Project Vegaさんより http://www.project-vega.org/2014/03/5_30.html
(1章序文より抜粋) この文章は様々な専門家が、インターネット、テレビ、本などで断片的に論じている出来事を集め、年代別に並べたSFである。可能な限り確実性の高い物的証拠やデータを優先的に集めているが、偽情報やノイズの判断が難しいこともある。特にチャネラーのチャネリングに頼った文章に関しては、本当かどうかは判断が難しい部分なので、この内容を鵜呑みにするのではなく、最終的には自分の頭で考え、確認して、正しいかどうか判断する必要がある。
5章 シュメールとアヌンナキ : 地球人のルーツ
(つづき)
イナンナの冥界入り----------------------------------------------------------------------------------------
エレシュキガル:イナンナの姉でナンナールが、ニンガルと正式に結ばれる前に、ヘビ族のラクササスの皇女と結ばれて生まれたイナンナの姉。魔法を使ってライオンなどに変身できる。ネルガルと結ばれて、アンダーワールドを支配している
グガランナ:エレシュキガルの母。ヘビ族のラクササスとシリウス星人のハイブリッド。
ニンシュバル:イナンナの召使
ネティ:エレシュキガルに使える黄泉の国のゲートキーパー
シュガルラ:シェムに乗る時や戦闘する時にイナンナが頭につけたヘルメット
サッカル:僕・召使を意味するアヌンナキの言葉
ガンゼル城:黄泉の国のエレシュキガルの城
イナンナは、滅多に姉のエレシュキガルと会うことはなかった。なぜならば、エレシュキガルが自分に嫉妬していることを知っていたからだ。ふたりの父であるナンナール(月の神)は、イナンナの母ニンガルと結ばれる前に、アブズの果てに旅して、そのときにラクササス帝国のプリンセス「グガランナ」と恋をして結ばれた。ラクササス族というのは、地球が誕生するや否や、ほかの星から移り住んだ、地上でいちばん古いヘビ族で、その血が流れるのがエレシュキガルである。
エレシュキガルの母グガランナは、イナンナの母親にひけをとらないくらい美しい姿をしている若き姫で、魔力を秘めた美しいグリーンの瞳をしていた。ナンナールはグガランナの美しさに一目ぼれして、結ばれて生まれたのがエレシュキガルである。ナンナールはイナンナの母、ニンニルと結ばれたあとも、グガランナと交際を続けた。
イナンナより先に生まれたエレシュキガルは、あとから生まれたイナンナに対して強い嫉妬心があった。まず自分が、イナンナのように純粋なアヌの血を受け継いでいないことがひとつで、”me(メ)”の数はイナンナに負けることなど、なにかとイナンナを恨んだ。
エレシュキガルの母親は、誇り高きラクササスの皇女(プリンセス)、「グガランナ」であることにはちがいなかった。そんなすぐれたハイブリッド宇宙人がグガランナであり、自身も父方のシリウス系のブラッドラインを引いていることから、アヌンナキの間でも高次の存在として知れわたっていた。しかし、母グガランナに起きたある不幸が原因で、娘(エレシュキガル)とは会えなくさせられた。ということでエレシュキガルは、生まれてからすぐラクササス帝国の王家に引き取られた。
ラクササス族はヘビ族の中でも、いちはやくから地球にやってきた。彼らの大半がスネークの特徴を持ち合わせていて、人間界ではいわゆる悪魔や鬼の姿で現れるといわれている。とくに人類の創世記においては、聖書よりももっと古い時代シュメールにおけるルルたちには、特に恐れられていた存在なのである。だがラクササス族の特徴は、変身する力を持っていたことである。見るからに母親ゆずりのラクササスの血の濃いエレシュキガルは、別の姿で現れることもあり、魅力的な女戦士の姿で現れたり、ライオンの姿で現れたりすることができた。
エレシュキガルは、妹のイナンナと比べても、まったく姉妹には見えないほどちがっていた。エレシュキガルはイナンナよりも、体格がひと回りほど大きく、筋肉質で、見るからにパワフルだった。そんな姿で彼女はたまにアヌンナキの会議に姿を現す。あまり誰とも必要以外は姿を現さない彼女のこれが、ほんとうの姿だった。
