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アリオラムス・アルタイ 2012





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 アリオラムスの全身骨格が気に入ったので、復元イラストを描きたくなったわけである。「羽毛主義」に改宗したわけでもないが、これはティラノサウルス科の幼体ないし亜成体なので、羽毛で覆われた姿にしてみた。幼体と亜成体の境界は難しいと思うが、論文では9才のjuvenile/ subadultとなっている。このくらいの大きさだと羽毛でもウロコでも、どちらでもよいような気もする。オルニトミムス類やテリジノサウルス類のような、他の中型のコエルロサウルス類が羽毛で違和感ないとすると、ティラノサウルス類も中型まで羽毛で自然なのかもしれない。鳥のようなワニのような、(太い尾が)肉食有袋類のような動物になった。

 アリオラムスについては、脳函のX線CT解析による脳キャストの形態について研究した論文が出ている。これを十分に理解するには神経解剖学の知識が必要なため、専門外の者には難解な論文である。近年、ティラノサウルス、ゴルゴサウルス、ナノティランヌスの脳函については研究されているので、それらと比較して系統学的考察をしている。

 脳函から脳神経が出る部分(脳神経根)のパターンについては、以下のようである。アリオラムスではガッセル神経節(三叉神経節)が完全に脳函の中にあり、三叉神経の眼神経枝 (V1) と上顎下顎神経枝 (V2/3) が別々の孔から出ている。これは実は鳥類と同じであるが、他のコエルロサウルス類では孔が1つなので、孔が2つあることはティラノサウルス類の共有派生形質と考えられる。
 アリオラムスにみられるもう一つのティラノサウルス類の共有派生形質は、前耳骨prootic の側面に窪み(prootic fossa)があり、その中に三叉神経の上顎下顎神経枝 (V2/3)と顔面神経 (VII) の通る孔があることである。この窪みはティラノサウルスなどにはあるが、基盤的なティラノサウロイドであるディロングやグァンロンではまだわかっていないので、ティラノサウルス上科の中でも一部(例えばティラノサウルス科)の形質かもしれないという。
 顔面神経は口蓋枝palatine ramus (VII1) と舌顎枝hyomandibular ramus (VII2) に分かれるが、アリオラムスでは膝神経節が前耳骨の内側にあるため、prootic fossaに口蓋枝の通る孔だけがあり、舌顎枝はprootic fossaよりも後方で脳函から出る。このことは、他のティラノサウルス類を含めた獣脚類全体の中でも、アリオラムスに固有の形質であるという。


参考文献
Bever GS, Brusatte SL, Balanoff AM, Norell MA (2011) Variation, Variability, and the Origin of the Avian Endocranium: Insights from the Anatomy of Alioramus altai (Theropoda: Tyrannosauroidea). PLoS ONE 6(8): e23393. doi:10.1371 /journal.pone.0023393


Copyright 2011 Bever et al.




コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
神経系のつくり (足立瑛彦)
2012-10-30 18:49:19
 化石に神経は残らない(はず)のによくここまでわかったものですね。三叉神経が人間では3本それぞれ個別の穴から出ているいっぽうで、アリオラムスなどティラノの仲間では上顎・下顎神経がいっしょの穴から出ているのがとても興味深かったです。こういうものから、恐竜の反射運動(これ。とても気になって仕方ありません。)や知能のレベルなどもわかってくるでしょうか。
 
 
 
そうですね。 (theropod)
2012-11-04 16:08:11
最近は、保存が良い脳函が見つかると、早速CTスキャンで研究されるようになってきたようです。

骨に残る形態から機能的なことを論じるのはなかなか難しいと思いますが、現生種との比較等から何か発見があるかもしれませんね。期待しましょう。
 
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