メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

少女名作シリーズ13 クリスマスの天使 K・D・ウィギン 偕成社

2024-04-30 19:40:17 | 
1980年初版・重版 谷村まち子/編著 山下一徳/カバー図案 若菜珪/カバー絵・口絵・挿絵

「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します


心温まる家族の話が多いウィギン作
結末は悲しくても、少女がけなげに生きた様子や
彼女を支える家族の姿が美しく描かれている

とはいえ、病気や怪我の時くらい、多少周りに愚痴を言ったり
甘えてもいいし、そのほうが人間らしいと思うけどな

表紙や挿絵の黒い目がちょっと宇宙人ぽい・・・


【内容抜粋メモ】

登場人物
バード家
父母
ドナルド11歳、ポール9歳、ヒュー5歳
キャロル
ルーシー 祖母
ジャック 父の弟

ラッグルス家 父は漁師 母は9人の子どもを育てている



●女の赤ちゃん
クリスマスに生まれた女の子の名前を考える3人の兄弟







母は娘がやがて美しく成長し、立派な若者と結婚し
よいお母さん、よいおばあさんになることを想像する







近くの教会からクリスマス・キャロルが聞こえてきて
赤ちゃんにキャロルと名付けることにする

母:
1年で1番いい日に産まれたのだから
きっと一生幸せに暮らすに違いありません


●やさしい子
2歳になったキャロルは、ほかの子どもと違って
なんでも自分のものを兄弟に分け与えようとする

母:
人からものをもらうより、あげるほうが
ずっと幸せだということを知っているのかもしれませんね


●病気がち
キャロルは次第に体が弱くなり、寝て過ごすことが多くなる
少し動くだけで「くたびれた」「頭が痛い」というため
母は医師と相談して栄養がある消化のよい献立を作るが
かえって瘠せていく


●あたたかい心
キャロルの一番の友だちはおばあさん

『ねむり姫』や『雪の女王』などの本をじょうずに読み聞かせたり
スリッパなどにフランス刺繍をしたり、残り布で人形をつくってくれる
料理も得意で、カスタードプリン、アップルパイはキャロルも大好き









子猫のメリーにひっかかれて、しっぽをつかんで投げるのを見て

祖母:
病気でイライラする人は落第生です
この世の中は神さまの大きい学校なんですよ
病気で寝ていると、退屈になり、怒ったりするようになる
そういう時は気持ちを抑えて、家族や友だちの親切を感謝するようにしてごらんなさい
食べるものも着るものもない貧しい子どもを考えれば
こんなキレイな部屋で、暖かい着物を着て
好きなお料理を食べられるのはどんなに幸福か分かるでしょう

それ以来、キャロルはいっそう辛抱強くなる
キャロルの優しいほほ笑みは家の隅々まで照らすようになる


●バード家の悲しみ
医者をかえても、2つの肺をやられているから
2年ともたないだろう、と言われ、絶望する父母







父:
私たちにとってはクリスマスが1年で一番ツライ日になってしまった
私はこれまでお金は大変に役に立つと思っていたが
キャロルを救えないなら、いくらあってもしかたない

母:
あの子は最初から私たちのものではなかった気がする
きっと神さまが使わしてくれたんです
キャロルがお役目を果たしたら、また呼び戻されるのでしょう

祖母:
あんないい子をもったことを感謝しなければなりません
兄弟もキャロルに心配させたくないからとてもやさしくなった
この家に天使がいることを喜びましょう

母:
そうです 物事はなんでも良いほうを見て感謝しなくてはなりません
あと2年なら、できるだけ楽しく暮らせるようにしてやりましょう



●小鳥の巣
父はキャロルの寝室をよりキレイに改装し
讃美歌が聞こえるように教会に近づけた

裏の窓からは近所のラッグルス家の9人の子どもたちが
元気に遊び回る様子が見えて楽しみにしている

本の詰まった本棚を利用して「巡回図書館」と命名して
近くの病院に入院している子どもたちに2週間貸し出すと
毎回お礼の手紙が届くのを楽しみに待つ

ひきだしの中のおもちゃも、近所の子どもたちに貸して
遊ぶ様子を眺めるのを楽しみにしている



●落ち葉のころ
キャロルが9歳になると、67歳のおばあさんが病気になり
ある日、口元に微笑みを浮かべて眠るように亡くなる
最期までキャロルのことを心配していた

キャロルは悲しみのあまり高熱を出すが

母:
おばあさまは、天国でとても幸せなのよ
寂しいけれど、いつかお会いできるのだから


●ジャックおじさん
1年後、キャロルの悲しみも次第に薄らぎ、10歳の誕生日に
大好きなジャックおじさんが来ると手紙を書いてきて家族全員が喜ぶ







12月21日 ジャックおじさんは約束通りにやって来る
キャロルは、毎年誰かを幸せにする計画を立てていると話す

今年はラッグルス家の9人の子どもたち
サラ、ピーター、キティ、カス、スーザン、クレメント、エイリー、コルネリア、ラリーぼうや

キャロルは「まど学校」を開いて、本の話をすると
子どもたちは学校の話などをしてくれる

子どもたちを喜ばせる計画の資金のために
ベッドで喋ることを母に筆記してもらい雑誌社に送ったら25ドルもらった

自分のプレゼントの分も足して、9人を部屋へ招いてご馳走し、プレゼントを渡す計画をたてる
その夜は、教会の讃美歌で一番好きな♪うたえ、はらからよ、うたえ と
♪われらじしんの国 を演奏して欲しいと頼んだ