彼女はイナンナのように、体全体からブルーの光を放つプレアデス系の宇宙人ではなかった。エレシュキガルは、ラクササスのグリーンの目をしていた。肌はシリウス系特有の虹色の光沢があった。
エレシュキガルもまたほかのアヌ一族の女神たちと同じように、自分の魅力を大いに活用して、たとえばエンキを仕留めたりしてパワーを追い求めていた。そんなエレシュキガルは、アヌンナキの女神の誰よりもいち早く、エンキの二男ネルガルを見事に仕留めて、妃となっていた。しかし、そこはアヌンナキの女神で、エンキともイナンナよりずっと前から親しい関係が続いていた。
エレシュキガルは、ラクササスに伝わる奥義である「クンダリーニ」とよばれる、エネルギーソースにいつでもタップインできる術を知っていた。まさしくそれがヘビ族に伝わる秘宝であり、それは彼らヘビ族特有の長い脊髄(せきずい)を使う魔法をもって、遥々銀河の果ての惑星からドラゴン族に追われるようにして地球に辿り着いた異星人なのである。
彼らは瞬間的に一関節ごとに宇宙の壮大なエネルギーを伝達する術を知っていて、中でもエレシュキガルはその達人であり、彼女は自分の頭からと、尾っぽから同時にエネルギーを吸い込んでは、コロコロと変身することができる。
エレシュキガルは、宇宙のどの星の生き物よりも変身は器用で、複雑な生き物に変身する。しかしながら彼女の弱点というか、凶器というか、それは「怒りの感情」であり、これは人間には比べものにならないほど激しいものである。彼女は地底で眠っていた恐ろしい悪魔を呼び覚ますこともできる。みるみるうちにエレシュキガルは恐ろしい猛獣に変身して、カニバル(人喰い)としても知られ、アヌンナキの男神たちの間でも、本当の彼女の正体を知っている者たちから恐れられていた。
筋肉質の美女戦士ともいうべき姿が普段のエレシュキガルであるが、そのような女神の極端な半面は、ニビルの女神たちならみんな持ち合わせている特徴だった。
エレシュキガルの夫であるネルガルは、実際にエンリルテ(エンリル一族)の女神たちの憧れの的で、決してイナンナも惹かれていなかったというわけではない。女神たちから見ても、もっとも安心できる魅力的なポストにいたのがネルガルである。いうまでもなくエレシュキガルは、ネルガルを自分のいちばんの宝とした。
エレシュキガルはネルガルと結ばれてからすぐに、エンキから「黄泉の国」の守護神となる大役を仰せつかった。夫のネルガルと共にエンキテの土地のアブズの南の果ての領土を任せられた。そこは場所的にいうと、アフリカの南端から南極にかけての土地で、そこは現代の地図では探すことのできない幻の大陸だった。
当時地球に降りたったアヌンナキらによって、そこら一帯は、「地界(アンダーワールド)」と呼ばれた。そこにはやたら毒ヘビや昆虫が多く生息し、木一本さえ生えない乾燥した砂と崖だらけの土地だった。誰も足を踏み入れない知られざる場所に、エンキはアヌンナキの大切な宝物をたくさん隠しておいた。そして、そこを守るという大切な任務をエレシュキガルに委ねた。
よって彼らは、つまりエレシュキガルとネルガルは、追放処分を受けてアヌンナキの都から遠く離れた土地に移り住んだのではない。「地界(アンダーワールド)」は、エンキの秘密の宝物がたくさん隠されている「黄泉の国」への入り口で、アヌンナキの女神の中でも、決してイナンナにひけをとらないくらい重要なポストにいるのが、黄泉の国の女神、エレシュキガルなのである。
アブズの最南端からネルガルとエレシュキガルが支配する「地界(アンダーワールド)」が広がっている。そこは、現在の地図でいえば南極あたりであり、そこに「黄泉の国」の入り口があった。エレシュキガルは、その場所に「ガンゼル城」と自らが称す立派な城を建てた。彼女はたいていは、その中で過ごしていた。
ガンゼル城は、クリスタルや宝石が豊富に施され、広大で美しい。が、その城には死人以外誰も訪ねてこないので、淋しい雰囲気を漂わせていた。その大きな城のどこかに、エレシュキガルはいつもひっそりと身を隠している。そして彼女は、自分の部下にしっかりと黄泉の国の入り口を守らせていた。ガンゼル城のどこかに黄泉の国に下る扉がある。その奥にエンキは誰にも知られてはならない大切な宝物を隠した。
