噛みつき評論 ブログ版

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信頼と不信頼のランキング

2019-01-27 22:42:03 | マスメディア
 1月21日、日本経済新聞は世論調査の結果を発表した。その結果がとても興味深いものであったのでご紹介したい。以下、概要を引用する。調査は郵送による。

『8つの機関や団体、公職を挙げてそれぞれの信頼度を尋ねたところ「信頼できる」が最も高かったのは自衛隊で60%に上った。5割を超えたのは自衛隊のみで、次いで信頼度が高かったのは裁判所(47%)、警察(43%)、検察(39%)、教師(32%)の順で、司法・捜査当局への信頼が高かった。これらはいずれも「信頼できる」が「信頼できない」を上回った。

特に自衛隊についてはいずれの世代も信頼度が6割前後と高く「信頼できない」は7%にとどまった。平成は災害が相次いだ。過酷な現場で被災者を救出したり、避難所の支援をしたりする姿などが繰り返し伝えられ、高く評価されているとみられる。

逆に「信頼できない」が多かったのは国会議員で唯一5割を超えて56%だった。マスコミ(42%)、国家公務員(31%)が続いた。いずれも20歳代以上で「信頼できない」が「信頼できる」を上回っていた。国家公務員とマスコミは「どちらともいえない」が共に4割強だったが、国会議員は32%だった。

マスコミは「信頼できない」と答えた人の割合は70歳以上が20%台だったが、60歳代が34%、50歳代が41%、40歳代が47%で、30歳代では58%と5割を超えていた。18~20歳代は60%と最も多く、若い世代ほど「信頼できない」と答える人が多かった』

 以上が引用であるがランキングをまとめると以下のようになる。

 [信頼できる-(Best)]      [信頼できない-(Worst)]
1位  自衛隊 60%      1位  国会議員  56%
2位  裁判所 47%      2位  マスコミ  42%
3位  警察  43%      3位  国家公務員 31%
4位  検察  39%      4位  警察    19%
5位  教師  32%      5位  教師    18%

 自衛隊に対する信頼がここまで高いのは少し意外である。日常的なメディアによる冷遇があまり効果を示していないのだろうか。逆に裁判所や警察、検察、教師の信頼度がこんなに低いことに驚く。これほど信頼されていなければ社会は成り立たないと思わせるレベルである。恐らく警察や検察、教師などが不祥事を起こすたびに大々的な報道に対する感情的な反応を反映したものだろう。

 信頼できないの第一位、国会議員も同様の理由であると思う。選挙で選んだ人間を最も信頼できないというのは理解しかねる。投票権を持つ自分たちの無能を認めているようなものである。

 この調査で最も注目したいのは「信頼できない」第二位のマスコミである。日経のコメントにもあるが年代別の不信度に大きな差がある。70歳以上では僅か20%台であるが、30歳代では58%、18~20歳代は60%となって、なぜこれほどの差があるのか、興味がある問題である。理由のひとつはネットに接触する機会があるかないかが大きい理由ではないか。ネットを使わない人は情報弱者といってもいいが、彼らにとって情報源のほとんどがマスコミなので、マスコミを批判できない。つまり簡単にだまされるというわけだ。

 40歳以下の若い世代の約60%からマスコミは信頼されていないという結果はまことに重大である。ネットからも情報が入る環境の下ではマスコミは相対的な評価を受けることになる。それが信頼できないというのだから、その評価は信頼していい。むろん無条件ではないが、少なくともマスコミしか知らない年代層の評価よりは信頼できる。深刻かつ情けない結果である。メディアは信用があってこそ成り立つ商売であるからだ。

 日本のマスコミは販売や取材の競争はあっても、産経を除くと、互いに相手を非難するといった意味での競争を避けてきた。よく言えば協調だが、寡占によるなれあいである。報道の方針においては読者に必要な知識より自社の政治的主張を優先してきた。愚者を啓蒙するという姿勢であるがこれは読者を見下した傲慢である。朝日は啓蒙のためには嘘までついた。記事の取捨選択が行われ、記事には「角度」がつけられた。これは朝日・毎日において著しい。ネットがこれらの欺瞞を明らかにしたことが影響したのだろう。

 若者の新聞離れも進んでいる。マスコミ、とりわけ新聞は厳しい冬の時代を迎えることになるのはほぼ確実である。そして恐らく春はもうめぐってこない。反面、これは喜ばしいことだが、より自由な言論ができる環境が実現されるかもしれない。

徴兵制復活の流れ

2019-01-21 07:43:17 | マスメディア
 「日本人とユダヤ人」という本が話題になったことがある。1970年のことである。著者のイザヤ・ベンダサンは「日本人は水と安全はタダだと思っている」と書いた。イザヤ・ベンダサンとは山本七平氏のペンネームであるとされている。余談だが、このペンネームの由来は「いざや、便出さん」ではないかという見方があるそうだ。本当であればなかなか楽しいユーモアである。

