メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1994.10~ part3)

2013-02-08 11:20:51 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『ペリカン文書』(1993)
監督:アラン・J・パクラ 出演:ジュリア・ロバーツ、デンゼル・ワシントン ほか
アメリカ映画に欠かせないヒーローが立ち向かうべき凶暴な悪や敵。
これまでは主にソ連だったのが、次第に国内へと目を移し、大統領でさえ完全無欠のイメージが壊れつつある。
社会派ドラマでは『JFK』も難解だったけど、今作も入り組んでいる。元々は現在注目されている環境問題から。

シビル・シェパードジョン・ハード(彼の大きな腹にはビックリ)、FBI長官役は『HSB』の俳優、
その部下はウィリアム・アザートン、次から次へと出てくる豪華キャストに加えて、
主演は久々のジュリアのウサギみたいなキュートな魅力が楽しめる。ラフなジャージやピシっとしたスーツ姿、
探偵顔負けの変装、リサーチのキレ具合等のスリルは、シリアスなテーマのことも忘れてしまう。
世の中いろんな仕事があるけど、こんな殺しを職業にする殺人マニアがいるのかな、本当に
周りに支えられ、操られる大統領がマペットに見えてくる。


『ミラーズ・クロッシング』(1990)
監督:ジョエル・コーエン 出演:ガブリエル・バーン、アルバート・フィニー ほか
そのルックスでシリアスな役所の多かったバーンが、渋さを三枚目のギャング役に生かして
奥さんのエレン・バーキンのお株を奪ったよう。
絶対トップに立たず、口達者で世の中を渡ってゆき、殴られ強いお調子者なのが面白い。
“人の腹は分かりゃしない”“計画づくめじゃダメなのさ”などキザったくキメてるけど、
愛する女性に好きだという態度も素直に出来ない。ま、その相手もかなりのはすっ葉で同類なんだけど。

コーエン兄弟作品。『バートンフィンク』ではゾッとする寒気が走ったのと同様、
マニアックながらなんとなく筋の通った悪役ってゆうのが今作にも通じている。
1つ1つのシーンがクリアで今作のほうがスッキリしている感があるけど、
殺しや死体の描写にはやっぱりどこかうすら寒いマニアックさが共通している。
張り詰めた雰囲気に突然現れる犬と少年などのシーンはサイコーだね。
青く澄んだ眼に黒い髪、エキゾティックで頼りがいのある体格、バーンの魅力が余すところなく出ている。


『天と地』(1993)
監督:オリバー・ストーン 出演:ヘップ・ティ・ッリー、トミー・リー・ジョーンズ ほか

“私はいつもその中間にいた。それが私の運命なのだ。北と南、東と西、ベトナムとアメリカ。戦争と平和。天と地のはざまで”

『プラトーン』『7月4日に生まれて』をはるかに凌ぐ、ベトナム戦争とそこで生き抜いた1人の女性の激動の人生を内面から描いたストーンの最高傑作。
実話に基づいているだけにストーリーと真実味は重く、映画というより貴重な記録、生き証人が残してゆくべき記憶そのものといえる。
人間の最大の過ち、すなわち戦争の悲惨さが実際どんなものかは忘れてならない。
ここまで表面と内面をえぐり出して見せられるのはストーン自身、ベトナム戦争に参加した生の体験があるからだろう。
前2作とはガラリと視点を変え、戦う兵士ではなく、すべて受け入れ、流され、運命に身をゆだねるしかなかった
無力なただの小さな村の女の子の眼で見て、体で経験した戦争。
なにものも引き裂くことはできない血と血で結ばれた家族の絆と愛、根底を支える仏教の教え、
今作がデビューとは思えないティ・リーの迫力迫る演技と、登り調子のジョーンズの演技が見せ所。
ストーンが改めて世界に問いただす超大作。


『ヒア・マイ・ソング』(1991)
監督:ピーター・チェルソム 出演:ネッド・ビーティ ほか
淀川さんの「好きです。好きです。信じられないくらい大好きです」というコメント入りのジャケット。
ビデオの中からたくさんの鳩が出てきそうなステキなハートウォーミングストーリー。
♪帰れソレントへ が辛うじて分かったくらいだけど、どの曲も感動的で涙が止まらないエンターテイメント万歳!
若い女の子たちを指さして「彼女たちの夢の責任をおえるか?」というセリフが印象深い。
リヴァプールといえば言わずと知れたビートルズの故郷。
太っちょの2人の相棒が鼻歌を歌いながら踊ると黒い帽子にチャリンと小銭が入るシーンなど、
イギリス映画だけどどこか朗らかで明るいイタリア系の雰囲気がある。
笑いあり、歌あり、恋あり、ファンタジックなアートシアター系の名作。


