愛と勇気のフランスリーグ観戦記第4弾。
前回(→こちら)、勝つしかない状況で、試合終了間際の決勝ゴールという、これ以上ない劇的な勝利で優勝を決めたボルドー。
この試合、特に後半あたりは、パリのファンたちもみなボルドーを応援するという変なことになっていて、試合終了後もイタリアやイングランドのように、負けた方が腹いせに暴れるどころか、むしろ祝福ムード。
「本場」のサッカーファンでも、全員が全員バイオレントではないのだなあと勉強になったが、ここでハタと、ただひとりだけそうでない人がいたことを思い出した。
そう、パリ・サンジェルマン一筋の、その名もジェルマンおじさん(勝手に命名)だ。
年季の入ったパリSGのユニフォームを颯爽と着こなし、タオルも首に巻いて完全装備。サッカーに感心のなさそうな孫を連れての観戦は、実に子供にとっては迷惑……もとい家族以上のサッカー愛を感じる。
おそらく、雨の日も風の日も、失恋のときも仕事がうまくいかなかったときも、借りたエロDVDがイマイチでガッカリな日も、常にチームが心の支えだったに違いない。
彼だけは雰囲気に流されることなく、かたくなに地元を後押ししていた。パリの好プレーに拍手し、敵にはブーイングを送りつけた。
そんなパリ・サンジェルマン魂の権化のようなオジサンが、こんなゆるいスタンドの雰囲気に耐えられるわけがない。
ふざけるなボルドー野郎! オレはこんな試合は認めない! 聖なるパリで、てめえらの胴上げなど願い下げだ。表へ出ろ! 拳で決着をつけてやる!
もしかしたら血を見るかもと、やや身を堅くしながら様子をうかがってみたところ、おじさんは両手を高々とあげながら、
「ブラボー! ボルドー、ブラボー!」。
めっちゃよろこんどるがな、おっちゃん。
おいおい、おじさんはこの「ボルドー優勝が見たい」オーラ一色の中、唯一地元民としての自覚をおこたらなかった男ではないのか。
「空気読めよ」の視線も省みず、ただ実直に愛するパリ・サンジェルマンを応援したのではないか。
それが、堂々の「やったぜボルドー!」宣言。おっちゃん、ゆるゆるやな。
それどころかおじさんは、近くにいるボルドーファンを探しては、かたっぱしからハグするのである。
抱きしめて「おめでとう!」、肩を抱き、手をたたき、最後は何度も握手する。
ついにはユニフォームの交換もして、それでも足りないのかマフラーまで(パリSGのだってば)プレゼントしていた。むちゃくちゃ祝福してます。うれしそうやなあ。
すっかり地元の敗北など忘れたかのようなジェルマンおじさんは、その後もメトロの駅まで歩く途中もボルドー人を見つけてはハグしまくり、お祝いの言葉を投げかける。
果ては地下鉄の中で、サッカーに関係のない仕事帰りのサラリーマンやOLを捕まえて、
「今日はね、ボルドーが優勝したんだよ」
などと逐一報告。知らんがな。
あまつさえ、ボルドーのタオルを巻いた若いファンを無理矢理連れてきて、OLさんに、
「キミは恋人はいるかね。ほら、いい若者だろう。よかったら婿にどうだ」
などと、無茶ぶりをしだす始末。どんだけ浮かれてるのか。
これには、クールなお孫さんも、「困ったもんだね」と肩をすくめている。ボルドー応援団、仕事で疲れてぐったりしているお姉さん、そしてそれをながめていた私、その全員が、それぞれ目を見合わせて苦笑い。
そんな視線にも気づかず、おじさんはますます、「もう二人、つきあっちゃいなよ」と、余計なお世話をやきまくる。いやいや、だからそのふたり、ただの他人ですから。
あはは、でもまあ、今日はお祭りやからしゃあないですわな。そのことは皆わかっているらしく、だれもおじさんに対して「ええかげんにしなさい」と、つっこみを入れることもなかった。
そんなゆるゆるな空気もふくめて、楽しく、いい試合でした。また行きたいなあ。
