続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

『城』3323。

2019-12-19 06:23:42 | カフカ覚書

ーこの役人が、わめいていてももうどうにも埒があかないと見てとったらしく、そのまえに電気ベルのボタンを見つけてあったんであろうが、このほうが手間がはぶけて大助かりだとばかりに、わめくのをやめて、ひっきりなしにベルを鳴らしだしたのである。


☆大勢の人たちが何を求めているのかを見出し懸命に考えたが、明白な叫びは多分知れ渡ることがなかったので、偶然に左右されるボタンを見つけたのである。そのためにそれに魅了され、助けられ、今も間断なく叫び続けているのだろう。


Ⅱ-5-4 水没Ⅱ②

2019-12-18 06:42:58 | 美術ノート

 この作品の主眼は何だろう。
 年輪の数多ある大木(自然)を角柱に伐ってある(人為)。その狭間に埋められた大量の同質同型のものは《時間》かもしれない。
 自然ー人工・時間ー空間の混同・混迷・混沌・・・。

 これを『水没』と題している。
 明らかに沈み込まないものを水没と称している。水没させるには相当なエネルギーがいるに違いないが、その途端、意に反して浮上してくることは必至である。自然に委ねるとしたら炭素(C)が変質する何百何万の年月を待たねばならない。

 矛盾・・・ここにあるものは整然とした態を為しながら、その主題に明らかに抵抗・反している。二律背反・・・。

 この作品にみる提示物と題名の関係は《不条理》である。静かなる沈黙の提示は思考を大きく振動させる、見えないが大いなる精神の揺らぎがある。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館


『忘れえぬ人々』53.

2019-12-18 06:19:08 | 国木田独歩

「それは真実にダメですよ。つまり君の方でいうと鉛筆で書いたスケッチと同じことで他人にはわからないのだから」
 といっても大津は秋山の手からその原稿を取ろうとは為なかった。


☆審(正しいかどうか明らかにすること)に昵(近づき)拿(つかまえること)を黙っている。
 訓(教え導く)法(神仏の教え)を掩(かくすこと)は必(かならずそうしなければならない)。
 諸(もろもろのを導く多くの図りごとの他意である。
 真の終(死)に算(見当をつける)趣(考え)が現れる講(話)である。
 手(方法)は委(なりゆきにまかせる)。


『城』3322。

2019-12-18 06:12:27 | カフカ覚書

それでも、一度だけびっくりしてとびあがり、ふりかえったことがあった。例のいつまでもわめいている役人ーKは、彼がなにを求めているのか知りたかったので、ちょうどそのドアのまえをうろうろしているところだった。


☆ただ先祖の傷痕はともにずきずき痛み出し、振り返るとたえず大勢の人たちが叫んでいた。
 その計画の前で、Kはうろうろしていた。


Ⅱ-5-4 水没Ⅱ

2019-12-17 06:51:10 | 美術ノート

   Ⅱ-5-4 水没Ⅱ

 数えるのが困難なほどの年輪、大樹である。それを人為の術で角柱にしたものを二本並べた上面に溝を掘り数多のカードの整列が無限という風に詰まっている。
 限りなく無限に近い現実の様相である。億年の眠り・・・。

 地球創生からの長い年月を想起させ、その中の人類が刻んだ時間の表記である。抽象的だが、きっちり集約された人類の時間。

 全ては海から誕生し、空無へと帰していく。
 繰り返される月日・年月、時間は不可逆であり、歴史に逆行はない。水地球であるわが棲家、過去に刻まれた時間は人の手の届かない海底深くに眠っているに違いない。

 人為、人の歴史を抽象化した作品である。そしてそれを「水没」と題している。
 金属(鉱物)は比重が高く水に沈むが、木材は水に沈み込むことはない。しかし、あえて「水没」である理由は・・・。

 作品にみる時間の重層、沈むはずのない木工が水を吸収し腐植し水没していく時間の提示。生成(誕生)と崩壊(死滅)の想像を超える長い時間の想定である。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館


『忘れえぬ人々』52.