●およばれ
ラッグルス家では、キャロルから招待状が届いて大騒ぎになる
母は自分のショールでラリーに服を作ったり
巡査の服から真鍮のボタンを取って、サラのスカートにつけようとかw
近所の奥さんから靴下を借りて、代わりにご馳走のキャンディーを分けるとか

子どもたちをたらいで赤くなるほどごしごし洗い
お作法を教える







母:
ラッグルス家は立派な家柄だから、つまらない家の人たちみたいに行儀知らずには育てなくないんだよ
家に入る時はちゃんと列をつくるんだ
お前たちったら、まるで罪人の群れみたいじゃないか(w







“帽子を預かりましょう”と言われたら、(帽子が人数分ないため)
サラが「今夜はいいお天気で、ほんの近くですから、家に置いてまいりました」と言うんだ

食べ方の作法も教えるが、いっときもじっとしていられない子どもたち
母:ブタのようにブーブー言ってうるさい子たちだよ(w
ピーター:お作法の話で頭がいっぱいで、お腹がはちきれそうなんだ








●すてきなごちそう
いざ、バード家に行くと、なぜかサラだけが先に呼ばれて行ったため
ほかの子はリーダーを失って途方に暮れる

バード夫人が帽子を預かろうとすると
ピーター:ちゃんとした帽子がみんなに行渡るほどありませんでした

ラリーは傘たての影に隠れて、サラに見つけ出してもらう







クリスマスのご馳走がずらりと並んだテーブルを見ると、夢ではないかと思う子どもたち
ラリー:お山の大将、ぼくひとり! と一番に席につき、変な歌までうたいだすw







お皿がからになると、すぐに新しいご馳走が並べられ
七面鳥などの肉料理のあとは、食後の果物やあらゆるお菓子が並べられる
アップルパイ、プラムプディング、チョコレート、キャンディー、ケーキ、、、







子どもたちがたくさん食べる様子を見て
キャロルは、来年はもっとたびたびご馳走会を開こうと思う







●プレゼント
次の部屋に行くと、本物のクリスマスツリーに
あらゆるプレゼントが枝から吊り下げられている
少女には毛糸で編んだ帽子、少年にはマフラー

サラには一そろいの本、ピーターには腕時計、コルネリアは工具箱
クレメントは犬小屋、ラリーは箱舟のおもちゃ、小さい少女にはお人形
泣いて喜ぶ子もいる








●おやすみ、キャロル
疲れた顔色のキャロルを心配して、先に寝かせる母
キャロルは讃美歌が聞こえるように窓を開けておいてほしいと頼む







9人の子どもたちは21時に家に戻り
母のためにオレンジやキャンディーをもらってきたと渡すと
バード夫人がまったく同じご馳走を運ばせてくれたと話す

食べきれない分は明日のために戸棚にしまった
母は素晴らしい洋服の生地をプレゼントされて喜ぶ


●とびさった小鳥
キャロルが頼んだ讃美歌が聞こえてくる

♪われら、じしんの国
われは よろこびて ゆかん
わが父の愛のみ胸へ
このかよわく やさしき小羊を
父は その胸に いだきたまいて
父 みずからの ふるさとへと
われを みちびきたもう

キャロルはその時すでにふるさとの巣に飛び去っていた

母:
キャロルは一生で一番楽しい日に亡くなって良かったのだ
人を喜ばせたことで、自分も喜び、満足して、永遠の平和の国へうつされたことは
ほんとうにしあわせだったのだ

父:
10年の間、天使をうちにとめていたのだと思って
神さまに感謝しなくてはなるまい

その後、母はまた「巡回図書館」を再開

ラッグルス家の子どもたちは、キャロルの医師を訪ね

サラ:
もし、私たちがお嬢さんの病気を悪くさせたなら
どうしたらいいか分かりません と泣く

医師:
あの子が天国に召されたのは、すべて神さまのみ心だったのだ
それどころか、あんたがたは、あの子の命を延ばしたともいえる

毎年、クリスマスの鐘が鳴ると、みんなはキャロルを思い出すようになる



解説

ケート・ダグラス・ウィギン
21歳で『セント・ニコラス・マガジン』に『6人の主婦たち』を載せたのが最初
本作はたくさん愛読されたばかりでなく、劇としても演じられる

その他
『ティモジーの探検』

オルコットと並んで、アメリカの家庭小説の古典として広く世界で読まれている


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