メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1994.10~ part2)

2013-02-08 11:20:52 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『エンジェル・アット・マイ・テーブル』(1990)

監督:ジェーン・カンピオン 出演:アレクシア・キオーグ、カレン・ファーガソン ほか
3部に分かれ158分にわたって描かれる原作者ジャネット・フレームの半生。
監督は『ピアノ・レッスン』でも高い評価を得たカンピオン。舞台はフレイムの故郷であるニュージーランド。
英語圏だけど鼻が詰まっているような独特のアクセントがある。
『ベル・エポック』同様4人姉妹と兄の話だけど、撮る監督、時代、場所、テーマによって随分違う。
とても他人とは思えない彼女。本物の苦しみの中から生まれた美しく光る詩と物語。
いつか原作を読みたい。大人になってすっかりキレイになったジャスを演じたケリーは熱演。
心の悩みを抱えながらも書くことに一身を捧げる主人公の微妙な心情を見事に表している。


『トラック29』(1987)
監督:ニコラス・ローグ 出演:テレサ・ラッセル、ゲイリー・オールドマン、クリストファー・ロイド ほか
??? どうもスッキリしない。彼は存在してた? ヘンリーは殺された???
ラッセルにゲイリーのキャストなら何かトラブルが起きなきゃ不思議だけど、
のっけからジョンの♪MOTHER をかけて、なんだか腑に落ちないミステリーと家族愛のゴチャまぜ。
イギリス映画だからブラックでシニカルになっちゃうのね。

子どもじみた不気味な青年役のオールドマンの、多才で常に毒をはらんだ演技には驚かされる。
彼が出るだけでどうってことない作品も面白くなる。ラッセルの豊かなヒップのアップも妙に多かった。
彼女ほど飲んだくれた妖艶な女性が似合う人はいないな。男女関係にも近い母と息子の関係。
母性愛はそれほど取り返せないくらい女性を傷つけうるのだろうか?
リンダが傷心からの精神分裂にかかっているならかなりの重症だけど、もしかしたら
心霊現象かミステリーゾーンの世界なのかも。
それともラストの平和な歌のように最初から想像の出来事なのかもしれないし。


『ベイビー・オブ・マコン』(1993)
  
監督:ピーター・グリーナウェイ 出演:ジュリア・オーモンド ほか
『プロスペローの本』は1シーンも見過ごすのが惜しい凝った映像だった。
『コックと泥棒とその愛人』は、血生臭くショッキングな展開にげんなりさせられた。
そして、昨年アートシアターで上映された今作を相当な覚悟の上で観たけど、
この侮辱、このストレスに耐えられずに私は震えている。

幕引きに彼女が衣装も新しく笑顔でアンコールの列に参加してくれていたら、よっぽどマシだったのに。
しかしそれだと真実性に欠け、私たちはこれが単なる芝居で、作り話で、映画で、空想の世界と片付けてしまうだろう。
そして、形だけは元通りの平穏な現実に戻ってくる。今作はそれを許さない。
宗教と性。このあまりに深く根付いた2つの関係を取り上げて、真正面から、誰も観たくないその真実の姿を突きつけた。
映像はルーブル美術館に飾れるほど、中世ヨーロッパ絵画のようだけど、これほど吐き気がする映画は最初で最後だ。

今作のハイライトであるレイプシーンは、『告発のゆくえ』のジョディなんてもんじゃない。
動物以下の悪魔そのもの。この侮辱と胸糞悪さは女性だけじゃない、男性だって耐え難いはずだ。
私はふと戦時中の慰安婦の証言、それが実際どんな状況だったかを思い出した。
ひどい時には1日10人も相手にさせられ、ついには抵抗できないよう手足を縛って輪姦状態だったという。
ある兵士はそれに恐怖し逃げ出した。でも中には構わず犯した者もいる。
それほど、性欲とは命を奪うことさえ構わなくなるほど抑制の効かないものなのか?
これは“お話”じゃない、今、この瞬間も起こっている事実。
セクハラ、ポルノ、写真集、日々耳に入る陳腐な下ネタの笑い話、私が男性側ならどんなに気がラクか。
エイズが存在する現代、ヒトを愛する純粋で温かな心を私は信じている。
ヒトは獣以下になり得ると同時に、幸福な善人にもなり得ると、今さらながら、わたしは信じているんだ。

(これを観た時は、本当に気分が墜ちたっけなあ・・・


『上海1920』(1991)
監督:レオン・ポーチ 出演:ジョン・ローン、ロレッタ・リー ほか
中国のノリが強いのに、洋画要素も取り入れて、なんとも中途半端な感じになっている。
育ちの違う中国人と白人の男同士の友情物語、おまけにロマンスも着色されているけど、
結局何をテーマに撮ったのか、ラストもハンパでよく分からない。
1ついえるのは、戦時中の日本がどれだけ狂った罪を重ねていたか、
そしていつの時代も女性は囲われるか囚われて、レイプされるしか道がなかったということ。

