HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

企画の先細りは否めない。

2012-12-13 17:28:58 | Weblog
 今年9月の福岡ファッションファーラムで、開催計画が語られた「ファッションウィーク福岡(F.W.F.)」の概要が発表された。来年3月の1ヵ月間にわたり、ファッション・ショッピングの街「福岡」を内外にアピールして多くのお客を集め、地域活性化を繋げるという。
 期間は3月1日から31日までの1ヵ月(予定)で、エリアは市内中心部の天神や博多駅、その周辺商業地域。そこで展開する百貨店やファッションビルの専門店&雑貨店、セレクト、飲食、理美容など路面店に対し、オープニングイベントやスタンプラリー、ガイドブックの配布、ポスターやWebの告知などで、“こんな共同販促キャンペーンやってますよ”って、訴えかけていくようだ。
 目的の項目には「ファッションで福岡の街全体を盛り上げることにより、内外からの集客や消費喚起を図り、地域経済の活性化につなげる」と書いてある。
 しかし、こんな大上段の目的がこの程度の稚拙な企画内容で達成できるとは到底思えない。おそらく主催者側は、また適当な理由をつけて、目的の実効性をでっちあげる公算が高いだろう。では、その問題点を以下にあげてみよう。


ウィークなのに1ヵ月も行うの?

 まず、率直に言ってウィークと言ってるのに、1ヵ月も行うのがおかしい。一応、「予定」となっているが、1ヵ月はあまりに長すぎる。
 約100のブランドが参加した2013年春夏パリコレクションは、10月3日からたったの9日間。こちらはメゾンのショーが1時間刻みに行われ、メディアには全部回りきれないとの不満がくすぶるものの、バイヤーからは仕入れたいブランドを短期間で効率よく見られるという声が多い。
 メルセデスベンツがスポンサーに付いた「東京ファッションウィーク」ですら、3月17日から23日までである。ウィークと付けば、まさに1週間なのである。
 期間が長いと、キャンペーン自体が間延びしてしまう。さらに段階を踏んで認知度を高めるような企画が用意されていないのでは、消費者にとっては最初の「何かやっている」という記憶が次第に薄れてフェイドアウトしてしまうのが落ちだ。

 次にキャンペーンの目的と企画内容がきちんと連動しているとは言い難い。こうした小売りサービス業向けのキャンペーン・プロモーションでは、あらかじめその手法を整理して、きちんと提案しなければ意味がない。でも、それが全くなされていないのである。
 小売りサービス業向けのキャンペーン内容は、インセンティブ、イベント、サービス、メディアなどになる。しかし、ここではイベントやメディアのツール制作に予算が投下され、小売業側のインセンティブは「来店客への特典(セールやプレゼントなど)をご用意ください」「積極的にアピールしたい店舗向けの有料プランもございます」となっている。
 つまり、その企画内容は「自分の店で考えろ」ということ。有料プランにしても、ガイドブックやWebでの告知をオプション枠で目立たせる程度に過ぎないだろう。
 共通ロゴ、ポスター、ガイドブックを制作するのは、グラフィックデザイナーやデザイン会社だし、参加店舗が増えてプリント枚数が増えて潤うのは印刷会社。Webサイトにしても専門の制作会社が携わり、有料プランが組まれている以上、カネが流れる先は決まっている。

 これでは主催者側と一番利害関係が強い「業者」ばかりが恩恵を受け、ファッション業界側に対するメリットがほとんどないと、言われてもしかたない。
 だからインセンティブが必要なのだ。これにはトレードから小売り広告へのサポート、ディスプレイアローアンス、コンテスト、プロモーションツールの提供、資金援助、セールスコンテスト、開梱チケット、セール、ギフトノベルティ、インビテーションまで、企画はいろいろある。
 その詳細を説明するには字数に限りがあるので省略するが、 本来なら企画運営委員会がこれらを詳細に検討して立案し資金を投下してこそ、小売りサービス業むけのキャンペーンとして、実効性あるものになる。
 まあ、企画メニューにあげられている「スタンプラリー」も、どこまでショッピングエリアが広がるかは懐疑的だ。外食メディアが仕掛けるクーポンチケットによる店巡りなら多少の集客は図れるだろうが、ファッションに限って言えば買い回りは難しい。
 つまりインセンティブに注力されない以上、キャペーンの軸が明確化せず、その先にある集客や消費者の需要喚起は図れない。稚拙な企画という根拠はここにある。