2019-12-17 06:41:38 | 国木田独歩

 秋山は半紙十枚ばかりの原稿らしいものを取上げた。その表紙には「忘れ得ぬ人々」と書いてある。


☆終(死)に算(見当をつけ)判(可否を定める)。
 詞(言葉)に逸(かくれたもの)が、毎(そのたびに)現れる考えである。
 趣(考え)は、常に漂っている。
 死とは、亡くなり匿(かくれ)尽(すべて無くなること)を認める処(ところ)である。


『城』3321。

2019-12-17 06:30:52 | カフカ覚書

しかし、従僕は、もうそんなことはまったく眼中になかった。彼は、自分の仕事を完了したのだ車のハンドルをさして、もうひとりの従僕にそれをにぎらせると、来たときとおなじように、ただもっと満足げに、車がはねあがるほど足早に立ち去っていった。


☆しかし、悲しいことに、従僕は全くそのことには関心を持たず、自身の現場証明の支度をし、小さな秤(平等)の操法を示した。他の従僕も理解し、戸惑っていたが再び離れていった。小さな計り(平等)が飛び上がるほど迅速に安穏に出現した。


Ⅱ-4-d1 67-120

2019-12-16 06:41:36 | 美術ノート

 二人(男女?)は底知れぬ孔(空洞)を見つめている。落下の恐怖・・・座している場所ですら確実ではない。
 しかし、関心の無いことは見えず恐怖の対象にはならない。

 存在とは何か・・・地表にあることへの安心、しかし、見えることのない地下はどうなっているのだろう。地表の起伏は見えるし感じることが可能である。気流でさえも体感し、風による振動は日常的である。
 常なる疑問、地下における振動を聞く事が出来ない。地表を被う9枚あるいは12枚と言われるプレートの遅々たる動向を直視することはできない。ましてその衝突などは…。

 地下を覗き見る行為は、確信の持てない未来への不安である。
 地表の揺らぎ、振動・・・断層の狭間へ巻き込まれ倒壊していく予測、現実となりうる可能性のある巨大地震への恐怖。

 大気の循環、地下の流動…わたし達はその中を生きているし生かされている。
 底知れぬ地下への関心は、生きている地球への関心である。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館


『忘れえぬ人々』51.

2019-12-16 06:28:16 | 国木田独歩

「何に僕だって何ともないさ、君が寝るならこれを借りて去って読で見ようと思うだけです」

 何はカと読んで、過。
 僕はボクと読んで、北。
 何はカと読んで、禍。
 君はクンと読んで、訓。
 寝るはシンと読んで、真。
 借りてはシャクと読んで、釈。
 去ってはコと読んで、己。
 読はドクと読んで、独。
 見ようはケンと読んで、兼。 
 思うはシと読んで、詞。


☆過(あやまち)から北(逃げる)禍(不幸)を訓(教え導き)、真(まこと)の釈(意味を解き明かす)。
 己(わたくし)独(ひとり)が兼ねている詞(言葉)がある。


『城』3320。

2019-12-16 06:08:55 | カフカ覚書

例のどうしてもおとなしくしない役人の声は、あいかわらず廊下にひびきわたっていた。ほかの点では完全に意見が一致しているらしかった。この役人は、すべての同僚たちの分まで騒ぎ立てる仕事をだんだんに引き受けてしまったような格好だった。ほかの連中は、掛け声をかけたり、うなずいたりして、もっとがんばれと激励しているだけだった。


☆常に甲高く響く声は鎮まることがなかった。ほかの観点でもたいへん友好的で互いに留まることはなかった。
 大勢の人たちの十分信念のある騒動である問題を引受けたのである。彼は多くの人たちの問題(使命)を全て引き受けたのである。
 作られた空間に大声で呼びかけ、うなずき、閉じたままになっている事件を元気づけた。