「地界(アンダーワールド)」は、恐ろしくて誰も近づかない。それはアヌンナキだけではなく、ルルたちも同じであり、そこにいくとヘビの魔物が出てきて喰われてしまうと伝えられていた。そんなガンゼル城の中のあらゆる場所にエンキの宝物は隠されていた。地球でいまだかつて発見されたことのないような珍しいダイアモンド鉱石の種類やサファイア、そしてもちろん、特上の金の塊がその壮大なスケールの城のどこかに収納されているということを、イナンナは以前にエンキから聞かされていた。
ではなぜ、エンキの宝の隠し場所が、「黄泉の国」なのか?それは、エンキとエレシュキガルだけが知っている秘密なのである。おそらく彼らは、死んだアヌンナキの魂を、なんらかの魔法によって甦らせるというある種の錬金術的な方法で、他次元への旅へと送りだすことをしていたにちがいない。アヌンナキの尊い魂が無事にこの世を離れ、次なる星でも永遠の命を授かるようにと、彼らはきっと準備するために黄泉の国を創ったのだろう。
■紀元前16万年頃
現在の人類に最も近い共通女系祖先が、アフリカに分布していた。これはミトコンドリア・イブ説と呼ばれ、ここからヨーロッパや東アジアへと拡散していった。
■紀元前15万8400年頃
シッパルの建設----------------------------------------------------------------------------------------------
地球が何回も周期を繰り返す間、地球には父と子はいなかった。その間、地球では計画は何も実施されなかった、ラーム(火星)ではイギギが騒動を起こしていた。エンリルはアヌに秘密の言葉を伝えた、彼はアヌに自分の心配事をニブルキから発信した。
「エンキとマルドゥクは月へ行ってしまいました。数えられないほどの周期の間、彼らはそこに滞在しています。彼らは何か神秘的なことをしています。何を計画しているのか誰にも分かりません。マルドゥクはラーマ(火星)の中継基地を放棄し、イギギはイライラしています。砂塵嵐(さじんあらし)により中継基地は影響を蒙(こうむ)っており、どういう被害があるのか私たちには分かりません。
エディンに戦車場を設立しなければなりません、そこから金を直接ニビルへ運ぶべきです。ラーマ(火星)の中継基地は今後必要なくなります。それはニヌルタの計画であり、その点に関する彼の理解力は絶大です。彼に頼み、戦車場をバドティビラの近くに造らせましょう。ニヌルタをその最初の司令官にしましょう!」
アヌはエンリルの言葉を熟考してエンリルに応答した。
「エンキとマルドゥクは地球へ帰ろうとしている。月に関して彼らが何を知ったか、まず彼らの言葉に耳を傾けよう!」
エンキとマルドゥクは月を出発し、地球へ戻り、「今の状態では中継基地は不可能だ!」と、彼らは報告した。
「戦車場を建設しよう!」 アヌは言った。
「マルドゥクをそこの司令官にしましょう!」エンキはアヌに言った。
「その任務はニヌルタのものだ!」エンリルは怒鳴った。
「イギギの指揮はもはや必要ではありません。マルドゥクはその仕事をよくわきまえています。「天への出入り口」の責任をマルドゥクに預けましょう!」そうエンキは父親に言った。
アヌはその件を心配し、よく考えた末、今ライバル意識が息子たちに影響を与えていると感じた。アヌには智恵が与えられていた。その智恵で彼は決定した。
「金を扱う新しい方法として戦車場が指定された。今後は新世代の手にその任務を預けよう。エンリルでもエンキでもなく、ニヌルタでもマルドゥクでもない、第3世代に責任を取らせよう。ウツを司令官にしよう!天の戦車場を建設しよう。それをシッパル「鳥の町」と名付けよう!」
これがアヌの言葉であり、王の言葉は絶対だった。
建設は81シャル(紀元前15万8400年頃)に始まった、それはエンリルの計画に従った。ニブルキがその中心だった、それは「地球のへそ」とエンリルによって指定された。いくつかの円上に位置や距離によって昔の町が配置されるに従い、下の海から山の方に向かって指している矢のようにそれらは配置された。アララテ山の双子の峰の上に、北の空の方に向けて、彼は線を引き、矢とアララテ山の線が交わる所に、地球の戦車場、シッパルの場所を彼ら印した。そこへ矢は真っ直ぐ導き、それはニブルキから等しい円により正確に配置された。その計画は素晴らしかった。その精確さに誰もが驚嘆した。
