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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

3月25日・スタイネムの救済

2017-03-25 | 歴史と人生
3月25日は、テニスプレイヤー清水善造が生まれた日(1891年)だが、米国のフェミニスト、グロリア・スタイネムの誕生日でもある。

グロリア・スタイネムは、1934年、米国オハイオ州のトレドで生まれた。骨董品のセールスマンだった父親は、ドイツ、ポーランドから米国にやってきたユダヤ人移民の息子だった。グロリアの母親は、ドイツ、スコットランド系である。
スタイネムが3歳のとき、母親が深刻な神経症にかかった。そして、10歳のとき、両親が離婚。父親は西海岸へ行ってしまい、残されたスタイネムさんは、それから17歳のころまで、幻覚症状におびえる母親をほとんどひとりで面倒をみた。このときの経験が彼女に、社会の不公正さを教えた。
大学を出た後、チェスター・ボウルズ・アジアン・フェローの資格を得て、インドに2年間滞在した。
帰国後は、政府系機関などで働いた後、ジャーナリズムの世界に飛び込み、28歳のころ「エスクワイア」誌で書いた記事を皮切りに、フリーのライターとして活躍。
29歳のとき、プレイボーイクラブにバニーガールとして入り込み、みずからバニーの衣裳を身につけて働き、その内部事情を暴露した「プレイボーイクラブ潜入記」を発表。一躍、世界的に有名なジャーナリストとなった。
「コスモポリタン」にジョン・レノンへのインタビューを載せ、「ニューヨーク」誌上で活躍した後、1969年、35歳のとき、「ニューヨーク・マガジン」誌の企画で、妊娠中絶について語る会を開催。彼女自身、22歳のとき中絶手術を受けたことがあることを告白した。これは、当時、米国で一般に否定的に扱われていた人工中絶手術を、もっと開かれたものとし、子どもを生む、産まないの選択権を女性に与え、女性を自由にしようとする議論で、大論争を巻き起こした。
38歳になるすこし前に「ミズ」創刊。男性は未婚でも既婚でも「ミスター(Mr.)」なのに、女性だけが未婚は「ミス(Miss)」、既婚は「ミセス(Mrs.)」と変わるのはおかしいと、新たに「ミズ(Ms.)」を掲げ、一般に定着させた。
スタイネムは、避妊や出産、性教育、衛生指導、平等な労働条件、女性が生き方を選ぶ権利などについて積極的に発言し、米国をはじめ全世界の人々の意識を変えていった。
52歳のとき、乳ガンの診断を受けた彼女は、治療のかたわら、なお活動を続け、58歳のとき、若者の衛生教育や性教育の普及を支援するNPOを設立した。
2000年、66歳のとき、7歳年下の実業家の男性と結婚し、「あのスタイネムが結婚」と世界的に話題になった。その3年後、夫と死別した。

スタイネムは、映画女優マリリン・モンローの伝記を書いている。
「彼女の伝記作家の大半は、彼女が独学しようとする努力をけなすか、もしくはばかにしてきた。たとえばノーマン・メイラーの言葉によると、『教養がない(美しい金髪に共通するこの悩み)うえに、彼女にはまったく文化というものもなかった……』」(道下匡子訳『マリリン』草思社)
スタイネムのおかげで、マリリン・モンローの魂もようやく救われた。
(2017年3月25日)


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