国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

不思議の国のムーディーズ:金融危機の迫る米国で大手銀行の債務格付けを逆に引き上げ!

2007年03月09日 | 経済
●不思議の国のムーディーズ  
<原文>Mish's Global Economic Trend Analysis: Moody's in Wonderland 2007/03/07

Moody's appears to be evaluating credit risk from behind the looking glass, somewhere in Wonderland. I base that statement on the reasons Moody's is giving for raising the credit ratings on large US banks. Please consider the Bloomberg article JPMorgan Chase, Large U.S. Banks Have Ratings Raised by Moody's.

In a stunning display of twisted logic, Moody's has made it a blessing to have rising default risk.
By raising credit ratings, Moody's lowered big bank's borrowing costs with the likely consequence of ensuring that when the bailout comes it will be larger than it would have been otherwise. Gary Bauer at Moody's says this "reflects reality". Meanwhile Jonathan Hatcher of Delaware Investments points to Japan as the model and says "they're too big to fail".
http://globaleconomicanalysis.blogspot.com/2007/03/moodys-in-wonderland.html







●ムーディーズがJPモルガンチェースなどの米国大銀行の格付けを引き上げ 2007年3月3日 ブルームバーグ
<原文>JPMorgan Chase, Large U.S. Banks Have Ratings Raised by Moody's

By Joseph N. DiStefano and Steven Bodzin

March 3 (Bloomberg) -- JPMorgan Chase & Co., Bank of New York Co. and State Street Bank & Trust Co. gained higher credit ratings from Moody's Investors Service Inc., which said the U.S. government would back the banks if they faced default.

Moody's left New York-based Citigroup Inc. and San Francisco-based Wells Fargo & Co. unchanged because their financial strength ratings -- an element of their overall ratings -- already were at the top of the scale, the New York- based service said in a statement yesterday. Moody's raised Bank of America Corp.'s rating for reasons unrelated to federal aid.

Moody's announced new guidelines for bank credit ratings last month that consider financial strength along with any support companies may get from government and financial institutions if they get into serious trouble. Such backing might be offered if regulators conclude the effects of a failure would be catastrophic for the nation's economy, a concept rooted in banks' financial woes in the 1980s.

The changes affected ``only a few banks'' in the U.S. because the nation is a ``low'' support country, Moody's said. Each of Canada's six biggest banks, including Toronto-based Royal Bank of Canada, gained higher ratings earlier yesterday because of the new criteria.

`Too Big to Fail'

``People already feel like they're too big to fail,'' said Jonathan Hatcher, senior research analyst for corporate bonds at Delaware Investments, which holds $98 billion in corporate bonds.

Moody's gave JPMorgan, of New York, and State Street, of Boston, ratings of Aa2, a level higher than their prior Aa3. Bank of New York rose two notches to the highest rating, Aaa, from Aa2. A higher credit rating can lower a company's cost of raising money by signaling to lenders and investors that they face less risk.

The ratings service gave JPMorgan a 98 percent chance of enjoying government support because of its work clearing government securities, its extensive derivative operations and its large deposit share. Moody's assigned Bank of New York a 95 percent chance because of government clearing work and State Street a 70 percent chance because it dominates U.S. mutual fund servicing. The service rated Citigroup at 98 percent and Wells Fargo at 70 percent.

Rival credit rating firms including Standard & Poor's haven't adopted Moody's new criteria. Royal Bank of Scotland Group Plc, Dresdner Kleinwort and Societe Generale SA objected to the new system last month because it ranked Iceland's three biggest banks as better credits than ABN Amro Bank NV and ING Bank NV, citing the Icelandic government's statements in support of its banks.

Moody's made the switch to make its ratings reflect reality, said Gary Bauer, Moody's managing director for banks in the Americas.

`Interesting' Upgrades

The new policy has the potential to produce ``really interesting'' upgrades in Japan, where government support helped banks stay solvent during the 1990s, Hatcher said.

New Moody's ratings for banks in Japan, China, Australia, and other Pacific countries are due March 23. Ratings scheduled for March 9 include banks in France, Italy, Israel and Latin America.