■紀元前15万4800年頃
シッパルと天への門の完成--------------------------------------------------------------------------------
シッパルの都の中心部には、「ニビル・キ」と名付けられたアヌンナキの中枢機関が置かれることになった。シッパルの都は、そこから四方に広がるように開発は進んだ。最終的には、エンリル自らが運命の石板で新しい港の設計をして、ニビルのアカデに負けないくらい整った都市が形成されていった。
エンリルの息子ナンナールに生まれた双子の兄妹の兄、ウツがシッパルから少し離れた場所に新しく建設された、「天への門」の神となった。エンリルは、自分の可愛い孫が大役を引き受けたことを誇りとした。「シッパル(sippar)」は、エンリル自らが進んで開拓した都である。ニビルに通ずる重要な港都市がシッパルである。
アヌは、「天への門」が完成したと聞くといち早くニビルから飛んできた。そのときアヌは、シッパルの神ウツとそこのアヌンナキたち全員に、鷲の紋章が入った制服を記念に贈った。到着したアヌは、その管制塔の素晴らしさに両手を叩いて喜んだ。
「最高の出来ではないか! ウツ、よくやってくれた!」
アヌは、皆の前でウツを褒め称えた。そのとき開港式が開かれた。この機会にイギギがマルドゥクの命令により、ラーム(火星)から地球へやって来た、着陸場所とアブズからもアヌンナキが集められた。背中の叩き合いと歓声、祝宴と祝賀会が催された。
そのとき一人の踊り子が、会場の舞台に現れ、アヌのために舞を披露した。さて、そのときの踊り子こそが、ウツの双子の片割れの妹、イナンナだった。
イナンナは、二つの翼の紋章(ニビルの象徴)が付いたヘルメットをかぶり、シェム用のゴーグルをかけてニビルの操縦士の姿で登場して皆を驚かせた。彼女が、皆の間を巧みにすり抜けながら踊ると、誰もが失神させられそうになった。イナンナは自分が奏でる横笛のリズムに合わせて体をくねらせている。そのしなやかな動きに、アヌはもちろんのこと、アヌンナキの男の神々は皆、一瞬にして若きイナンナの虜になってしまった。イナンナは武装姿であっても、女性性に満ちた曲線美で皆を魅了した。アヌンナキの男神たちは、足元から勇気が湧いてくるような感覚を覚えた。
アヌは彼女にキスをした。「アヌの愛する者」という意味で、彼は彼女に愛情をこめて、アヌニトゥと呼んだ。出発の前に、アヌは男女の英雄たちを集めた。「新時代が始まった!」そう彼らに言った。
「金の救いが直接提供され、苛酷な労働の終わりが近づいている!ニビルの保護のために十分量の金が貯えられるならば、地球での労働は減少し、英雄たちは男性も女性もニビルへ帰るようになる!」
このようにアヌ王は集まった人々に約束し、彼らに大きな希望を与えた。苛酷な労働が2~3シャル(7200年〜1万800年間)続いた後、彼らは故郷へ帰るようになる。前よりはるかに壮観ななりでアヌはニビルへ戻って行った。金、純金が彼と共に運ばれた。
ウツは新しい任務を大切に行った。バドティビラのニヌルタは指揮権を保持した。マルドゥクはラーム(火星)へは帰らなかった。また父親エンキと一緒にアブズへも行かなかった。天の船で地球を把握するために、あらゆる大地の上を彼は徘徊したいと思った。イギギに関しては、ある者はラーム(火星)に、ある者は地球に、ウツがその指揮者とされた。
アヌは地球を去る前に、イナンナと二人だけになれる特別な時間をとった。シェムに乗り込む直前にも、イナンナを引き寄せて別れの熱いキスを交わした。アヌからエンリル、そしてナンナールからイナンナと、これだけ世代が離れているのに、その関係性は深遠な仲でもあった。アヌは一族たちに別れの挨拶をした。
「諸君、アヌンナキの新たなる時代がやっと訪れた、おめでとう!金がスムーズにニビルに運ばれると貯蔵することが可能になる。そうすればもっと楽になるだろう。それまでの辛抱だ。では、また!」
