前回、心房細動に対する新しい抗凝固療薬エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎる件(その1)の記事で、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの3種類の臨床試験でのワーファリン投与群というのは、コントロールの仕方がとても下手で、ほとんどワーファリン非投与群に近い群であるということをお伝えしました。
今回はその続きで、それではなぜこれらの臨床試験でのTTRのコントロールはこんなに下手であったのかをお伝えしたいと思います。
Efficacy and Safety of Apixaban Compared With Warfarin at Different Levels of Predicted International Normalized Ratio Control for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation
Circulation 2013;127:2166.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
上の図はエリキュースの臨床試験アリストテレス試験の内容を詳しく解析したサブ解析のものです。Circulationという信頼性の高い医学雑誌ですので、多くのかたが原版をダウンロードできると思います。
前回お伝えしたように、通常の医者であれば目標のさらさら度である確率TTRという指標(time in therapeutic range)が80%はあると思います。私の診察のTTRは約90%です。
上の図はこの臨床試験に参加した国別の平均のTTRを示したものです。一番左のインドなどはなんとTTRが46%しかありません。その他、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなど、お世辞にも医療先進国とは言えない国まで参加させられています。逆にスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、オーストラリアなどでは上手に治療をコントロールしており、TTRは平均で80%近いのです。平均で80%ということは私のように90%の医者がたくさんいるということです。図を見ていただくと、日本は残念ながら68%ぐらいです。
私は、ここで「あれ、変だなぁ?」と思いました。通常、臨床研究を上手に正しく成功裏に遂行させたいと思えば、医療後進国など臨床研究の参加国に入れないのではないでしょうか?私がこの臨床試験の遂行責任者であれば「絶対に」これらの国など臨床試験に参加させません。(逆の意味なら参加させます)
つまり、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどが参加させられたのは、意図的にワーファリン投与群の成績を低くしたかったからだと、かなりこの推測が正しい可能性を持って推理できます。(この辺は私がいつも例えている、刑事コロンボの推理、これから自殺しようとしている人が本を読み終わって明日からまた読み始めるために本に栞をはさむだろうか、というような推理です)
では、なぜこれらの国でのコントロールが悪いのか?その国の民度と国民性もあろうかと思いますし、理由の1つが、ワーファリンの錠剤が1錠2mgで使用されている(これらの国に限ったことではありません)ことです。つまり、血液のさらさら度が足りないと、例えばそれまで1日2mg内服していた患者に2mgが追加されて1日4mgにされるのです。そうすると1か月後に血液検査すれば、さらさらになりすぎていて基準の目標値になりません。目標値を超えてしまいます。
日本でのワーファリンの1錠は1mgと0.5mgです。こまかく調整することができるのです。私は日頃1錠0.5mgの錠剤を半分足して、2mgから2.25mgにするなどして調節しています。
エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、おそらくトルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にコントロールできないことを知っていたのでしょう(韓国は意外です。私は上手にできると思っていました)。
プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎるのです。
情報の続きはまだまだありますので、次回お伝えします。
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Efficacy and Safety of Apixaban Compared With Warfarin at Different Levels of Predicted International Normalized Ratio Control for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation
Circulation 2013;127:2166.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
上の図はエリキュースの臨床試験アリストテレス試験の内容を詳しく解析したサブ解析のものです。Circulationという信頼性の高い医学雑誌ですので、多くのかたが原版をダウンロードできると思います。
前回お伝えしたように、通常の医者であれば目標のさらさら度である確率TTRという指標(time in therapeutic range)が80%はあると思います。私の診察のTTRは約90%です。
上の図はこの臨床試験に参加した国別の平均のTTRを示したものです。一番左のインドなどはなんとTTRが46%しかありません。その他、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなど、お世辞にも医療先進国とは言えない国まで参加させられています。逆にスウェーデン、デンマーク、ノルウェー、オーストラリアなどでは上手に治療をコントロールしており、TTRは平均で80%近いのです。平均で80%ということは私のように90%の医者がたくさんいるということです。図を見ていただくと、日本は残念ながら68%ぐらいです。
私は、ここで「あれ、変だなぁ?」と思いました。通常、臨床研究を上手に正しく成功裏に遂行させたいと思えば、医療後進国など臨床研究の参加国に入れないのではないでしょうか?私がこの臨床試験の遂行責任者であれば「絶対に」これらの国など臨床試験に参加させません。(逆の意味なら参加させます)
つまり、トルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどが参加させられたのは、意図的にワーファリン投与群の成績を低くしたかったからだと、かなりこの推測が正しい可能性を持って推理できます。(この辺は私がいつも例えている、刑事コロンボの推理、これから自殺しようとしている人が本を読み終わって明日からまた読み始めるために本に栞をはさむだろうか、というような推理です)
では、なぜこれらの国でのコントロールが悪いのか?その国の民度と国民性もあろうかと思いますし、理由の1つが、ワーファリンの錠剤が1錠2mgで使用されている(これらの国に限ったことではありません)ことです。つまり、血液のさらさら度が足りないと、例えばそれまで1日2mg内服していた患者に2mgが追加されて1日4mgにされるのです。そうすると1か月後に血液検査すれば、さらさらになりすぎていて基準の目標値になりません。目標値を超えてしまいます。
日本でのワーファリンの1錠は1mgと0.5mgです。こまかく調整することができるのです。私は日頃1錠0.5mgの錠剤を半分足して、2mgから2.25mgにするなどして調節しています。
エリキュースのこの臨床試験を計画した医者や製薬会社の人間は、おそらくトルコ、韓国、プエルトリコ、ウクライナ、フィリピン、ロシア、ルーマニア、中国、メキシコ、ブラジルなどでは上手にコントロールできないことを知っていたのでしょう(韓国は意外です。私は上手にできると思っていました)。
プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの臨床試験のワーファリン群の脳出血が多すぎるのです。
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