『さらば、わが愛 覇王別姫』(1993)

監督:チェン・カイコー 出演:レスリー・チャン ほか
昔から香港映画っていうとカンフー道場、師弟愛、看板を守るための戦いなんかのイメージが強いけど、
今作はそんなイメージから全く離れて、京劇という、日本の歌舞伎と同じく中国を代表する文化を通じて
次々とめまぐるしく変わってゆく政治のもと、その影響を受けざるを得なかった2人の役者の運命と微妙な愛情を描いた歴史絵巻の大河ドラマ。
守らなければならないはずの文化遺産、伝統芸能。その時代背景が人間性を狂わせていき、
もっとも熱狂的に観劇していた市民が裏を返したように非国民扱いをして、3人の絆もプライドもいやおうなく粉々に砕いてしまう。
私たち日本人も決して無関係ではない。町に押し寄せる兵隊と日の丸国旗。中国国民がいまだに深い憎しみを抱いているのも当然だ。
改めて、複雑な経路をたどった中国の政治的問題、市民への影響、常識・非常識、善悪の境界線があやふやになった群衆の
常軌を逸した力の恐さを見せ付けられた気がする。

そして、京劇の独特の歴史。これじゃ幼児虐待もいいとこ。愛情もなく育った身寄りのない子どもたちを
ムチで死ぬほど叩いて恐怖を植え付け、芸を教え込むなんて反逆児に育たないのがフシギなほど。
しかも一番素質のある女形は、文芸評論家などにオモチャにされてしまうなんて
劇が象徴する女の貞節にはほとほとウンザリさせられる。娼婦が娼館ではまるで天使のように扱われるのに、
一歩外に出れば人間の価値もないほどさげすまれるという矛盾にもウンザリだ。
体当たりの演技でこれまでにない役に挑んだチャンのなまめかしい女形、小豆が目を惹く。


『マルコムX』(1992)
監督:スパイク・リー 出演:デンゼル・ワシントン、アンジェラ・バセット ほか
快進撃が続くリーとワシントンが組んで撮った、キング牧師と同時代を生きたもう一人の黒人指導者マルコムX。
一時期Tシャツやらのグッズが流行ったりもしてテレビでも紹介されたが、3時間もかけた今作でより人間的に奥深く掘り下げている。
「白人が暴力を続けるかぎり、自衛のためには銃も必要だ」という発言とは裏腹に彼が暴力で強いたりした事件はなく、
彼の宗教観がうかがい知れ、マスコミによってどれだけ真実の姿が歪められていたかが分かる。
しかし、一発の銃弾で、どれほど貴重な人間が簡単に葬られてしまったことか!
ロドニー・キング事件のショッキングな映像や、途中モノクロを挟んで現実的な効果を生み出している。
実写記録フィルムも多く、近頃ドキュメンタリーも発売されている彼の一言一句は説得力充分で貴重なメッセージばかり。
デンゼルがなりきっての演技。本人がのりうつったような様子に驚く。
「人種差別がアメリカを滅ぼしている。我々が望むのは、自由と正義と平等、生きる権利、幸せを追求する権利だけだ」
サム・クックの歌が心に響く。スパイク・リーもファンらしい。


『タンデム』(1987)
監督:パトリス・ルコント 出演:ジャン・ロシュフォール ほか
次々と奥ゆかしい作品を生み出して注目されているルコント監督が初期に撮り上げた主人公の職業はラジオのクイズ番組の司会者。
監督が描く主人公の職に対するプロ意識や、表には見えない苦労、哀愁は、いつも並々ならぬものがあるけれど、
今回はふりしぼるようなロマンティックな歌声♪君は僕の家 をバックに「25年も続いている」というのが自慢のベテラン司会者と
彼に心底ほれ込んで仕事をともにしている付き人兼運転手兼スタッフである男との友情、それ以上の優しさ。
甘いロマンスなんてない。女が入り込む余地のない本物のダンディズムの世界を覗いた気がする。

根無し草のような生活で、人々から「ずっと同じで飽きないか?」としょっちゅう聞かれる。
女は家や港、待つ者であり、男はそこへ帰りたいと切望する反面、外に旅に出る。
これだけ愛することができる仕事を持てるというのは本当に稀だし、羨ましくもあり、人生はちゃんと完結していて、彼も満足なはず。
だからラストは全く湿っぽくなく、むしろ晴れ晴れとしている。
途中、赤い犬の幻を見たり、歩道橋から自転車を落とすイタズラなど、いろんな人間がいるものだけど、
一番強烈なのは老いたバーテンダーのセリフ。一体世の中どうなっているんだろう!?