アヌはシェムに乗り込み、瞬く間に天への門から出港していった。
■紀元前15万1200年頃
ニビル星に戻っていったアヌンナキ---------------------------------------------------------------------
マルドゥク:エンキの長男。エンキがニンキと結ばれる以前にヘビ族のラクササスの皇女と結ばれて生まれた。宇宙征服の野心を持ち、エンキテ(エンキ一族)の中で力をつけて、イナンナに対抗する。後にラーの神(光の使者)、アムン(隠れた神)と呼ばれる
ニヌルタ:エンリルの第一子。エンリルが若い頃、ニンマーと駆け落ちして生まれてきた男神
ウツがシッパル近くの「天への門」を司る神となった頃には、マルドゥクはイギギを引き連れて地球に移住した。そうして地球にやってきたマルドゥクは、父エンキが住むアブズにも立ち寄ることなく、早速それまでの念願だった地球放浪の旅に、ひとり自家用シェムに乗って去った。
そのころの地球はというと、今までずっと重労働に身を投じてきたアヌンナキが、やっとニビルへの引き上げが許可される時期を迎えていた。アヌンナキが地球に降り立ってから、すでに人口は増え、ニビル星人を全員一度に帰すことは到底できないことだった。そこで、ヒエラルキー(階層)の上位から、ニビルに帰還することになった。しかし、これに腹を立てたのは、現役で重労働を課されているアヌンナキの労働者たちだった。不満の声は、ニヌルタの管理下にある「バド・ティビラ」で事件の発端となることが起きた。彼は父であるエンリルに、
「父上、なぜ、アブズだけにルルが配給されるのですか?バド・ティビラには、ルルをいつ送ってくださるのですか?」
と、不満をぶつけた。しかし、この問題は複雑で単純には解決できそうもなかった。やがてあちこちの都で、アヌンナキのピラミッドのいちばん底辺にいる労働者階級が暴動を繰り広げた。
金属都市のバド・ティビラは、地球ニビル間のルート改正後、最も発展した都市である。この都市を任されたのが、エンリルテの王で兄のニヌルタである。それにしてもアブズでは、アヌンナキの労働者の任務が終わり、次々と上層階級からニビルに引き揚げているにも関わらず、バド・ティビラでは、未だにルルが不足していてアヌンナキが重労働に苦しんでいた。これにはニヌルタも我慢がならず、彼自身も労働者階級を扇動して暴動を企てた。ニヌルタは「戦争の神」とルルたちから呼ばれている通り、彼自らも武装してアヌンナキの遠征隊を指揮した。そして、アブズに攻め入った。ニヌルタは、現地で増えたルルを網で捕獲しては、金属都市バド・ティビラに近いエディン地方まで連れていった。ニヌルタのこの謀反(むほん)に対してエンリルは怒った。
「ニヌルタ、お前はなんてことをしでかしたんだ!私があれほど苦労してアダマとティ・アマトをエディンから追放したのに!」
「父上、違います!原始的労働者が生まれる以前にアブズで起きたような暴動が、バド・ティビラでも起きるのを恐れたのです。だからルルをエディンに連れて帰ったのです。でも、こんなことはもうすぐどうでもよくなります。そんな時代がやってくるのです。ですから、この一件はお見逃しください!」
ニヌルタは必至で弁解したが、そんな言葉に納得させられるエンリルではなかった。
「勝手にするがいい。私は一切お前のしたことに責任は持たないし、援助も差し伸べないからな!」
エンリルから見放されてもニヌルタは、捕獲したルルをエディンに連れてきた。ニヌルタは、彼らがあらゆる雑用をこなせる召使となれるように訓練した。ルルたちはまだ服も与えられていない全裸の状態で仕事をさせられていて、あとは放し飼いにされていた。欲情に任せて草木の茂みでルルたちは絶えずつがっていた。そして、1シャル(3600年)が過ぎるころにはルルたちは増えて、四世代目、五世代目が誕生してから地球の人口は徐々に増え始めていた。
■紀元前14万5700年頃
この頃、メソポタミアのシュメール王朝のバド・ティビラの王が、アラルガルからエンメンガルアンナ(在位28800年間)に変わる。
■紀元前12万9600年頃
