教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

給特法をめぐる法令について

2019年08月18日 20時03分32秒 | 教育研究メモ
 我が職場でも有給最低5日取得について指示がありました。授業期間中に取得するのはとても無理なので、夏季休暇中に無理やり申請しました。本当はこんなことではいけないとは思いますが、いきなり職場の体質を変えることはできませんので、今のところのベターだろうと思われます。少しずつ、しかし確実に働き方改革を進めていくための第一歩になればいいなと思います。
 さて、学校現場でも働き方改革が問題になっています。学生たちもいわゆる「ブラック学校」や多忙化の問題には関心が高く、後期の「教師論」や「教師・保育者論」で取り上げなければならないなと思っています。教員の多忙化問題・働き方改革においては、「給特法」が避けて通れない問題になります。今回はその基本的なところを整理しておきます。

 「給特法」とは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(昭和46(1971)年制定)のことです。正式名称の通り、公立教員の教育職員を対象とした法律です。そのため、私立学校の教員はこの法律とは本来関係なく、労働基準法等の法律を適用します。就業規則に「公立校に準ずる」と表記されていたり、暗黙のうちにそのような扱いをされていたりすることもありますが、世の中では就業規則より法律が優先されますので、法律違反は許されません。

 さて、「給特法」の問題となる条文は以下の通り。

第3条 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。

第6条 教育職員(管理職手当を受ける者を除く。以下この条において同じ。)を正規の勤務時間[略]を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。
2 前項の政令を定める場合においては、教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情について十分な配慮がされなければならない。


 第6条第1項の「正規の勤務時間を超えて勤務させる場合」は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」(平成15(2003)年)に定められています。この政令は、関連する項目も含め、以下の通りに定めています。

1 教育職員[略]については、正規の勤務時間[略]の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務[略]を命じないものとすること。

2 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。
 イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
 ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
 ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
 ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務


 上記2のイ~ニはいわゆる「限定4項目」といわれるもので、教員はこの4項目に限って時間外勤務が命じられることになっています。部活動指導・引率や補習指導、PTAの会議、祭りや放課後の巡回などについては明記されていないことは一目瞭然です。また、上記1の通り、時間外勤務は原則として命じないものであって、正規の勤務時間の割り振りを適正に行うことが原則であることもわかります。
 以上のように、給特法をめぐる法令は、公立校の教員に限り月給の4%を支給することを決めていますが、それで無限定に時間外勤務を命じることができるようにはなっていません。教員の健康と福祉を害しない限りで実習・学校行事・職員会議・緊急時に時間外勤務を命じることを許しているだけで、これらを除く業務についての時間外勤務はほかの労働者と同様に労働基準法等を適用することになります。ここのところをあやふやにして教職を務めることはできません。

 まだまだ論じないといけないことはありますが、とりあえず今回はここまで。
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