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2023年2月5日 弁理士試験 代々木塾 特許法53条

2023-02-05 01:50:47 | Weblog
2023年2月5日 弁理士試験 代々木塾 特許法53条

(補正の却下)第五十三条
1 第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて第五十条の二の規定による通知をした場合に限る。)において、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項から第六項までの規定に違反しているものと特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に認められたときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。
2 前項の規定による却下の決定は、文書をもつて行い、かつ、理由を付さなければならない。
3 第一項の規定による却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
 ただし、拒絶査定不服審判を請求した場合における審判においては、この限りでない。

〔解説〕
 53条は、特許査定の謄本送達前に不適法な補正がなされた場合の取扱いについて規定している。

・53条1項(補正の却下)

(1)平成5年改正前は、補正が要旨の変更と認定された場合に、その補正を却下するとともに、補正却下不服審判(旧122条1項)の請求がなされた場合には、特許出願の審査を中止する(同条4項)旨が規定されていたが、平成5年改正により、制度の国際的調和、迅速な権利付与の実現の観点から、不適法な補正である新規事項を追加する補正がなされた場合には、これを特許出願の拒絶の理由(49条1号)とすることとされたため、補正の却下の処分はなされないこととなった。
 しかし、第2回以降の拒絶理由通知に対する補正(17条の2第1項3号)が不適法である場合についてまで、特許出願の拒絶理由とすると、その補正が不適法である旨の拒絶理由を再度通知し、更にその拒絶理由通知に対しては、補正が可能であるから、更に補正について審査を行う必要があり、審査の迅速性が確保され難いこととなる。
 そこで、53条において、第2回以降の拒絶理由通知に対する補正が不適法であることが特許査定の謄本の送達前に認められた場合には、当該補正を決定をもって却下することとした。

(2)分割出願制度の濫用を抑止する観点から、第1回の拒絶理由通知と併せて50条の2の規定による通知がされた場合も、第2回以降の拒絶理由通知がされた場合と同様に扱うこととした。

(3)却下の対象となる補正は、新規事項を追加する補正(17条の2第3項)、発明の内容を大きく変更する補正(17条の2第4項)、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、拒絶の理由に示す事項についてする明瞭でない記載の釈明を目的としない補正(17条の2第5項)、独立して特許を受けることができない補正(17条の2第6項で準用する126条7項)である。

(4)第2回以降の拒絶理由通知に対する補正が不適法であったことが特許査定の謄本の送達後に認められた場合には、新規事項を追加する補正のみが無効理由(123条1項1号)に該当する。
 その他の要件(発明の内容を大きく変更する補正、請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正等)については、迅速な権利付与の実現、出願間の公平な取扱いの観点から再度の審査を回避するため補正を制限したものであり、これを満たしていないことが後に認められた場合であっても、無効とするほどの実体的な瑕疵があるとは認められないため、無効理由に該当しない。
 ただし、17条の2第6項違反の補正は無効理由に該当しないが、独立特許要件を満たさない場合であるので、内容的には、新規性等がないとして、通常の無効理由に該当し(123条1項2号)、特許異議申立理由に該当する(113条2号)。

・53条2項(補正の却下の決定書)
 補正の却下の決定は、文書でしなければならない。手続上確実なものとする趣旨である。
 補正の却下の決定書には、その理由を記載しなければならない。透明性を担保するためである。

・3項(不服申立ての禁止と例外)

(1)53条3項本文は、53条1項の補正の却下の決定に対しては、不服を申し立てることができない旨を規定している。
 不服を申し立てることを認めることとすると、従来の53条と同様にその間審査が中止され、迅速な権利付与が図られないことから、従来の54条と同様に、独立して不服を申し立てることができないこととした。

(2)しかし、全く不服を申し立てることができないという趣旨ではなく、別ルートによる不服の申立てが認められる(53条3項ただし書)。
 すなわち、補正が却下されれば、特許出願は補正前の状態に戻るわけであり、その補正前の特許出願の多くはもともと拒絶理由を含んでいるものであるから、その補正が却下された後の特許出願については拒絶査定がなされるはずであり、その拒絶査定に対しては拒絶査定不服審判(121条1項)を請求することができるので、補正の却下の決定に対する不服は、平成5年改正前の54条3項ただし書と同様に拒絶査定不服審判(121条1項)において、拒絶査定の可否と併せて補正却下決定の可否を争うことができることとした(53条3項ただし書)。

(3)明細書等についてした補正が、53条1項の規定により却下されたが、当該補正前の内容で特許査定となったときは、補正の却下の決定に不服があっても、特許査定については拒絶査定不服審判(121条1項)を請求することができないので、不服申立てをすることはできない(裁判例)。

 青本・参考(補正却下の決定に基づく新出願制度の廃止)
 昭和60年改正において特許出願等に基づく優先権制度が導入されたことに伴い、補正却下後の新出願の制度を廃止し、53条中関連する規定(旧4項から6項まで)を削除した。
 補正却下の決定に基づく新出願の制度を廃止した主な理由は次のとおりである。
(a)特許出願等に基づく優先権制度の導入に伴い、同制度の利用によって要旨変更のおそれのある補正については、安全確実に所期の目的を達成できることから、要旨変更の補正に対する救済制度である補正却下後の新出願制度の意義が薄らぐことになる。
(b)昭和45年改正において採用された出願公開制度により、原出願の出願公開後の補正が却下された後の新たな特許出願は、その公開公報により拒絶される可能性が極めて高く、原出願の公開後は補正却下後の新出願の制度は、存在意義をほぼ失っている。
 なお、補正却下後の新出願の制度は、特許法、実用新案法では廃止されたが、意匠法、商標法では存続している。


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