The company upgraded Bank of America to A from A- for financial strength, lifting its deposit and senior debt ratings to Aaa. The agency said that while the government was 95 percent likely to help the bank stay solvent, its financial position gave it the highest rating without considering government aid.


Last Updated: March 3, 2007 00:59 EST
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=abohn9cD2fIw





【要旨】
3月3日のブルームバーグの報道によると、米国の大手格付け会社ムーディーズはJPモルガン・チェース、バンクオブニューヨーク、ステートストリートバンクアンドトラストの債務格付けを引き上げた。その根拠は、もし破綻に直面した際には政府からの支援が期待できることである。一方、シティグループやウェルズファーゴの格付けは、財務体質が既に最上位にあるとの理由で据え置かれた。バンクオブアメリカの格付けは政府の支援とは無関係に引き上げられた。

ムーディーズは2月に、従来の格付け基準であった財務体質に加えて、もし深刻な危機に陥った場合に政府や公的金融機関から得られるであろうあらゆる支援をも格付け基準に含める新たなガイドラインを設定した。ムーディーズによれば、米国は「政府からの支援の少ない国」であるため、ごく少数の銀行にしかこの基準変更は影響しないという。カナダの6大銀行も昨日、この基準変更によって格付けを引き上げられた。3月9日にはフランス・イタリア・イスラエル・ラテンアメリカなどの銀行に、3月23日には日本・中国・オーストラリア・その他の太平洋地区の銀行にこの新基準が適用される。ムーディーズ社の米国銀行部門の責任者であるゲーリー・バウアーはこれを「現実を反映した格付けへの変更」と述べている。

スタンダード・プアーズを含む競合する格付け会社はムーディーズの新基準を適用しない。また、アイスランド政府が自国銀行を保護すると主張したことを根拠にムーディーズ社がアイスランドの三大銀行をABNアムロ銀行やING銀行より高く格付けしたことに抗議して、スコットランド王立銀行、ドレスナー・クラインオート、ソシエテジェネラルは新しい格付けシステムを2月に拒否した。


デラウェアインベストメント社のジョナサン・ハッチャーは、「これらの銀行はtoo big to fail(大きすぎて破綻させられない状態)なのだと人々は感じている。また、この新格付け基準の適用によって、1990年代を通じて政府が銀行の支払い能力を支援した日本に於いて”実に興味深い”格上げが行われる可能性があるだろう。」と述べている。

Mish's Global Economic Trend Analysisでは、ミッシュ氏は「ムーディーズは不思議の国の鏡の後から信用リスクを評価しているようだ。驚くべきねじ曲げられた論理によって、ムーディーズは信用リスクの上昇を祝福している。格付け引き上げによりこれらの大銀行の借り入れ費用は低下するが、その結果もし救済が必要になった場合の費用は増加するだろう。ムーディーズ社のゲーリー・バウアーはこれを「現実の反映」と主張するが、ジョナサン・ハッチャーは日本をモデルとして取り上げた上で、too big to fail(大きすぎて破綻させられない状態)なのだ、と言っている。」と皮肉っている。






●世界的に一部銀行の格付け引き上げの可能性=ムーディーズ 2007年2月22日 木曜日
 [ニューヨーク 21日 ロイター] 格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは21日、全世界を対象として、一部の銀行の債務格付けを引き上げることになる可能性が高いと明らかにした。銀行が親会社や政府などから受ける財務面での支援をより正確に反映させる新たな手法を用いる結果としている。ムーディーズは23日のニューヨーク市場の引け後から7週間かけて、90カ国以上、1000超の銀行の格付けを見直す計画。まず23日に北欧と東欧、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの銀行に関する変更を発表し、3月2日に北米、その後毎週、各地域を取り上げていくという。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/reuters/20070222/119603/




●Mish's Global Economic Trend Analysis: Death Spiral / No Bull Interview 2007/03/08