『リコシェ』(1991)
監督:ラッセル・マルケイ 出演:デンゼル・ワシントン、ジョン・リスゴー、リンゼイ・ワグナー ほか
さすが『ダイ・ハード』を放った監督。痛快アクションのコツを心得ている。
今作は、なんといってもノリにノってるデンゼルがとにかくセクシーで、
強くて優しくて頭のキレるブラックヒーローを生き生き演じているのが見どころ。
アンソニー・パーキンスばりのサイコ演技が板についてきたリスゴーと対して、
肌の色も歳も違う2人の男だが、どこか似通ったコインの表と裏、引き合い、反発しあう、警官と殺し屋という設定は面白い。
ド派手に立ち回るとても警官とは思えないニック。三つ揃えのスーツでインテリな姿も、
革ジャンでヤク中っていうのも難なくこなしちゃうデンゼルの幅の広さを堪能できる。
ブラックカルチャーが日本でも若い子に人気が高まっているのも分かる気がする。
今作では素人のビデオカメラがニュースに使われて話題となる。
テレビによって証拠となり、善悪の裁きがなされ、またそれらによって名誉も正義も取り戻す。
まさに現代アメリカのマスメディアの姿そのまま。たとえ暴力に満ちた結果であっても。


『フィラデルフィア』(1993)
監督:ジョナサン・デミ 出演:トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン ほか
世界中に広まってからもう長いこと経つのに、エイズを正面から描いた作品がなかったのはフシギ。
しかし、もう誰も目をそむけられない、これは実在する現実だ。
これまで死亡率が高いイメージのがん患者は同情され、最適の治療が受けられるのに対して、
この世紀末的病気にかかった人々は軽蔑され、嫌悪と差別になすすべもなく、
病気と冷遇の2つの大きな壁に苦しみ、耐えている。

コメディから一転シリアスな真に迫る演技でオスカーをとったハンクスとデンゼルの共演。
主題歌♪フィラデルフィア はブルース・スプリングスティーンが作り、PVがついているというサービスもあり、
なにかと話題を集めた今作だが、肝心なテーマははたして何人の心に直接届いただろうか?
これはほんの1ケースであって、エイズに効く新薬でも奇跡的に発見されるまで恐怖と偏見はこれからも続いていくだろう。

理解するにはまだ分からないこともありすぎる。防ごうにもこのウイルスは“人の愛”を媒体としているんだ。
これはもはや同性愛者だけの問題ではない。生まれてくる子どもにまで関係する。
誰が犯人か責任追及より、どう理解し、受け止め、解決するか、一緒に考えることが大切だ。
「問題が起こったら、必ず解決法がある」
目に見えて弱ってゆく体。これは人間が尊厳死を考えなければならなくなるほど精神面をも問われる病気なんだ。
近いうち、この瞬間にも治療法が見つかることを心から願っている。


『虚栄のかがり火』(1990)
監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:トム・ハンクス、ブルース・ウィリス、メラニー・グリフィス ほか
面白い! アメリカじゃ結構知られている小説の映画化らしいがベストセラーだけあってストーリーのメリハリ、
次の展開はどうなるのかという面白さ、法廷ドラマでもあり正義とは何か?を問いかける真摯なメッセージもある。
ある程度人々に知られたキャラだけに、ハンクスが主人公に扮するキャストには賛否両論だったらしいけど、
最近の『フィラデルフィア』でのオスカー受賞で証明されたとおり、見事に演じきっている。
ウィリスとの2ショットも豪華。アクションスターより『ブルームーン』で見慣れている記者役にハマっている。
そしてメラニーの悪女がストーリーをよりスリリングに盛り上げる。
ベビーヴォイスにセクシーボディ、破天荒な言動はマリアにピッタリ。
「彼はすべてを失ったが、魂を得た。俺は失うものはほとんどなかったが、すべてを得て、魂はどうなる?」


コメント    この記事についてブログを書く
« notes and movies(1994.10~... | トップ | notes and movies(1994.10~... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。