メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

ドラマ『夜行観覧車』

2013-04-11 17:03:17 | ドラマ
ドラマ『夜行観覧車』
原作:湊かなえ
出演:鈴木京香、石田ゆり子、宮迫博之、田中哲司、夏木マリ、高橋克典、安田章大、杉咲花、宮香蓮、中川大志 ほか
主題歌:♪VOICE/AI

『贖罪』『告白』を観て、すっかり湊かなえさんの描く世界にハマってしまった。
それぞれが告白するって形はかなえさんのスタイルなんだね。

▼あらすじ(ネタバレ注意 ぜひ読む前に観てくださいませ

1話「高級住宅街の殺人!渦巻く悪意…家族崩壊」
ずっとマイホーム、自分の町って言える環境を夢見ていた遠藤真弓は、サラリーマンの夫・啓介、一人娘・彩花と3人で、
ちょっと背伸びをして35年ローンで高級住宅街のひばりが丘に引っ越してきた。
しかし、そこには「何もなかった頃からこの街を作り上げた」という小島をリーダーとした古いグループがあり、
ゴミの出し方からすでにバトル炸裂 唯一、守ってくれたのは、向かいの高橋淳子
彼女も一般家庭に育って、開業医の夫・弘幸とともに引っ越してきたから親近感を持ち2人は友だちになる。
高橋家は長男・良幸、次男・慎司、長女・比奈子の5人家族。
バザーの時も、子どもの音楽演奏会の時も助け舟を出してくれた。
(小島演じる夏木マリさんの演技がとにかく怖すぎるっ!

 

すでに高橋弘幸が何者かによって殺されたところから始まり、
引っ越してきたばかりの4年前に遡りつつ、ミステリーが進行してゆく。
時間の移り変わりが観覧者の建設模様であらわされるのが興味深い。
事件を担当するのは結城という刑事(高橋克典)。
坂の上の私立中学を受けて、彩花は落ち、慎司は合格した。そこから2つの家族の関係が少しずつズレてゆく。。


2話「美しい街に隠された秘密…謎の失踪」
彩花ちゃんがすっかり荒んでしまっってビックリ
近所では貧乏者扱い、学校ではお金持ち扱いの板ばさみ状態でイジメを受ける。
バスケ部で活躍する慎司は女生徒の人気を集め、彩花の友だちも好きになり、慎司から声をかけられた彩花に嫉妬する。
1度や2度、友だちからのけ者にされただけで、もう生きていけない世界なんだろうか、今の学校って
母が「彩花があすこの制服着たところ見てみたいなあ」てゆったたったのひと言がきっかけって、なんて脆い。
小島も海外に住む息子にやたらと電話してるけど、きっと煩がられて孤独の塊なんだ。夫もずっと海外出張だし。
嫉妬心、見栄、プライド、大人の歪んだ価値観の中で、傷つき、翻弄され、枠にはめられてがんじがらめになる子どもたち。
湊かなえさんの物語は怖い。これが現実に起こっているから、なおさら怖い。
長男、長女は先妻の子で、後妻の淳子は次男の慎司が平凡な自分に似たんじゃないかと心配でたまらない。




3話「狂い始める家族の歯車…逃亡する母子」
近所づきあいの結婚祝いに10万円、町内会費なども高額で、真弓は貯金も尽き、スーパーでパート仕事を始めるが、
小島はそれも嗅ぎ付け、また嫌味を言われる。
街が見渡せるベンチで再び淳子に会い、彼女も慎司のことで悩んでいる様子だった。
同時に慎司もまた秘めた悩みを持ち、以前は雰囲気のよかった彩花にも心を閉ざす。
彩花は友だちに嫌われまいとするストレスで保健室によく行くようになり、
家では母にキレて毎晩のように大声で罵声を浴びせるのが近所の評判になってしまう。
だが、事件当日は慎司の大声と、淳子の叫び声が聞こえ、真弓はコンビニで慎司とその後会ったが、結城には話さなかった。
逆に、高橋家から出てきた犯人かもしれない男が、小島が言うには夫の啓介で、
しかも真弓に内緒で弘幸から独立資金として1000万円も借りていたことも初耳で動揺する。
慎司も、淳子も姿を消し、重要参考人として捜索される中、弘幸に淳子から電話がかかってくる。

 

 
(哲さんが印象に残っていると言っていた川釣りのシーン


4話「夫の秘密と嘘…兄妹たちの残酷な現実」
「わたしの人生、こうなるはずじゃなかったのに」比奈子は父の死を自分のせいだと責める。
叔母は姉・淳子を心配するが、叔父は人目を気にして比奈子をいつまで泊めておくのかと嫌がる。
それを聞いた比奈子はいたたまれず、長男のいる京都に向かう。
家族を亡くしたコにこんなに冷たくする友だちや親戚がいるだろうか? それもこれも僻みが原因?
高級住宅街に住んでる人たちも、それに憧れる人たちも、どっちもどっちなんだな。

