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ボクは雑草です

シフトクリエイティブ社長のブログです。

沖縄での撮影 (一)

2009-11-16 23:12:47 | 報道/ニュース
4年前、ボクは那覇市の南、南風原町(はえばる)の陸上競技場でCMの撮影をしていました。沖縄の撮影というと、青い海、白い砂浜、海の中のきれいな熱帯魚を想像するかもしれませんが、今回はそのような風景はまったくありません。漆黒の闇の中で光に照らされ豪雨に打たれ、必死で闘うアメリカンフットボールの選手たちの撮影です。当初、この企画は東京か名古屋での撮影を予定していましたが、アメリカンフットボールを実際にやっている人でなければフォーメーションが決まらず迫力のある試合シーンが撮れないことが分かり、モデルを含めあらゆるプロダクションに問い合わせましたが、経験者はいませんでした。アメリカ人はいてもアメフトが出来ない、カナダ人はいるけどアイスホッケーなら出来る、といった具合です。日本のアメフトチームにお願いすればとも思いましたが、やはりコマーシャル的に考えるとこの企画はどうしても黒人も含めアメリカ人の体形が必要でした。
その内、米軍基地にサークルでアメフトチームがあることを知り、横田をはじめ日本各地の米軍基地に問い合わせてみましたが答えはもちろん直ちにNOです。考えてみれば出来るはずがありません。当時はイラク戦争の真っ最中です。米軍は臨戦態勢で軍の兵士が日本企業のCMに出るなどということはあるはずがないからです。こうなったら日本中からアメリカ人のアメフト経験者を集めて即席チームを作り撮影するしかないと思っていた時、沖縄のコーディネーターから嘉手納基地にいる高校生のアメフトチームならなんとか交渉できるという返事が来ました。ボクはすぐに沖縄へ行き、嘉手納基地の正面近くの喫茶店でアメフト部顧問という体育の先生を紹介してもらいました。気さくな白人の中年の先生でした。ジャージの上下を着てリラックスした様子で話を聞き、「協力しますよ。」と言われ握手をした時、手のやわらかさにびっくり、「この人は軍人ではない。」と感じました。その後、高校生たちにも会いました。が、やはりこちらの期待する体形ではありません。困っているボクたちの様子を知ったその先生が、「だめかもしれないが軍の上層部に聞いてみる。」と言ってくれました。
それからおよそ2ヶ月、軍の司令部から「緊急の場合はすぐ基地へ戻ること。」を条件にOKが出ました。ボクは驚きました。どうして許可が出たのかわかりません。聞けば、少し前に普天間基地の米軍ヘリコプターが大学に墜落、さらに米兵による少女への暴行事件などもあり、米軍と日本の関係が悪くなるのを懸念した司令部が信頼回復のため特別に許可したとのこと。もちろん戦後60年、米軍が沖縄に駐留して以来、過去にもないことでこれからもあり得ないでしょう。今でも信じられません。ボクは「これでもうこのCMは半分出来たようなもの。」と気持ちも高揚し、それから何度も沖縄へ行きロケ地を探しました。ところが今度は撮影場所の許可が下りません。確かに陸上競技場を借り切って夜巨大な照明を照らし大雨を降らして地面を水浸しにするのです。まわりの住民には知らせなくてはいけないし競技場もしばらく使えなくなります、許可が出るはずがありません。必死で沖縄中の競技場をまわりました。しかしどれだけ頼んでもダメでした。そしてもう明日には帰らなくてはならないという時、那覇に泊まっていたボクたちに朗報が入りました。那覇のすぐ南の南風原町の役場の課長さんがOKをくれたと言うものです。翌日すぐに現地へ行き、課長に挨拶をしてやっと撮影場所が決まりました。出演者は普天間基地に所属するアメリカ海兵隊の若い兵士で現役のアメフトチーム16名、そして撮影場所は南風原町の町営陸上競技場、照明にも雨にもまさに申し分のない一級のロケ地です。夜のアメフトシーンのCMはこうして実現することになりました。(つづく)

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