この頃、地球人の繁殖にエンキは喜んでいた。アヌンナキの分担ははるかに軽くなり、彼らの不満は減少した。地球人の繁殖により、アヌンナキは労働を止め、人間の労働者たちは奴隷のようになっていった。7シャル(2万5200年)の間、アヌンナキの分担はずっと軽減された。彼らの不満は少なくなった。
■紀元前11万8800年頃
捨て子のアダパとティ・ティ------------------------------------------------------------------------------
バド・ティビラ:金属都市。ニヌルタが司令官として管理する都
生命のエッセンス:遺伝子情報が含まれているDNAのこと
この頃、3600年周期でニビル星が地球に接近していた。地球上のルルたちの人口が増加していた。ついに、肉体労働を課せられているアヌンナキはほぼなくなり、暴動や不満の声も消えたものの、それもつかの間だった。こんどは、ルルが食糧危機に直面するという事態が起きた。
アヌンナキが創造した、「ルル」と彼らが呼ぶ原始的労働者たちが増えていったことによって、自然界の食べ物だけでは不足するようになった。それにしてもまだ、ルルたちは海の幸を糧とする知恵がなかった。金の採掘を課せられている彼らは、重労働の合間に野山で食料を漁(あさ)るような生活をしていた。
エンキは、そんなアダマ(アダム)の子孫たちの姿を観て、能力開発の必要性に気づいた。ルルは従順で、ある程度の道具を使いこなせても、まだ協力し合って食べ物を育てたり、備蓄するような能力はなかった。とはいっても、その頃の地球はまだ農業の概念さえ生まれておらず、家畜の原形となる動物(羊類)さえもニビルからまだ運ばれてくる前だった。そんな時代に、ルルたちの都であるエディン周辺で暮らすアヌンナキには、一家庭に必ず一人は、ルルの奴隷がいた。
このようにある程度の安定が見られた頃に、またもやニビル星が接近してきた。接近するにしたがって、いつものように地球は異常気象に見舞われた。
アブズ以外の5つの都市でもルルが増え続け、栄えていった。ニヌルタの都「バド・ティビラ」にも食糧危機が襲ってきた。エンキとエンリルは、またもやこの緊急事態を乗り越えるために、シナイ半島を中心に散らばっていた自分の子供たちや子孫を召集して、アヌンナキの会議を開いた。その会議では、最初にエンリルがエンキを厳しく責めた。
「そもそも君のせいで、こんな事態になってしまった!ルルだけではなく、我々アヌンナキの食糧まで不足するとはどういうことだ?!この解決策は君が考えるべきだ。」
「確かに、私に責任があるかもしれない。でも、ルルの誕生によってアヌンナキの労働が軽減されたことも事実だ。あれから7シャルが経ち、最近ではルルが魚や野生動物を捕獲できるようになったことも観察されている。もちろん、それでもまだ十分ではないだろう。だから、今度は彼らに穀物の種を蒔かせ、羊を飼うことを覚えさせようと考えているところだ。」
エンキのアイデアには誰もが賛成した。エリドゥに戻ったエンキは、ルルたちのジーンになにが不足しているのか、そのために彼らの「生命のエッセンス(DNA)」を徹底的に再調査した。
エンキは高官イムシドと共に、フィールドワークに出かけた。そこでアブズの発掘現場で働くルルたちや、エディンの森で野性的に暮らしているルルたちをまず観察してみることにした。
調査を通してわかったことは、ルルたちの子供に顕著に現れていた。ルルの子は進化するどころか、なんと退化しているということがわかった。これにエンキは大ショックを受けた。
群れになって荒野に生息する彼らは、濃くなる血縁関係が原因で、遺伝子に異常を生じさせていた。このあたりが、彼らとアヌンナキとの決定的な違いであることは言うまでもなかった。これはアヌンナキが人間に人工的な操作によって起こさせた欠陥でもあった。アヌンナキにはプラスに働く近親相姦(きんしんそうかん)が、ルルたちの場合は反対に働くということをエンキははっきり確認した。
