271828の滑り台Log

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大杉栄訳『昆虫記』(ペーパーナイフ)

2009-08-01 22:36:14 | 読書
北関東でも蝉が鳴き始めたのがやっと今週になってから、早朝のヒグラシ蝉は何となく清清しい。それで前から気になっていた本を紐解く気にもなったのです。日本で最初にファーブルの『昆虫記』を訳したのは大杉栄であることは知っていましたが、十数年前、旧前橋西武で開かれた古本市で大杉榮訳『昆蟲記』を見かけて購入しました。

本の奥付を見ると印刷は大正11年11月3日、私の本はその第9刷(昭和4年4月25日)で、発行所は叢文閣です。画像をクリックすると拡大されます。

本の大きさは135mmx200mmで、四六版より少し大きめです。私達の手に取る本は小口が綺麗に裁断されたのが普通ですが、昔の本はそうではありませんでした。この本も背と地は揃っていますが、天と小口が不揃いです。そしてページが地と小口で切れていないのです。2ページまたは4ページが繋がったままなのでページをめくるためにそれを切り離す道具が必要です。

ページを切り離すナイフがペーパーナイフで読書には必須のアイテムでした。昔の書籍はこのような仮綴のまま出版され、読者はペーパーナイフを使ってページを切りながら読み、気に入れば製本屋に出して美しく装丁され書斎を飾ったのでした。画像のペーパーナイフは亡父がヨーロッパ視察旅行の際、スペインで購入したものです。
出版が大衆化・工業化される以前は本を読み・所有することの出来るのは特権階級に限られました。彼らを相手にした製本屋も業として成り立っていたのです。製本職人から身を起こして一流の科学者に駆け上ったのがマイケル・ファラデーです。ファラデーの名を日本に知らしめたのは中村正直で、スマイルズの本を『西国立志編』として訳し、これが明治の若者に勇気を与えたのです。福沢の『学問のすゝめ』と双璧をなすベストセラーでした。中村はファラデーを「蹄書工」と書いていました。
ファラデーの伝記を日本で最初に執筆したのは愛知敬一『ファラデーの伝』は現在「青空文庫」で読むことが出来ます。

私は本書をまだ全部読んでいませんが、まず大杉の「訳者の序」に惹かれました。次の記事ではこれを紹介したいと思っています。

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4 コメント

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大杉栄 (kunihiko_ouchi)
2009-08-02 22:26:37
こんばんは。アナキストの大杉栄が「昆虫記」の訳者だったとはものすごく意外です。知りませんでした。
余談ですが、私は山に関する優れたエッセー、絵画を残した辻まこと氏のファンなのですが、彼の実の母親は大杉栄の愛人で彼と共に殺された伊藤野枝です。大杉栄については意外なつながりがあるものですね。
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華の乱 (271828)
2009-08-03 06:15:09
kunihiko_ouchiさん おはよう

私は辻まことさんのことを知りませんでした。ありがとうございます。

ファーブルの日本への紹介は賀川豊彦に始まり、英義雄が『蜘蛛の生活』を訳出、大杉が本格的な翻訳に取り組んだようです。

偶然ですが、深作欣二が1988年に撮った『華の乱』には当時が描かれていることを知りました。伊藤野枝は石田えりが、大杉栄は風間杜夫が演じています。観たいですね。
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つながりが面白い (なごみ)
2009-08-03 07:57:10
おはようございます。
大杉栄という人名に見覚えは無かったのですが、辿ってみると「甘粕事件」で殺されたあの人だったのですね。
近代史は苦手ですが、wikiで近代の活動家や作家を調べるのが好きなので、ついついネットサーフィン・・・。
この時代は色々な人が繋がっていて、面白いです^^

アナキストが昆虫記・・・翻訳とはいえ意外です。

ペーパーナイフの用途も、こちらで初めて知りました!
本来は封を開けるものではないんですね!
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青猫 (271828)
2009-08-03 23:37:49
なごみさん こんばんは

前橋の敷島公園に朔詩舎というレストランがあります。先日、ここを利用した際、まず待合室に通されました。壁には朔太郎全集があり、そして詩集『青猫』もあったのです。勿論復刻版です。
箱から取り出して読もうとしました。するとこの本もページが切れていないのです。ペーパーナイフが必要な本でした。
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