イケメンと美人はなぜ「退屈」なのかについての考察

2016年05月24日 | モテ活

 男前や美人は退屈である、という偏見が私の中にはある。

 なんて言ってしまうと、全国の「おもしろい」ハンサムや美女たちから、



 「出たよ、嫉妬だ。これだから、顔がいいと損なんだよなあ」



 失望のため息が聞こえてきそうだが、私がここで言う「退屈」は単なる「ねたみそねみ」ではない

 まあ、そういうのもゼロではないのだろうが、経験則に基づいた、それなりには根拠のある思想なのであり、特に若いときは、さらにその傾向が広がるといってもいい。

 ギャグや、おもしろトークを展開したとき、人はどうして笑うのか。

 それはもちろん、発信者の腕やセンスが大きいのだが、それ以上に大事なのは、

 「その人自身

 これに、どれだけ影響力があるか。

 クラスの「おもろいヤツ」の地位を確立できるのは、たいていがまず



 「『おもしろい』とから認識されている子」



 これは実際には、おもしろくなくてもいい。

 あくまで、そう思われている、という「キャラ」の問題。

 それともうひとりは

 「男前のモテ男

 これに、二分されることになる。

 男前はウケる

 これは、学校生活における、絶対普遍の法則である。

 クラス笑いを取れるのは、オリジナルのネタを書ける奴ではなく、絶妙の間でトークを展開する子でも、大喜利のうまい人でも、リアクション王でもない

 それらはすべて、



 「男前がやれば、女子はなんでも笑う」



 という、フランツ・カフカも裸足で逃げ出す不条理劇に、敗北を余儀なくされる運命なのだ。

 これは高校2年生のころ、身にしみて知った真理。

 そのことを教えてくれたのは、クラスメートのタカツ君であった。

 当時、私の所属していた2年B組は、そもそもが「イケてる男子」の集まるクラスであった。

 野球部バスケ部といった花形クラブの面々や、ハンサムでオシャレな生徒が多く生息しており、私のような「趣味は読書」といった、地味めな子は少数派だった。

 タカツ君は、その中でもバレー部のエースで、顔は今でいえば亀梨和也君に似た男前

 しかも、とにかく明るくてフレンドリー。

 性格もいい子ときて、ただでさえイケてるクラスの、さらにナンバーワンの人気者なのであった。

 しかしてこのタカツ君が、得意とするものがあった。

 それが「ギャグ」。

 よく、オリジナルのギャグを考えては、



 「なあなあ、新しいギャグ考えたから、聞いてくれへん?」



 休み時間に披露したりして、笑いを取っている。

 たとえば、彼の持ちネタの中に「プリーズ」というのがあった。

 プリーズとは聞いての通り、英語の「お願いします」だが、彼は日常会話でも、これをまじえてトークする。



 「宿題忘れた、写させてプリーズ」

 「部活あるから掃除当番サボらせてプリーズ」

 

 そういった使用法だ。

 これがおもしろいかどうかは人それぞれ感想も違うだろうが、ひとつだけハッキリしていることは、これを

 「新ギャグを考えたから聞いてくれ」

 などと披露した日には、間違いなく裁判もなしにギロチン台送りになることだろう。

 陪審員12人が、問答無用で「有罪」に票を入れるのは、想像に難くない。
 
 いや、実をいうと、実地で試してみたこともある。場所はとなりのC組と、クラブの部室とで。

 結果はもちろんのこと、「どう?」とたずねる間すらあたえられず、銃殺の刑場に連行されることとなった。

 非常にキビしい。財津一郎もはだしのシビアさである。

 ところが、タカツ君がやると、これがウケる。

 めちゃくちゃにウケる。もう信じられないくらいウケる



 「いやーん、プリーズやってぇ、タカツ君めっちゃおもろい~」



 と、女子に爆笑につぐ爆笑

 エンタツ・アチャコやチャーリー・チャップリンでも、ここまで笑いを独り占めしたことはないのではないか。まさに、現代の喜劇王である。

 なぜこんな、不思議なことが起こるのか。

 それはもう、いうまでもあるまい。彼がハンサムなモテ男だからだ。

 タカツ君がいい奴であることは周知の事実で、私もあまり、こんなことはいいたくない。

 だが、あの小学生レベ……少年の心を忘れないシンプルな「ギャグ」で爆笑なのは、それはもう彼の(と性格)のよさ、このおかげに他ならない。

 いや、もはやギャグが、おもしろいかどうかなどは、どうでもいい。

 クラスの女子は、みなタカツ君が好き。

 だから、「彼がなにをいっても」笑う。

 もっといえば「笑いたい

 イケてるわけでもない「男子」の私はクールにそう考えるわけで、一応それが正解とも思う。

 とはいえ、これがあまりにもウケまくるので、ときには自分でもわけがわからなくなって、

 


 「もしかしたら、冷静に分析しているフリをして、その実タカツ君の人気に嫉妬し、彼を『つまらない』と、おとしめようとしているのか」

 「つまらないというのは、私の勘違いと傲慢で、もしかしたらタカツ君のギャグこそが『センスあふれる』ものなのか」

 「つまりは自分の貧弱なアンテナでは理解できていない、21世紀型の笑いなのでは」



 なんて疑心暗鬼におちいることもあったくらいだ。

 それほどに怖ろしいウケっぷりの彼のギャグだが、ある日その被害妄想が晴れる、驚愕の事件が起こったのであった。


 (続く→こちら


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