ローンは『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』や『チャイナ・シャドー』系の同じトーンのオファがやはり多いようだ。
アメリカン・ドリームでのし上がる野心的アジア系。彼ならもっと幅広く演れるのに。
ドーソン役は三文オペラ風だし、一番参ったのは、中国人スタッフが奇妙なキャラばかり。
皆男色っぽくて、極めつけのドンは白いガム風船みたい。カメラの動きやカットは昔のカンフー映画っぽいし。
一応、これでローンの出演作はひと通り観た。今年で42歳。キャリアも充分。
『M.バタフライ』で親境地を開いて、もっと活躍することを期待したい。


『エロティックな関係』(1992)
監督:若松孝二 出演:内田裕也、ビートたけし、宮沢りえ ほか
「フランスの小説の盗作にてフランス人は見るな」という冒頭の断りが入っている。
日本のギャング映画(巻き込まれ騒動型)+パリ観光案内付って感じ。
日本人がわざわざパリで探偵するだろうか? いかにも客が少なそう。
日本人に銃撃戦アクションはしっくりこない。緻密な工作員や、裏取引ならともかく。
一番の見どころは主演3人の顔合わせ。これはなんとも貴重でスリリング。
この3人なら時代劇や西部劇だって観るだろう。宮沢りえのルックスはインターナショナルだし。
ラストにサッチモの♪ラ・ヴィ・アン・ローズ が流れ、パリのあちこちをとらえた映像はキレイ。
パリ=ファッション=黒ってことで、どこでも黒で決めた怪しげな日本人による、日本向け娯楽映画ってわけ。
セリフにも初級のフランス語もとりまぜて「パリの日本人」ってところかな。
流暢にフランス語が話せたらステキだろうね。


『ザ・スタンド』(1994)
 
原作:スティーヴン・キング 監督:ミック・ギャリス
出演:ゲイリー・シニーズ、ロブ・ロウ、モリー・リングウォルド、ローラ・サン ほか
キング・オブ・モダン・ホラー。最近はロックバンドまで作ってツアーに出てる(キングがギターもって歌うってどんな)て活躍ぶり。
本を書けばベストセラー、そしてすぐさま映画化されヒットする。まさに現代の売れっ子にして天才作家キングの新作がコレ。
1本3時間ずつの2本てちょっと手を出すのに勇気がいるけど、ヒッチコック同様、自作にいつもちょこっと顔を出してる彼が
今回はセリフつきでちょっとした演技をしているのまで観れちゃう(良し悪しは別として
いつものクリアなカメラ映像でキャストも豪華。キングの小説はテレビ向きだと常々思っている。
人物の作り方、現実的、日常的なストーリー運び、迫ってくるリアルな恐怖。
今作は、製作、脚本にも加わり、その計り知れない頭の中のイメージを映像化している。

注目はやはりシニーズ。彼の緊迫感のある目元からくる雰囲気、小柄だけどマッチョマン的ヒーローと違って、
理性的で、女性を理解してくれそうな理想的キャラがピッタリ。
色男のロブ・ロウは、耳が不自由なとても善良な役所。モリー・リングウォルドは爽やかで明るい女の子役で光っている。
それから『ツイン・ピークス』ですっかりアブノーマルさが板についた男優が悪玉の右腕なんだけど、
コンプレックスなどからワルになりきれてない、どこか共感がもてる哀愁ある悪役でいい味出してる。
歌手役の男優は、ティモシー・ハットン風の完璧なハンサムガイ。これから活躍しそう。
妖しい美女ナーディーンはローラ・サン。『ミザリー』のキャシー・ベイツもDJ役でチラっと出てる。

アメリカの様々な土地が舞台となる、いわばアメリカの代表作家によるアメリカを描いたドラマ。
どこか聖書の使途か『里見八犬伝』を思わせる感じ。キングに珍しく宗教色の濃い作品。


『ゴッドファーザーPARTⅢ』(1990)
製作・監督・脚本:フランシス・コッポラ 出演:アル・パチーノ、アンディ・ガルシア、ソフィア・コッポラ ほか
'72、'74、そして約20年ぶりに製作された'90のこの完結版。
さしずめゴッドファーザー・ブランドともいえるコルレオーネ一族のその後の行く末をコッポラが20年間もあたため続けた理由とは?
初作で赤ん坊だった実娘が美しく成長してスクリーンに再登場し、あたかも彼らの歴史は実在し、共に時間を経てきたかのよう。
俳優それぞれも年季が入って深みや渋みを増し、この壮大な新旧入れ替わりの物語をいやがおうにも盛り上げていく。
とはいえやはり“血には血を”の復讐劇はいつか自らを滅ぼす時が来る。
「奴らは愛する者らを狙う」というセリフは重い響き。