 冷戦終了後、ヨーロッパの多くの国は徴兵制を廃止したが、この数年は徴兵制復活の動きが目立つようになった。2014年にはウクライナ、15年にはリトアニア、17年にはスウェーデンが徴兵制を復活した。昨年、フランスも徴兵制復活の表明をした。フランス以外はロシアに近い地域が多く、ロシアの脅威がその理由だと考えられている。徴兵制の復活は脅威の増大に対するあたりまえの対応である。しかしこれらのことはなぜか日本ではほとんど報道されていない。

 ロシアは軍事的脅威を与える国だと認識されてきたようだが、クリミア問題で再認識されたわけである。またロシアが極東では将来にわたって領土的野心を持たないとは言いきれない。まして日本の近くには領土的野心を持ち、軍事力を急速に拡大している中国や、核兵器に国力を集中させる北朝鮮がある。

 フランスの徴兵制発表に関して日本の記者がフランス国民に街頭インタビューをする場面があったが、大部分の人は賛成だと言う。そのNHKの記者はこれを意外な結果だと言った。恐らく彼の頭の中は、徴兵制などとんでもないという「日本の常識」に染まっていたのだろう。たしかに日本で徴兵制を持ち出したら政権が吹っ飛んでしまうだろう。けれど「日本の常識」は世界の常識ではない。

 「日本人は水と安全はタダだと思っている」と書いたのは50年ほど昔のことだが、当時の安全に対する日本人の無関心を指摘していたわけである。当時の国際環境は周囲に軍事的脅威となるような国はソ連以外になく、そのソ連は左翼思想のご本尊でもあったのでソ連性善説のようなものがあり、その軍事的脅威は隠されていた。また米ソの冷戦はソ連に抑制的に働いたのではないか。したがってこの時の防衛に対する無関心は仕方がなかったとも言える。

 だが現在、状況は様変わりしている。中国と北朝鮮の脅威は言うまでもないが、韓国は2018年度版の国防白書では周辺諸国との軍事交流協力について記述する際の順序が、これまの韓日、韓中、韓ロが、今回は韓中、韓日、韓ロの順に変更された。日本と「北朝鮮の核とミサイルの脅威」に対して協力するという内容も今回の国防白書では削除された。韓国は変わりつつあり、親北を進める一方、日本にとっては敵性国に近づいている。GDPは日本の3分の1以下だが防衛費は年率8%で増加し、来年には日本と肩を並べるとされる。中国も、ロシアも将来どう変わるかわからない。そして防衛力はすぐにできるものではない。

 安全保障は国の根幹をなすものであり、平和を保つ上で欠かせないものであることは世界の常識であるが、日本の常識ではない。水と安全はタダではないのである。安全保障のためには税金による費用負担と兵役などの労力提供は当然のことなのである。いつになったらフランスのように徴兵を自然に受け入れるだけのまともな認識ができるのであろうか。戦後70年間、軍備に反対してきた左翼マスコミや文化人はそれが平和を維持すると信じてきたが、逆に防衛力の弱さが戦争を招いたとして平和に対する罪人になるかもしれない。うまく洗脳されると洗脳された人間は洗脳されたことに気づかない。厄介なことである。

異文化の国

2019-01-13 22:33:53 | マスメディア
 レーダー照射事件をめぐって日韓が争っている。他人のケンカを見るのは面白いが、日本メディアの報道を見る限り、日本に非はないように見える。もし日本に非があったのなら、朝日などの韓国寄りの反日メディアが報道する筈であるが、それがないことは日本に非がないことの傍証である。朝日は慰安婦問題で嘘までついて韓国の利益を図った新聞である。

 朝日は社説でもこの問題をほとんど取り上げていない。1月11日「徴用工問題 日韓で克服する努力を」という社説を載せているが、その最後に
「自衛隊機へのレーダー照射問題も続いている。支持率が下がっている双方の政権が諸問題を政治利用していると、互いに非難する構図になっている。
 この悪循環を脱するにはどうすべきか。経済や安保など広く利害が重なる日韓関係の健全な発展のために、両国が心を落ち着かせて考える時である」と述べている。

 徴用工問題(徴用工ではなく応募工とされる)でもレーダー照射問題でも両国を全く対等に扱っている。韓国も日本も同じように責任があるという立場らしい。これは日本より韓国の主張に近い。またAERAdot.には軍事ジャーナリスト・田岡俊次氏の「哨戒機が射撃用レーダーの照射を受けたことを、防衛省が「非常に危険な行為」と発表し、ソウルの日本大使館が韓国国防省、外務省に抗議したのは騒ぎ過ぎだろう」という文を掲載している。これは韓国の主張とほぼ同じである。