地場ファッション業は利用させているだけ

 そもそもこうした一連の事業は「福岡アジアファッション拠点推進会議」が発足した2000年3月からスタートした。その年の5月末には事業内容が企画コンペで募集され、地元ローカル放送局のRKB毎日放送が「トータルブロデューサー」となった。
 しかし、しょっぱにやった企画は東京から呼んだタレントをレポーターに起用し、自社のスポンサーをメーンでクローズアップする番組制作。そして、そのタレントと航空会社OL崩れのスタイリストを起用したトークショーと、地元ファッション業界の振興にほとんど効果のない企画となった。
 そして、事業はプレゼンのルール無視とズブズブ関係の力業で、2年目以降もRKBの手中に収まり、中心は福岡アジアコレクション(FACo)と銘打つタレントによる客寄せ興行になった。
 ただ、これもイベント制作は神戸コレクションを手がける制作会社に丸投げされ、出演する地場メーカーの顔ぶれは決まってきている。当初から事業が目的とする地場ファッションの産業振興、人材育成に対する投資がなされたのかさえ、ハッキリ検証されていない状況だ。

 2年目以降、RKBはトータルプロデュースではなく、仕切りはFACoとフォーラムのみになっている。そもそもファッションやアパレルを熟知していないのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
 そこで、今度はファッションウィーク福岡(F.W.F.)が持ち上がったようだが、本来なら小売りサービス業が中心の福岡なのだから、こうしたキャンペーンが先に行われるべきである。
 ただ、ファッション音痴のテレビプロデューサーが自社に利害がない地元の個店を一軒一軒たずね歩いて、事業内容を理解させきれるはずがない。でも、それをいいことに自分らの凡庸なアタマで、地場産業無視の事業を行うことが許されるはずもない。


参加店舗が増えると、コスト増で困る

 ただ、今回のキャンペーンにしても地場の小売りサービス業に対し、広く告知されているとは言い難い。推進会議のサイトを利用し、おそらくWeb制作会社と思われる業者に「待ちの姿勢」で応募管理をさせているに過ぎないからだ。
 キャンペーン参加募集は12月5日に始まり、締め切りは12月24日。但し書きに「ガイドブック誌面の都合上、お申込み多数の場合は、締切日を待たずに締め切らせていただきます」とある。
 おそろく、Webはともかくガイドブックは印刷物だから、業者はページ数が決まらないと見積もりが出せない。推進会議側には事業予算があるはずだから、ガイドブックの予算枠も大筋で決まっているはず。但し書きは、印刷料金アップのリスクヘッジであることが透けて見える。
 あまりに主催者側、業者側の都合ばかり、できれば自分たちにメリットがある店舗で固めたいとの思惑が見え隠れしてしょうがない。そんなことで「内外からの集客や消費喚起を図り、地域経済の活性化につなげる」はずがないのである。

 もっとも、このキャンペーン期間中の3月24日には、FACoも開催される。主催社側はキャンペーンの終了間際にFACoを開催するから、だめ押しで盛り上げられるなんて勝手な思い込みを口にしているのかもしれない。
 昨年から福岡県も商工会議所もFACoへの資金援助はしていない。ところが、今度のショーには代理店のD社がすべてを仕切り、AKBタレントで地元出身のSを起用した「かいいい区」といった「福岡市」のキャンペーンを連動させる計画のようだ。
 一連の事業で全く蚊帳の外にあったD社がいよいよお出ましである。それにしてもタレントを先乗りさせ、デベロッパーのどこかにスペースを用意させ、トークショーなんかを行うのが関の山だろう。
 そんなことをやれば、キャンペーンが中心部だけで完結してしまい。周辺の大名、まして薬院なんかにお客が流れるはずはない。

 最後に「東京ファッションウィーク」に携わった経験から言わせてもらうなら、こちらはアパレルメーカー、卸を主体にテキスタイルメーカーや副資材、一部機器を含めた純粋な業界が全国のファッション小売業のバイヤーを集めて、商談の機会を広げるものだった。
 資金力のあるDCブランドメーカーは、イベントとしてファッションショーを開催していたが、これとてバイヤーにシーズン商品を見てもらうセールスプロモーションの場だった。バイヤーにとっても、一度にアパレルの展示会が行われれば、効率よくメーカー回りができるし、合同展では零細だが企画力があるメーカーを発掘できたのである。

 元来アパレルメーカーが少なく、小売りサービスが中心の福岡では、同じファッションウィークと言っても次元が異なってくる。そんなことは推進会議の事業を始める時点で、企画運営委員会側もわかっていたはず。FACoを中心にメーカーばかりをクローズアップしてきた問題から、ようやく小売り支援にも乗り出したのも自明の理だ。
 しかし、この程度の稚拙な企画では、内外からの集客や消費喚起を図り、地域経済の活性化につながるはずもない。また、企画目的の対象である店舗は、ファッションだけでなく、飲食や美容なども入っている。しかし、それらが抱える「課題」は各店各様なだけに、とても統一のとれた活動にはならないことが予測される。
 それでは目先の派手さだけを求める全く実効性を欠いたキャンペーンになってしまい、 ますます、地場ファッション産業の振興、人材育成は後回しになってしまう。事業が始まって5年目に入るが、企画の先細りは否めないと言わざるを得ない。というか、携わる人間たちの利益と自己満足に地元ファッション業界は翻弄されている。
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