「代表権を有する者」以外の理事は,同条ただし書の定款の定めに基づき代表権の全部を制限されたものに過ぎない。すなわち,社会福祉法人における理事長等の選定行為は,「代表権を有する者」を選定しているのではなく,「代表権の全部を制限された者」を選定する作業なのである。

 とすれば,社会福祉法人の理事の変更の登記においては,「代表権を有する者」について,当該者が理事に再任されたことによって変更の登記(「重任」の登記)をすべきなのであり,「代表権を有する者」の予選の可否にかかわらず,「重任」と登記するのが筋ではないだろうか。

 特例民法法人及びNPO法人の登記においては,理事全員の氏名及び住所が登記事項であるが,これらの法人においても,理事全員が代表権を有するのが原則であり,定款で定める方法により選定された「代表権を有する者」以外の理事は,代表権の全部を制限されたものに過ぎないのは,社会福祉法人と同じなのである。異なるのは,「代表権の全部を制限された者」を登記するか否かという点だけに過ぎない,と考えれば,理解し易いであろう。
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