野生化したルルの中には衰弱しきっている者たちもいて、エンキは哀れな彼らの姿を見るたびに心を痛めた。そんなエンキはあるとき、ルルを観察するために、ユーフラテス川を上流へと上った。野生のルルが生息するエリアを探した。しばらく舟を漕いで行くと、ルルの子供たちが楽しそうに水浴びをしている光景にエンキは遭遇した。その中に二人の若い娘が混じっていた。その小さな胸の膨らみからするとまだ少女で、エンキはそのはつらつとした野性美に目を奪われてしまった。エンキは彼女たちにちょっと挨拶がしたいとイムシドに頼んだ。
「もちろん、お好きになさいませ。舟を寄せましょう」
イシムドは心よく返事して、乗っていた舟を岸辺につけた。アヌンナキの神々は人間よりも性には奔放だ。調査という任務をすっかり忘れたエンキは舟から飛び降りると、そのふたりの野生のルルの娘たちに近づいた。エンキに気づいた少女たちは、驚き目を丸くしてその場に立ち尽くした。エンキは、携えていた箱の中から首飾りを取り出して、一人の娘の首にかけてやった。するとその子は喜んでエンキの後について森の中へと消えていった。
エンキが足を止めるとその子は、近くの木から果実をもいで差し出した。エンキはその可愛らしい所作(しょさ)に感動して思わず娘の腰を引き寄せ、キスをした。それから、二人は涼しい木陰で無邪気に戯(たわむ)れ、やがてエンキの神聖なエッセンスは彼女に届いた。もう一人の娘は、この様子を覗いていたのか、その子も野原から摘んできたベリーを彼に差し出した。エンキはその娘にも首飾りをあげて、同じように再び駆り立てられた。その後エンキはイシムドが待っていた舟に戻り、彼に言った。
「君はあの娘たちとしばらく一緒に留まって、妊娠するかどうか確かめておくれ。しかし、このことを誰にもしゃべるな。二人だけの秘密だぞ。」
そう託(かこつ)けるとエンキは、停泊させてあった舟に乗り込み、ユーフラテス川を下るとニンキが待っているエリドゥの城へ帰っていった。
イシムドはというと、エンキに頼まれた通りに、二人の娘を注意深く観察していた。するとエンキが去ってから四日目には娘たちの腹は膨らみ、9日目を迎える頃にはどちらも出産した。一人は男の子を産み、もう一人は女の子を産んだ。明け方に生まれた男の子の方をイシムドは、曙(あけぼの)と名づけた。そして、夕暮れに生まれた女の子を、黄昏(たそがれ)と名づけた。そのあとイシムドは、エンキにme(メ)のスピーカーで一部始終を報告した。
「母親たちがその二人の子に乳を飲ませたら、すぐにエリドゥまで連れて来てほしい。くれぐれも内緒にな。」
「もちろんです。私はあなたの忠実な家臣、イシムドです。」
イシムドは離乳が終わった二人の子を連れて、エンキの屋敷に戻ってきた。その頃には子供はすっかり少年と少女に成長していた。さすがにアヌンナキの血を引くだけあって、ふたりの子供が成長するスピードは速かった。エンキがその子たちを嬉しそうに見ているとニンキが現れて、驚いた顔でイシムドに訊ねた。
「可愛いわね。アヌンナキの子供?」
「これはこれは、ニンキさま、いつものようにお美しい。はい。この二人は、パピルスの茂みで発見しました。草で織(お)られた籠(かご)に入れられていました。ここまで流されてきたのです。」
イシムドは、とっさのことに上手い口実をいった。
「私、その可愛い子どもたちを育てたいわ。男の子を“アダパ(捨て子)”と名づけ、女の子のを“ティ・ティ(命を宿す子)”と名づけましょう。」
ニンキは微笑みながら、エンキの手を取った。エンキも嬉しそうにした。
アダマとティアマトは、猿人の卵子とエンキらのエッセンスを含んだ精子による体外受精で生まれたが、ここでは、エンキ自身がアダマとティアマトの子孫を妊娠させることができたのである。つまり、エンキが「神」ならば、人類は祖先を辿ると、誰もが「神の子」ということになり、これが“人は神の子”と言われる所以(ゆえん)である。
そして、“パピルスの茂みの中で、葦(あし)の籠に入っている彼らを見つけた”ことが、モーゼ誕生場面の原型である。
またアダパがティティを知ったことは、アダマとティアマトが男らしさと女らしさを知ったことに重ねられている。
アダパとティ・ティの成長は、普通のルルの子供とはかなり違っていた。ニビル人のように幼少期はすぐ終わり、一旦、青年期に達すると、そこから老化することはなかった。特にティ・ティは、日毎に美しさを増し、ルルの分厚く丸い指先とは違う、細長い指ときれいに生え揃った爪を持っていた。ティ・ティは、その手先の器用さをニンキからいつも褒められた。彼女はパピルスで籠を編んだり、アヌンナキの女神と同じように工芸に親しみ賢い乙女に育った。そんなティ・ティをニンキは可愛がった。
