この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

『ウォール・ストリート』、時は流れる…。

2011-02-10 21:18:42 | 新作映画
 オリバー・ストーン監督、シャイア・ラブーフ主演、『ウォール・ストリート』、2/5、ワーナー・マイカル・シネマズ筑紫野にて鑑賞。2011年9本目。

 2008年のリーマン・ショックで老若男女みんな仲良くすっ転んだ現在、棺桶に片足を突っ込んでいた、、、どころか、墓場で永久の眠りについていた(はずの)ゴードン・ゲッコーというキャラクターを無理やり起こして引っ張りだすのもアリなんだろうな、とは思う。

 しかし、単純にリーマン・ショックとは何か、サブプライム・ローンとは何かを知りたいのであれば、マイケル・ムーアの『キャピタリズム』を見ればいいわけだし、そもそも本作のもう一人の主人公と言える“経済”は現実に即したものではない。

 まぁ野球を題材にした映画が必ずしも現実の野球のルールに則っていなければならないということはないので、経済を取り扱った映画が必ずしも現実の経済に即していなければならないという決まりはないが、本作ではそのことがドラマの面白さに繋がっていないのは問題だろう。
 
 主人公ジェイコブは金融業界の大立者ブレトンに復讐するべく、彼の投資会社に損害を与えるように風評を流す。結果これが上手くいくのだが、実際のところ風評によって特定の会社にのみ被害を与えるということは出来ない(正確には株式市場で風評によって株価が上下するのは常だが、それを意図的に行うことは出来ない)。

 さらにブレトンを破滅させるのにジェイコブは暴露記事を執筆するのだが、もちろんブレトンは目論見通り破滅する、暴露記事一つで金融業界の大立者が破滅するわけがない。

 またジェイコブは凄腕のトレーダーという設定なのだが、その割にどうしようもない甘ちゃんで、一億ドルを持ち逃げされて、うわ、やられた(持ち逃げされるとは思わなかった!)みたいな顔をするのだ。何だよ、そりゃと思わずにはいられない。もっと警戒しろっつーの。

 そのくせその一億ドルを元手にさらに大金を稼いだ相手が、悪かったよ、と一億ドルを持参すると、まぁいっかと和解するのだ。ありえなさすぎる。

 経済ものとしてもダメ、人間ドラマとしてもダメ、さらにいえば映画の作りや演出が、それこそ二十年以上前に作られた前作並みに、古い。同時期に公開された、同じく経済を取り扱った『ソーシャル・ネットワーク』と比べるとそれは明白だ。
 あぁ、オリバー・ストーンは本当に終わったのだな、と思う。
 本作を観ると、一時代を背負った巨人が役目を終えて舞台から去る時が来たのだ、時代は確かに流れるのだ、ということを確認でき、そういった意味では本作を観る価値があった、といえる。

 お気に入り度は★☆、お薦め度は★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。 
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