すっかりマーロン・ブランドの座を奪ったかのようなアル・パチーノのマイケル晩年の演技が見物。
ブリジッド・フォンダやジョン・サヴェージが端役で出ているのはコッポラの影響力がうかがえる。
ガルシアはイタリア系の風貌を生かして、俳優陣にも新旧交代の雰囲気が漂う。
一家揃ってオペラとともに暗殺劇が裏で進んでいくあたりは初作を思い出させ、サスペンスはヒッチコック並。
家族を守るための戦いがいつしか金のうずまくビジネスに変わり、女は単なる飾り、跡継ぎを産む存在でしかない古い格式はそのまま。
'72の晴れやかなダンスシーンを、その後のシーンとダブらせるなんてにくい演出だった。


『エム・バタフライ』(1993)
監督:デヴィッド・クローネンバーグ 出演:ジョン・ローン、ジェレミー・アイアンズ ほか
これほど最初から終わりまで画面に釘付けにされる作品は他にないだろう。
'60の政治状況がからんで、この時代の特異で微妙な国と国民の様子も描かれる。
惹きつけられるのはジョン・ローンの女装の美しさ。“真実は小説より奇なり”とはまさにこのこと!
髪を短くして、背広を着れば、美しさは変わらずともやはりローンは魅力的な男なんだ。
『ラストエンペラー』以降、その神秘的なアジア系の魅力と演技力を生かしきれずにいたローンにとっては久々の大役。
『ダメージ』等、愛と欲望に翻弄される典型的イギリス人を演じるジェレミーのせつな的な魅力も見事ハマっている。
重要なテーマは“永遠の女性はすでに幻でしか存在しない”ということ。
東洋でさえ“貞節”は死語になり、男に仕え、命すら捧げるような奴隷になる女性は伝説。
浮気相手に恥じらいもなく裸になる女性がそれを象徴している。
ルネは自分でその役割を演じるしか仕方なかった。対等な人間として見れずに幻を追うしかないなんて悲しい。
最初のCGによる日本的な映像がキレイ。ラストには狂気さえ感じる。


『ハウス・オブ・カード』(1992)
監督:マイケル・レサック 出演:キャスリーン・ターナー、トミー・リー・ジョーンズ ほか
愛する家族を突然失ってしまう計り知れない絶望感、虚無感から必死に這い上がろうとする母、娘、息子。
自閉症と天才的な未知の力のフシギな関係も取り上げて、シンプルながら繊細でファンタジック、
重い心の傷と家族の強い絆を描いた佳作。
今もそれぞれの障害を抱え、その奇妙な世界から抜け出す術を知らない子どもたち、大人たちが大勢いる。
心理学も時とともに発展し、色々なことが分かっている反面、障害を取り除くカギは人それぞれ。
ピッタリの鍵穴とマッチする答えを見つけるのは大変なこと。
いまだ未知のことが多い精神の世界。家族の愛はその答えを見つけるのに不可欠なんだ。
ターナーとジョーンズという魅力的な顔合わせだけど、今作はお色気なしのシリアスな家族ドラマ。
木そっくりに肌にペイントしたり、コンピュータ並みの計算をしてしまう子どもたち。
私たち人間の脳と力にはまだまだ知られざることがいっぱいつまっているらしい。


『ゴールデン・イヤーズ』(1991)

原案・脚本・製作総指揮・特別出演:スティーブン・キング
出演:キース・ザラバッカ、フェリシティ・ハフマン、エド・ローター、R・D・コール、ビル・レイモンド ほか
キングはロックスピリットを持つ一流SF作家だ。彼と同じ時代に生きてわたしはなんてラッキーなんだろう
できれば今すぐ彼が創るAnother World へ消し飛んでしまいたい。D.ボウイの音楽の流れている世界へ。
キングが製作の大半をこなして、また出演もしている。彼が作り出す悪役には興味深いキャラクターが多い。
今作の見どころの1つは、プロのキレ者ハードボイルド系の殺し屋アンドリュースと、
元パートナーでスマートなテリーとの知恵比べの追跡劇が面白い。盗聴器、コンピュータ、暗号・・・探偵ドラマみたい。
もう1つは、老夫婦の年季の入った深い愛情。ハーランが若返り過ぎないところがイイ。
中年離婚が日本でも増加しているけど、これこそ奇跡に近い。
そして、久々に聴いたダンサブルなボウイの♪GOLDEN YEARS がテーマ曲なら完璧だ。
この本物の怪物の色とりどりのイマジネーションはこれからも尽きることはないだろう。


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