前回(→こちら)、勝つしかない状況で、試合終了間際の決勝ゴールという、これ以上ない劇的な勝利で優勝を決めたボルドー。
この試合、特に後半あたりは、パリのファンたちもみなボルドーを応援するという変なことになっていて、試合終了後もイタリアやイングランドのように、負けた方が腹いせに暴れるどころか、むしろ祝福ムード。
「本場」のサッカーファンでも、全員が全員バイオレントではないのだなあと勉強になったが、ここでハタと、ただひとりだけそうでない人がいたことを思い出した。
そう、パリ・サンジェルマン一筋の、その名もジェルマンおじさん(勝手に命名)だ。
年季の入ったパリSGのユニフォームを颯爽と着こなし、タオルも首に巻いて完全装備。サッカーに感心のなさそうな孫を連れての観戦は、実に子供にとっては迷惑……もとい家族以上のサッカー愛を感じる。
おそらく、雨の日も風の日も、失恋のときも仕事がうまくいかなかったときも、借りたエロDVDがイマイチでガッカリな日も、常にチームが心の支えだったに違いない。
彼だけは雰囲気に流されることなく、かたくなに地元を後押ししていた。パリの好プレーに拍手し、敵にはブーイングを送りつけた。
そんなパリ・サンジェルマン魂の権化のようなオジサンが、こんなゆるいスタンドの雰囲気に耐えられるわけがない。
ふざけるなボルドー野郎! オレはこんな試合は認めない! 聖なるパリで、てめえらの胴上げなど願い下げだ。表へ出ろ! 拳で決着をつけてやる!
もしかしたら血を見るかもと、やや身を堅くしながら様子をうかがってみたところ、おじさんは両手を高々とあげながら、
「ブラボー! ボルドー、ブラボー!」。
めっちゃよろこんどるがな、おっちゃん。
おいおい、おじさんはこの「ボルドー優勝が見たい」オーラ一色の中、唯一地元民としての自覚をおこたらなかった男ではないのか。
「空気読めよ」の視線も省みず、ただ実直に愛するパリ・サンジェルマンを応援したのではないか。
それが、堂々の「やったぜボルドー!」宣言。おっちゃん、ゆるゆるやな。
それどころかおじさんは、近くにいるボルドーファンを探しては、かたっぱしからハグするのである。
抱きしめて「おめでとう!」、肩を抱き、手をたたき、最後は何度も握手する。
ついにはユニフォームの交換もして、それでも足りないのかマフラーまで(パリSGのだってば)プレゼントしていた。むちゃくちゃ祝福してます。うれしそうやなあ。
すっかり地元の敗北など忘れたかのようなジェルマンおじさんは、その後もメトロの駅まで歩く途中もボルドー人を見つけてはハグしまくり、お祝いの言葉を投げかける。
果ては地下鉄の中で、サッカーに関係のない仕事帰りのサラリーマンやOLを捕まえて、
「今日はね、ボルドーが優勝したんだよ」
などと逐一報告。知らんがな。
あまつさえ、ボルドーのタオルを巻いた若いファンを無理矢理連れてきて、OLさんに、
「キミは恋人はいるかね。ほら、いい若者だろう。よかったら婿にどうだ」
などと、無茶ぶりをしだす始末。どんだけ浮かれてるのか。
これには、クールなお孫さんも、「困ったもんだね」と肩をすくめている。ボルドー応援団、仕事で疲れてぐったりしているお姉さん、そしてそれをながめていた私、その全員が、それぞれ目を見合わせて苦笑い。
そんな視線にも気づかず、おじさんはますます、「もう二人、つきあっちゃいなよ」と、余計なお世話をやきまくる。いやいや、だからそのふたり、ただの他人ですから。
あはは、でもまあ、今日はお祭りやからしゃあないですわな。そのことは皆わかっているらしく、だれもおじさんに対して「ええかげんにしなさい」と、つっこみを入れることもなかった。
そんなゆるゆるな空気もふくめて、楽しく、いい試合でした。また行きたいなあ。