戦後すぐに私は田舎の繁華街の一角に住んだ。町の四方に銭湯が在り、しばらくの間は、余程の金持以外は銭湯を利用した。
子供の私達は、学校から帰るとすぐ銭湯に行った。時には桃割れを結った人に会った。公園のテント張りの看板絵のろくろく首の人?牛爪女はあの小母さん?このお姉さんの首がどう伸びるのか?その仕組みが知りたい 生来の珍しもの好きの私には楽しい時間であった。
近くの銭湯が休みの時は、親の仕事が終わるのを待って、違う銭湯へ出かけた。同じ学校の子に会った時はそれとなく観察しあう。冬の日には雪が散らつく事もあったが、傘をさしていた記憶は無く、街灯に照らされ舞い落ちる雪を思いだす。どんな感情でそれを眺めたか?覚えがないが、普段とは違った感があったと思う。終戦により、田舎町に埋もれ住む人生を察していた母は、どんな思いであのシーンを見ていたのか?
あの時代以来、街灯の近くを降り落ちる雪がなんとなく気になる