1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

4月9日・ボードレールの真実

2017-04-09 | 文学
4月9日は、映画俳優ジャン=ポール・ベルモンドが生まれた日(1933年)だが、詩人ボードレールの誕生日でもある。

シャルル・ボードレールは、1821年、仏国パリで生まれた。父親は司祭で、シャルルの誕生したとき、すでに62歳だったという。母親は28歳だった。
シャルルが5歳のとき、父親が没した。
母親は、シャルルが7歳のときに、軍人と再婚し、リヨンへ引っ越していった。
ボードレールは、放蕩好きの不良少年となり、中学を退学処分となった。女優と同棲をはじめ、亡き父親から相続した遺産を景気よくつかう生活をはじめた。この浪費ぶりをとがめられ、彼は23歳のとき、準禁治産者と認定された。
以後は、それまでのような放蕩の生活を送ることがむずかしくなり、彼は詩や評論を書き、政治運動に身を投じ、みずから新聞を発行して政論陣を張った。
36歳のとき、詩集『悪の華』を出版。この詩集は、風紀上問題ありとして、6編の詩の削除が命ぜられ、罰金刑をも課せられた。
窮乏した生活のなか、39歳のとき、アヘン体験をつづった『人工楽園』出版。
43歳のとき、エドガー・アラン・ポーの『ユーレカ』の翻訳を出版。その後も、ポーの短編小説を仏訳したり、散文詩を書いたりしていたが、しだいに梅毒によりからだをむしばまれだした。
45歳のとき、ベルギーのナミュールの寺院を見物中、卒倒。駆けつけた母親に伴われて、仏国パリにもどり入院。
その翌年、1867年8月、パリにて没。46歳だった。没後、散文詩集『パリの憂鬱』が出版された。

ボードレールを好きなのは、彼が身をもって知った「真実」を言ってくれるところである。たとえば、没後に発表された散文詩集『パリの憂鬱』中の詩「酔え」はこうはじまる。

「常に酔っていなければならぬ。すべてはそこにある。これこそ唯一無二の問題である。君の肩をめりこませ、地上へと身を傾がせるかの「時間」の怖るべき重荷を感じないためには、休みなく酔っていなければならぬ。
 しかし何によって? 酒であろうと、詩であろうと、徳であろうと、それは君にまかせる。ただひたすらに酔いたまえ。」(福永武彦訳『パリの憂鬱』岩波文庫)

これは、人生の、ほとんど唯一と言っていい真実ではないか?
芥川龍之介は『或阿呆の一生』の冒頭で言っている。
「人生は一行のボオドレエルにも若(し)かない」(『芥川龍之介全集 第8巻』岩波書店)
そうだろうか? そうかもしれない。
(2017年4月9日)


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