<要旨>
米国最大手のサブプライム不動産金融会社の一つであるニューセンチュリー社は3月2日に強制捜査が始まったことと幾つかの借り手との債務契約違反が明るみに出たことで、2月8日の高値から昨日(3月7日)までに86.21%下落した。しかし、投資銀行のジェフェリーズ社のアナリストは、投資判断をHoldからUnderperformに引き下げただけであった。多くの投資家は、HoldとはSellを意味するのかと考えるだろう。もしそうならば、UnderperformとSellの違いは何だろう?そして、強制捜査と86%の株価下落でもSellという投資判断が出ないのなら、一体どんな状態にならばSellが出るのだろう?ジェフェリーズ社の投資判断変更の時点で株価は既に86.21%下落しており、今日(3月8日)の続落で下落幅は88%まで拡大している。

http://globaleconomicanalysis.blogspot.com/2007/03/death-spiral-no-bull-interview.html




【私のコメント】
ミッシュ氏とジョナサン・ハッチャー氏のコメントが全てを示している様に思われる。1990年代に日本の多くの金融機関や途上国の債務格付けを意図的に暴落させて金融危機を作りだしたムーディーズは、金融危機が自国に迫ると逆に格付けを引き上げ始めたのだ。国際金融資本のダブルスタンダードをこれほど明確に示すニュースはない。また、この格付け基準変更はFRBを含めた米国政府・国際金融資本の合意であるとも考えられる。格付け引き上げの対象にならなかったシティグループやウェルズファーゴが破綻の危機に直面した場合に支援しないことを意味している可能性もあるだろう。ジェフェリーズ社の件では、投資銀行の投資判断が如何に詐欺的かということもわかる。

なお、ブッシュ大統領が3月8日から14日までの間にブラジル・メキシコなど中南米五カ国を訪問するが、その目的はブラジル・メキシコとの貿易・通貨などに関する協定ではないかと想像する。米国の世界覇権終了後の世界は、日米欧の三極から成るブロック経済に移行することだろう。南北アメリカを統一する貿易圏・経済圏を結成することがブッシュ政権の理想であろう。しかし、現実にはアメリカ+カナダ+メキシコの北米とブラジルを中心とする南米の二つのブロックになるかもしれない。

同様に、ユーラシア大陸北部はロシアを含んだ拡大EUブロックに、日本+中国+モンゴル+インド+アセアン+オセアニアが大東亜共栄圏ブロックに移行することだろう。北アフリカから中近東・中央アジア・パキスタンまでのイスラム圏やブラックアフリカは独立したブロックを形成するか、あるいは他のブロックに従属するかの選択を迫られるだろう。まさに、ジョージ・オーウェルの予言・ジャパンハンドラーズ氏の予想の成就そのものである。

この私の予想が正しければ、ブッシュ大統領がメキシコ訪問を終える3月14日までは暴落阻止チームが踏ん張って米国金融市場の破綻は起きず、3月15日以降に持ち越されるかもしれない。Robert Pretcherの「3月15日に気を付けろ!」という予想が当たるのだろうか?



また、3月2日のブルームバーグでゴールドマンサックスやメリルリンチはほとんどジャンク(屑)だと両社のトレーダー自身が主張しているというニュースがある。ゴールドマンサックス、メリルリンチ、モルガンスタンレーのニューヨークに本拠を置く三つの投資銀行の債券に関連したクレジット-デフォルト スワップは、格付け会社のムーディーズによると、Baa2相当の水準で取り引きされた。これは、実際の無担保社債の格付けであるAa3より5段階低い水準であり、投資不適格、つまりジャンク債の水準からわずか2段階上であるに過ぎない。モルガンスタンレーやメリルリンチのクレジットスワップの価格は今年に入って約3倍に急上昇しているが、その一方でドイツ銀行のクレジットスワップの価格は史上最低水準にあるという。クレジットデリバティブが素人ではなく玄人の間の取引であろうことを考えると、こちらが真に正しい格付けであり、ムーディーズの格付けは素人を欺くための詐欺そのものであろう。
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3 コメント

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1994 (ベンジャミン)
2007-03-10 00:25:30
日本政府、アメリカの圧力に完敗!
江田島は小笠原に左遷か?
http://www.teamrenzan.com/archives/writer/mineyama/post_2.html

