大阪高裁判決は,更新料の法的性質を検討し,本件更新料の法律的な説明をした上で,下記の理由等から,本件更新料条項(消費者契約法施行後のものに限る。)を消費者契約法第10条に該当し無効であるとして,その返還を認めている。なお,同判決は,「本件賃貸借契約に定められた本件更新料約定は,消費者契約法10条に違反し,無効である」としているにすぎず,一般的に更新料約定を無効と判断しているわけではないことは言うまでもない。
・ 本件の賃貸借契約の更新料には,更新拒絶権の放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充いずれの法的性質を認めることも困難。
・ 元賃借人に対し,賃料以外に,対価性の乏しい金銭的給付を義務付けるものであるから賃借人の義務を加重するものである。
・ 期間が1年間という短期間なのに,更新料の額が月額賃料の2か月分余りと高額である。
・ 元賃借人は,家主に比較すると建物賃貸借についての情報に疎く(情報収集力の格差があり),そのことにかんがみると本件更新料約定は,一見低廉な賃料であるかのような印象を元賃借人に与え,また,更新料の支払をしなくても更新がされ得ることに気付かせにくくするという面がある。
若干詳述すると,
・ 不動産業者である被控訴人がその事業の一環として行う本件賃貸借契約のように,専ら他人に賃貸する目的で建築された居住用物件の賃貸借契約においては,例外的事態を除けばそもそも更新拒絶をすることは想定しにくく,賃借人も,更新拒絶があり得ることを予測していない。
・ 例外的事態として賃貸人が更新拒絶をしたとしても,建物の賃貸人は,正当事由があると認められる場合でなければ,建物賃貸借契約の更新拒絶をすることができない(借地借家法28条)が,本件契約条項は,借地借家法第28条の要件の記載が避けられたまま,賃借人に更新料の支払が義務付けられている。同条による法定更新は強行規定であるのに,賃貸人側が説明をしたことはなく,同契約条項は,客観的には情報収集力の乏しい賃借人から,借地借家法の強行規定の存在から目を逸らさせる面がある。契約締結時に賃借人がこのことを知っていたことを示す証拠はなく,むしろ,賃借人の状況に照らせば,賃借人はこのような法律上の定めを知らなかったことが推認できる。
・ 本件契約条項は,賃貸人の側が検討してあらかじめ作成したいわゆる約款であることは明らかであり,賃借人との交渉を経ないで賃貸人の側により自由に定められたものである。
・ 賃貸人の側においてあらかじめ十分に検討して作成したと認められる本件契約条項を見ても,一定期間内に更新拒絶の申出をしない限り,当然に契約が更新されること,なお書きに,その場合には賃借人は更新料を支払う義務があることがそれぞれ記載されているだけで,本件更新料の説明は全くされていない。
・ 賃貸人又は仲介業者は,元賃借人に対し,本件更新料について,本件賃貸借の契約更新時に支払われる金銭であることを超えて,その授受の目的,性質などについて法律的観点からはもちろん事実上の観点からも,何らかの説明をしたとは認められない。
・ 仮に本件更新料が本来賃料であるとすれば当然備えているべき性質(例えば,前払賃料であれば,賃借人にとって有利な中途解約の場合の精算)も欠いている以上,法律的な意味で当事者双方がこれを民法,借地借家法上の賃料として認識していたということはできない。
・ 賃料とされるのは使用収益の対価そのものであり,賃貸借契約当事者間で賃貸借契約に伴い授受される金銭のすべてが必ずしも賃料の補完の性質を持つと解されるべきではない。
・ 建物賃貸借の更新時に更新料を授受するとの慣習法は認められないし,本件全証拠によっても,そのような事実たる慣習が存在するとは認定することができない。
・ 本件の事実関係の下では,本件更新料は,当初本件賃貸借契約締結時及び本件更新時に,あらかじめその次の更新時に賃借人が賃貸人に定額の金銭支払いが約束されたものでしかなく,それらの契約において特にその性質も対価となるべきものも定められないままであって,法律的には容易に説明することが困難で,対価性の乏しい給付というほかはない。