成績が上がらない慎司に淳子は「大丈夫。あなたはお父さんの子だから」と暗にプレッシャーをかけていた。
啓介は淳子と会っていたことは隠したが「事件の当日、高橋家から出てきたのは小島さんだった」という。
彩花は一人佇む慎司を見かけて「私はあなたを助けたい。どうしたらいい?」と声をかけるが逃げられる。

 
(比奈子は父が果たせなかった建築家の夢を代わりに叶えてあげるってシーンもよかった。「じゃあ、比奈子に家を建ててもらおうか!」


5話「加速する悪意…暴走する娘と母の叫び」
なんだか彩花の視界が歪む感じや過呼吸の感じがパニ障的。友だちから「母の働くスーパーで万引きしてこい」と命令される。
愛息・まあくんが外国からやっと帰って有頂天になる小島。息子が家に帰らないのは事件のせいだと高橋家を呪う。
兄に自殺をほのめかす電話をかけてきた慎司。良幸は「オレのせいだ」と自責する。

真弓の独白。
「事件になる家と、ならない家はそう変わらない。いつなるか分からない」
「人に家族の問題を話せないのはどうしてだろう。一番そばにいる家族の心が他人より遠い。
 誰かに打ち明けて泣けば、少しは何かが変わるのだろうか」
「どうして家族の事情を人に言えないんだろう。
 それは、おまえの家は壊れていると、後ろ指をさされるのが怖いからだ」
「死ね」とか「一家心中しろ」とか書かれたビラが家全面に貼られてるって・・・どう見ても異常。




6話「悲しい罪の告白…ついに、犯人逮捕!?」
土手に座っていた彩花に結城は「お母さんとオレは同級生だったんだ」と声をかける。
「難しいよなあ家族ってのは、思ってもみないほうに転がって、
 こんなはずじゃなかったってあがいても、どうやって戻っていいか分からない」

淳子は真弓とショッピングモールで会い、子どもたちの無事を確かめ、メールをした慎司とも再会するが
見張っていた警官らに捕らえられ、「夫を殺したのは私です」と自白する。
結城いわく「いるんだよ。弱った人間が頼りたくなる人種ってのが」
でも、凶器を持ってるのは啓介。

ドラマのなぜなぜ:差し入れってゆうと必ず缶コーヒーだよね。嫌いな人もいるだろうに



7話「事件の夜夫が見たモノ…狂った母2人」
ついに、結婚したら嫁の実家に世話になると母親からの別離を伝えたまあくん。

「二世帯住宅にしてくれなんて頼んでないよ、やらなくていいって言ったのに勝手にやったんでしょ
 そんなになんでもかんでも先回りして、頼んでもないことやるでしょ。息が詰まるんだよ
 家に帰ったらくつろぎたいんだ。母さんがいたらくつろげないんだよ」

啓介は事件当日、騒ぎを聞いて高橋家に行き、淳子から凶器を捨ててきて欲しいと頼まれた。
尾行されていることが分かって、出張先の裏山に埋めながら
「なんでこんなことしなきゃいけないんだ? 誰かオレをもっと労わってくれよ」と叫ぶ。
凶器は良幸の賞でもらったトロフィだった。

彩花ちゃんのキレっぷりがハンパない 現代の積み木崩し。
それにしても、学校の友だちには卑屈なほど隷従して、母親には異常なほど反抗するって心理やいかに
母には何をしても家族だから許されるってゆう安心感?みたいなものが根底にあるからか?
保健室にいりびたってしまう時点でもう保健士さんは気づくべきでしょう
両親も子どものために、第三者に相談するって方法もあるのに、他人に言えないのもやっぱり見栄か。
昔みたいな殴り合ったりするケンカじゃなくて、集団で無視されるだけで居場所がまったくなくなってしまう狭い世界。



8話「殺された父の本性!?許し合えない親子」
淳子は自分が殺したと言い続け、慎司は家に帰っていて、兄妹が揃い、真実が話される。
慎司が言うには「父は自分が勉強ができないことを責め、自分と母に日常的に暴力をふるっていた」という。
あんなに理想的な旦那さんがDV男で、同じ家で暮らしながら兄妹がまったく知らなかったなんてことがあり得るだろうか?!
淳子はいつも慎司に「兄弟仲良くしなさい。1人で解決できないことも、兄弟3人なら乗り越えられる」と言っていた。
マスコミに曝される3人は固く手を繋ぎ、警察に同行される。

真弓は怒りで我を忘れて彩花を殺しかけて小島に止められたことで「自分が母親でいいのだろうか?」と自責する。
「これまで殺人事件て理性の問題だろうって思ってたけど、そばに止めてくれる人がいたか、いないかなんだね」
啓介も彩花から「逃げつづけていたのは、あんただろうが」と言われて気づく。
「帰りたくない」という真弓に「帰っておいでよ。お母さん」と声をかける啓介。