アメリカの陰謀映画ディレクター Aaron Russo が二-ルロックフェラーに、「これから一般市民の脳に半導体を埋め込んで、ロボットにする計画がある」といわれたそうだ。
それは現実的に可能なのでしょうか?
以前、自分がそういう実験をされたという男が私の事務所に来ました。その時私は、彼は精神病院に行くべきだと真剣に思った。
しかし先週、中国の政府は鳩の脳に半導体を埋め込んで、飛ぶ方向をリモコン操作できるということを発表した。アメリカ海軍も同様の方法でサメを操れるということを発表している。またアメリカの刑務所では8人の危険犯罪者の脳に半導体を埋め込んで、暴れたときに停止させたという論文発表もある。
一般論でいうと、実際の研究というものは、発表より10年以上進んでいるものだ。
アメリカでは今、皮膚下に半導体チップを入れて、ID情報やクレジット情報などが暗記されて買い物が便利になるというキャンペーンがある。一部の会社も身分確認のために従業員に義務付けようとしている。
こういう事件が現実におこっている限り、もはや Aaron Russo が言っていることは正しいのかもしれない。
私は死んでも絶対にこういうものには承諾はしない方が良いと思うが。
記事:
http://benjaminfulford.typepad.com/benjaminfulford/2007/03/post_8.html
返信する
Unknown (Unknown)
2007-03-11 22:25:27
国際金融資本は戦争リスクで「売り」一色、その金額は28兆円也

http://my.shadow-city.jp/?eid=375344
【アメリカ】ドル崩壊カナダ・米国・メキシコ統合へ!【オワタ】

いよいよドル暴落、米国債踏み倒しのカウントダウンなのか、行き詰まった
アメリカがカナダ、メキシコと合併するという情報がCNNで流れた。AMEROと
いう、まったく新しい国を作るそうで、当然、国債は踏み倒しだろうね。お
いらが国旗を作ってやったので、使ってくれ。ディズニーみたいにケチ臭い
ことは言わないので、自由に使っていいよ。


イラン攻撃で一番損をする国は日本。
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/9a87a4e175ef0754de91f53a67a02f0f


外国人は「売り」、個人は「買い」 日本市場、主役逆転
2007年03月11日07時56分
 外国人投資家の大量の売り注文に、個人投資家が買いで応戦――。2月末に起きた世界同時株安をきっかけに、日本の株式市場ではそれまでの売りと買いの主役が逆転していたことが、東京証券取引所の集計で明らかになった。
http://www.asahi.com/business/update/0311/002.html

<三井住友銀行>韓国「国民銀行」と業務提携へ 3月9日13時45分配信 毎日新聞

 三井住友銀行は9日、韓国最大の商業銀行「国民銀行」と業務提携する方針を
明らかにした。週明けに奥正之頭取が訪韓し、提携文書を交わす。三井住友の
顧客が韓国進出を検討している場合、現地事情に詳しい国民銀行を通じて情報を
提供するほか、企業向けのプロジェクト融資などを共同展開することも検討する。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070309-00000051-mai-bus_all
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Unknown (Unknown)
2007-03-14 02:06:18
中国が漁夫の利を得た。

中国がイラン・イスラエルの仲裁に 2007/02/02

【北京IPS=アントアネタ・ベツロヴァ、1月12日】
 イランの核兵器獲得を阻止するため、イスラエルが戦術核兵器を使ってイランを攻撃する計画かもしれないとのセンセーショナルな報道がある中、中国はイランとイスラエルから指導者を相次いで北京に迎え、この2週間、中東紛争交渉者というこれまでにない役割を演じた。
 イランの核交渉責任者アリ・ラリジャニ氏が先週北京を訪問したのに続き、今週は、拒否権を行使できる国連安保理常任理事国にイラン制裁の強化を働きかけることを目的に、イスラエルのエフード・オルメルト首相が中国を訪れた。
 両政治家ともに、中国外交に感謝の意を示し、訪中は成功と評価した。オルメルト首相の訪中に先立ち、北東の都市ハルビンではユダヤ人共同墓地の修復が行われ、広く報道された。オルメルト首相の祖父母が19世紀ロシアでの迫害を逃れてハルビンに亡命、父親はイスラエルに移住するまでハルビンで育った。中国は大規模な修復工事に300万元(38万5,000米ドル)を投じた。
http://www.janjan.jp/world/0702/0701309091/1.php
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