 まあ朝日のことなど、どうでもよいが、要は朝日でさえも日本の非を指摘できないということである。徴用工事件では国家間の約束(条約)を守らないという点が問題になった。レーダー照射事件では韓国の弁明が二転三転し、それが矛盾するので、どれかが嘘であることが明らかになった。約束を反故にすることは約束が嘘であったわけで、両者とも結局のところ嘘の問題である。

 日本では「武士に二言はない」と言われてきたように、嘘つきは恥ずべきことされてきた。やむを得ない理由であったとしても約束を履行できなかったときは深く恥じ、平謝りに謝ったものである。我々の文化はそういうものである。それはそのまま信義に通じる。信義は最も大切なものであり、嘘と信義は決して両立しない。

 もし嘘を日常的につくならば、その人は相手にされなくなり、孤立して不利益を招くことになる。たいていの人はそれを学習する。韓国でもそのくらいのことはわかる筈である。だがそのような場合でも日本の親韓メディアは韓国の側に立ってきた。その好意的態度が韓国側の学習を妨げてきたのではないか。子供のように甘やかしてきたのである。

  北朝鮮に対する拉致問題の交も何十年もかかっているが、いまだに解決していない。また核を放棄すると言って、何度も金品を騙し取ってきた。韓国と北朝鮮は嘘の両雄なのである。共通していることは話が通じない、つまり相互理解が極めて困難なことである。このような問題は交際をする上で本来は致命的である。韓国疲れという言葉があるが、そろそろ韓国という国の文化を改めて認識する時ではないだろうか。

健康保険を食いものにする調剤薬局

2019-01-06 23:00:30 | マスメディア
 先日、医院が発行した処方箋を調剤薬局に持参し、薬を購入した。驚いたのはその明細書である。薬の代価はたったの280円だが、合計は2000円となっている(実際の支払額はこの30%、残りは保険からである)。内訳は内服薬調剤料が780円、調剤基本料410円、薬剤服用歴管理指導料(6月内・手帳なし)530円となっている。薬の仕入れは200円強であろうから、9倍ほどで販売していることになる。なるほど「薬九層倍」の伝統はいまだ健在であるようだ。

 調剤といっても粉や液体の薬を定量したり混ぜたりするわけではない。PTPシートに包装されたものを必要数そろえるだけである。薬剤服用歴管理指導料なんてものもあるが、一部の人向けのサービスであろう。普通は用法・用量を書いて渡すだけで足りる。調剤薬局で受けるサービスとその対価がどう見ても釣り合っていないと思うのである。厚生労働省の資料 診療報酬(調剤技術料)の3ページに院内処方と院外処方の比較が載っている。これによると診療報酬の例として院内処方320円、院外処方3450円とある。院外は3130円高いとしながらも、この例では7種類の薬が投与されたと想定し、院外の方が安い後発薬の使用率が高いとして薬剤費が7280円安くなるとしている。つまり医薬分業は正しいと結論しているわけである。

 ずいぶん苦しい言い訳である。後発薬による費用減を強調するために7種類もの投与を前提にしている。薬の種類が少なければ節減は少なくなり、調剤技術料のウエートは大きくなる。また院内処方での後発薬使用率を薬局並みの67%程度まで上げれば済むことである。その方法はあるだろう。医薬分業の意味は医師が儲けるために必要のない薬まで投与するのを防ぐのが大きな理由であった。しかしそんな医師は一部であろうし、やろうと思えば検査の拡大で収入を得ることもできる。また今は薬価と仕入れ価格の差(薬価差益)も以前よりずっと小さいとされる。

 
患者は医院に行き、薬局に行くという不便さに加えて、余分な費用を払うことになる。この問題を解説している医院のウェブページ「調剤報酬の比較について」にわかりやすく解説されている。調剤薬局も「かかりつけ薬局」と「院外調剤薬局(門前薬局)」との2種類があることを知った。調剤費も差があり、かかりつけ薬局の方が高い。複雑な仕組みだが、元々の制度に難点があるとそれを修正するために複雑化する傾向がある。

 2010年代後半で調剤薬局は約57,000軒、これはコンビニエンスストアの約54,400軒を超えるそうである。これだけの店舗を患者と健康保険が支えているのである。近年の調剤薬局の年間売り上げ額は約7兆4千億円、大雑把だがこの25%程度が調剤費らしいので、調剤費の合計は2兆円弱となる。巨額である(ちょっと調べただけなので正確な数値ではない)。患者の負担と健康保険負担は大きいが、それに対する利益が釣り合っていないと思う。

 実に残念なことであるが、この事実はほとんどメディアでは報じられない。また野党が問題にすることもない。このような問題を取り上げ、解決法を提案することこそ野党とメディアの役割であろう。野党はモリカケ問題で1年以上もの間、国会の機能を浪費したが、反省や謝罪はない。謝罪しないのは近隣のどこかの国と同じだが。