アダパの方はエンキが直接教育し、天体の観察や文字の読み書きなどを教えたりした。エンキは、教養が身についたアダパを自分の助手として育てた。エンキはイムシドを城に呼んで、彼らの成長具合を報告することにした。ちょうどそのとき、ティ・ティが薬草を入れた茶をイムシドのために運んで来て、礼儀正しくサーブした。
「なんと器用な!驚きですなあ」
「さあ、ティ・ティ、お得意の歌を披露しなさい」
「では、母上ニンキ様から教わった歌を一曲お聞かせいたしましょう」
ティ・ティは、丁寧にお辞儀してから歌って聞かせた。
「いやはや、なんとも美しい声で。殿下、驚きました!このイシムド、殿下のお計らいが今、ようやく理解できました。実に、奇跡としか申しようがありませんな」
イシムドはさらに頭を低くして、エンキの前に跪(ひざまず)いた。
「まさしく、アダパとティ・ティが“文明化したルル”なんだよ。ついに私は完成させたのだ!私自らが種をまいた傑作には違いないがね。いずれ、彼らの子孫が食物を自分たちで調達できる日が来るよ。もうすぐニビルから家畜のサンプルも届くので、地球に適した羊を育て、羊毛を取ったり、乳を搾ることもできる。これからが本格的な人類の実験だよ。彼らには、我々アヌンナキと同じ知性が備わっている。やがてこの地球は、文明化したルルで溢れかえるんだ!」
イシムドは、深々と頷(ひざまず)いた。
「さすがですね。まさに、アヌンナキとそっくりな種を創造なさいました!」
「イシムド、それにしても、あの秘密はしっかりと守っておくれ!あと、エンリルに一度見学に来るように誘ってくれないか」
「かしこまりました」
イシムドは一礼して退散すると、その足でエンリルの所にシェムを飛ばした。彼はエンリルに会うと、早速、アダパとティ・ティのことや文明化したルルについてを興奮しながら聞かせた。エンリルは話を黙って聞いていたが、その内容には疑心暗鬼だった。
エンリルは顎に手を添えて少しの間考えたあと、イシムドに質問した。
「そんなことはありえない!突然変異でも起きたというのか?ルルから新種が誕生する確率はゼロに等しいんだよ」
「エンリルさま、その新種は学習能力に優れていて、農業もできれば牧羊や工芸もできます。殿下、姿形も我々と変わらないのです。これは、宇宙の創造主(ぬし)であるクリエーターの成せる技としかいいようがございません」
イシムドはうまく切り抜けようとしたが、エンリルは決して信用しようとはしなかった。
「どちらにしてもこの件は、まだ誰にも言わないでおくれ、イシムド。アヌには私から直接知らせておく。兄にその旨を伝えてくれ」
エンリルはそう言うと高官イシムドを帰した。エンリルからこの知らせを受けたアヌは大喜びした。
「前代未聞だ!地球のアヌンナキと労働者を飢餓から救う手が見つかったか!アダマからこんなに早く新種が登場するとは、まさに奇跡だ!」
アヌは側にいた家臣の高官イラブラトに興奮して言った。アヌは祝いにと穀物用の種子を数種類と、ニビルでしか存在しない四足の毛のふさふさした動物のつがいを地球に送ることにした。その動物こそ、その後、羊の原型となる動物だった。
ニビルから与えられた小麦などの植物、羊などの動物が地球でも生育することが可能だった理由は、地球誕生がニビルから生じた衛星“邪悪な風”と“北の風”がティアマトに衝突することより生じたことに理由がある。つまり、太古の大惨事により、ニビルから“生物の種(たね)”が地球にばら蒔かれ、それが理由でニビルと地球の生物種が類似していたからだった。
「ところでイラブラト、アダパとティ・ティに繁殖能力があるかを確かめて欲しい」
まさに、ちょうどその頃、エリドゥではルルのアダパとティ・ティが成熟期を迎えて互いに好意を抱き、ティ・ティが妊娠して、あっという間に、双子の男の子を産んだところだった。この繁殖可能のニュースにアヌははしゃいで喜び、すぐにも文明化したルルたちに会いたくなり、イラブラトに頼み込んだ。
「アダパを、至急ニビルに連れてきてくれないか!」