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カズオ・イシグロさんの作品から

2017年10月06日 | 

昨夜8時、登録しているニュースサイトから通知が届き、何気なく開くと、カズオ・イシグロさんが今年のノーベル文学賞を受賞したという速報でした。賞レースにはあまり興味のない私ですが、カズオ・イシグロは、いつかノーベル賞を取るんじゃないか、取れたらいいな、と思っていた作家さんなので、素直にうれしかったです。

作品を全部読んでいるわけではありませんが、やはり代表作の「日の名残り」が一番心に残っています。イギリスで教育を受けられたとはいえ、日本人の両親のもとに育った氏が、どうしてイギリス貴族社会のことをこんなにリアルに描けるの?とまずはそのことに素朴に驚いたのでした。

名家の執事として親の代から主人に仕えてきたスティーブンスの徹底したプロ意識と高潔な志、同じく長年女中頭として仕えてきたケントンとの秘めたる思い、イギリスの美しい田園風景から真の品格を見出す場面などが思い出され、久しぶりにまた読んでみたくなりました。

カズオ・イシグロの小説、映画化した作品に関しては、過去に何度か記事にしているので、この機会にまとめておきます。

小説 「日の名残り」(The Remains of the Day) (2011-12-07)

映画 「日の名残り」(The Remains of the Day) (2011-06-24)

映画 「わたしを離さないで」(Never Let Me Go) (2011-05-02)

 

このほか、記事にしそびれましたが、小説では「わたしを離さないで」と、最新作の「忘れられた巨人」(The Buried Giant)を読みました。「わたし~」は臓器移植を題材にした異色のSF、「忘れられた巨人」はファンタジーの奥に潜む普遍的な物語といった感じで、どちらもその発想力の豊かさに驚かされました。

小説が映画化されるとがっかりすることがままありますが、イシグロ作品は「日の名残り」「わたしを離さないで」ともに小説の世界そのままにうまく映画化されているので、これから読む方は映画から入るのもよいかと思います(私もそうだった)。土屋政雄さんの翻訳も、ナチュラルで読みやすくて好きです。

イシグロ氏がオリジナル脚本を手掛けた「上海の伯爵夫人」(The White Countess)も、古風な味わいがあって忘れがたい作品です。ジェームズ・アイヴォリー監督、レイフ・ファインズ&ナターシャ・リチャードソン主演、真田広之さんが激動の上海で暗躍する謎の日本人役で出演しています。

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