・ 本件更新料約定は,賃借人の経済的出捐が少ないかのような印象を与えて契約締結を誘引する役割を果たすものでしかないと言われてもやむを得ない。
・ 本件の賃貸借契約の更新料には,更新拒絶権の放棄の対価,賃借権強化の対価,賃料の補充いずれの法的性質を認めることも困難。
・ 元賃借人に対し,賃料以外に,対価性の乏しい金銭的給付を義務付けるものであるから賃借人の義務を加重するものである。
・ 期間が1年間という短期間なのに,更新料の額が月額賃料の2か月分余りと高額である。
・ 元賃借人は,家主に比較すると建物賃貸借についての情報に疎く(情報収集力の格差があり),そのことにかんがみると本件更新料約定は,一見低廉な賃料であるかのような印象を元賃借人に与え,また,更新料の支払をしなくても更新がされ得ることに気付かせにくくするという面がある。
若干詳述すると,
・ 不動産業者である被控訴人がその事業の一環として行う本件賃貸借契約のように,専ら他人に賃貸する目的で建築された居住用物件の賃貸借契約においては,例外的事態を除けばそもそも更新拒絶をすることは想定しにくく,賃借人も,更新拒絶があり得ることを予測していない。
・ 例外的事態として賃貸人が更新拒絶をしたとしても,建物の賃貸人は,正当事由があると認められる場合でなければ,建物賃貸借契約の更新拒絶をすることができない(借地借家法28条)が,本件契約条項は,借地借家法第28条の要件の記載が避けられたまま,賃借人に更新料の支払が義務付けられている。同条による法定更新は強行規定であるのに,賃貸人側が説明をしたことはなく,同契約条項は,客観的には情報収集力の乏しい賃借人から,借地借家法の強行規定の存在から目を逸らさせる面がある。契約締結時に賃借人がこのことを知っていたことを示す証拠はなく,むしろ,賃借人の状況に照らせば,賃借人はこのような法律上の定めを知らなかったことが推認できる。
・ 本件契約条項は,賃貸人の側が検討してあらかじめ作成したいわゆる約款であることは明らかであり,賃借人との交渉を経ないで賃貸人の側により自由に定められたものである。
・ 賃貸人の側においてあらかじめ十分に検討して作成したと認められる本件契約条項を見ても,一定期間内に更新拒絶の申出をしない限り,当然に契約が更新されること,なお書きに,その場合には賃借人は更新料を支払う義務があることがそれぞれ記載されているだけで,本件更新料の説明は全くされていない。
・ 賃貸人又は仲介業者は,元賃借人に対し,本件更新料について,本件賃貸借の契約更新時に支払われる金銭であることを超えて,その授受の目的,性質などについて法律的観点からはもちろん事実上の観点からも,何らかの説明をしたとは認められない。
・ 仮に本件更新料が本来賃料であるとすれば当然備えているべき性質(例えば,前払賃料であれば,賃借人にとって有利な中途解約の場合の精算)も欠いている以上,法律的な意味で当事者双方がこれを民法,借地借家法上の賃料として認識していたということはできない。
・ 賃料とされるのは使用収益の対価そのものであり,賃貸借契約当事者間で賃貸借契約に伴い授受される金銭のすべてが必ずしも賃料の補完の性質を持つと解されるべきではない。
・ 建物賃貸借の更新時に更新料を授受するとの慣習法は認められないし,本件全証拠によっても,そのような事実たる慣習が存在するとは認定することができない。
・ 本件の事実関係の下では,本件更新料は,当初本件賃貸借契約締結時及び本件更新時に,あらかじめその次の更新時に賃借人が賃貸人に定額の金銭支払いが約束されたものでしかなく,それらの契約において特にその性質も対価となるべきものも定められないままであって,法律的には容易に説明することが困難で,対価性の乏しい給付というほかはない。
・ 本件更新料約定は,賃借人の経済的出捐が少ないかのような印象を与えて契約締結を誘引する役割を果たすものでしかないと言われてもやむを得ない。