小島さんもとうとうリーダーシップも息子も夫もなにもかも失ってから、ちょっと丸くなった?
旦那さんは出張じゃなくて愛人の家にいるらしいし。
まあ、他のおばさんが頭にすげ代わったってだけで、町はなにも変わっちゃいないんだけど。


9話「最終章~前編~事件の夜の家族の悲劇」
慎司の独白。
言いたいことを言えない自分がずっとイヤでした。
 だから、毎晩暴れてる向かいのあのコがちょっと羨ましかったんです。
 あんな風に全部をぶち壊すことができたらって」

慎司も犯行が自分だと言い張り、家に戻らず、児童保護施設に身柄を預けたいと頼む。
彩花は同級生にカバンを川へ放り込まれたのを取るため、冬の川に入ろうとしてたところを真弓に必死に止められる。
あんなに分かりやすい自殺願望があるのに、まだ専門科にみせないってのが信じられない・・・
「私、大事なこと忘れてた。彩花がいてくれるだけで、生きててくれるだけで幸せなんだって」

近所がまた慎司のことを悪く噂しているのを見て、真弓は
「そうゆうのもう止めませんか? 無責任な噂話がどれだけ人を傷つけるか。
 もし、本当に心配しているなら手を差し伸べてあげたらどうですか?
 それが出来ないなら、黙って見守ってあげるのが思いやりなんじゃないですか?」と提言して無視される。

いつまでも貼られた中傷ビラを剥がし始めた真弓に啓介も加わり、それを見た良幸と比奈子も加わる。
彩花は比奈子の通う学校に行き、友だちを連れてきて、比奈子、そして両親の溝も少し埋められる。
その様子を見て、良幸は真弓に頼む「なにがあっても、この家を見守っていてくれませんか?」と言い残す。
翌日、良幸は真相をすべて語るとマスコミに電話をした。



10話(最終回)「犯人が語る事件の動機…家族の未来」
良幸は父がDVをしていたということで世間の同情を集め、きょうだいの未来を守ることにする。

真弓のセリフ
「許すとか、許さないとか家族の間で使う言葉じゃないんじゃないかな
 一人で抱え込んで苦しまないで。本当に辛い時は弱いとこ見せてもいいんじゃない。
 子どもから見ると親は大人で、なんでも受け入れてくれるって思うかもしれないけど、
 親も完璧じゃないの。迷うし、毎日精一杯なんだよ」



「観覧者はフシギな乗り物だ。どこにも行けない。
 どこにも行けなくたっていい。
 昨日から今日、今日から明日、変わらずに周り続けることがどれほど幸せか今なら分かる」


わたしなら、まず高級住宅街に家を持ちたいとは思わないな。
ローン返済に一生追われるのも、近所づきあいの面倒さも、考えただけで耐えられそうにない
それでも、この物語は、すべての家庭に起こり得る、すべての人間関係に当てはまる。

既存グループなどの絶対的にゆるがない古くからある価値観や慣習に真正面からぶつかって
家庭崩壊寸前までギリギリまで粘って、最終的にその場に残る決断をして、
これまでよりもっと居心地のいい環境に変えてゆく、苦手な人もひっくるめて懐のど真ん中に突っ込んでいける
この真弓って母親と、その気質を受け継いだ娘は強いなあ! 現実はなかなかそうはできない。
みんな迎合して、妥協して、ストレスをためて、愚痴を言い合って、その場限りで処理していくだけで何も変えられないんだ。


湊かなえさんは凄い作家だ。
みんな頭では分かってるけど、言いたくても言えない問題を正面から突きつけてくる。
時に目を背けたくなるような人間の弱さ、エゴ、醜い部分を激しい形で「どうだ!」とばかりに見せつけてくる。
物質主義、所有物で優劣を決めるココロ、他人の不幸は蜜の味ってゆう無責任な野次馬根性、
恨み、妬み、嫉み、僻みなどに支配された大多数の世間に対して、
それでも、なにか少しでも意識を変えることは可能なんだろうか?

最後まで真相、真犯人はだれか?って謎も残しつつ、ラストまでミステリーとして引っ張るのも見事。
後妻のひけ目、自分の子どもが劣っているという劣等感は、なぐさめの言葉ですら自分の思い込みひとつで真逆に受け取ってしまう怖さ。
人の心理って本当に不思議だ。。
でも、それもひっくるめて“気づけた”こと、前を向いて今日1日を生き抜いていくことが重要なんだ。

 
「もう夫が淳子って呼んでくれることもない」と嘆くシーンも辛かった。いつも手をつなぐ仲のいい夫婦だったのに。


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