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表現の自由の副作用

2021-09-19 23:04:39 | マスメディア
 新型コロナワクチンの接種者数は多くの国で国民の60%程度で頭打ちになるという現象がみられる。つまり新型コロナワクチンに反対の人が相当数いらっしゃるようだ。40%程度の人が反対、あるいは忌避している現状はどう説明できるのだろうか。アストラゼネカ製のワクチンが若年者に対して極まれに血栓を生じさせるということ以外、一般の新聞やテレビでワクチンが深刻な副反応を起こすことは伝えていない。恐らくネットで広まったものと思われる。

 体が磁石になる、ワクチンの中に情報を盗み出す微小な機器が入っているなどの荒唐無稽な話は中学生でも簡単に見破ることができるが、子供ができなくなるといった話は証明されてないだけに否定することは難しい。しかし将来、ガンや認知症になるのではなくなぜ子供ができなくなるのかという説明はされない。あてずっぽうだからであろう。

 流言は智者に止(とど)まる、という諺(ことわざ)がある。流言(デマ)は人から人へ、つまり愚者から愚者へと広がっていくが、智者に出会ってはじめて止まるという意味である。昔もデマや流言があったことをこの諺は示している。しかし昔は流言は口コミによっていたが、現代はネットであり、拡散能力とスピードは桁違いである。SNSなどで広がるわけだが、影響力のある有名人がその流言を肯定したりするとその影響は絶大となる。医学に無知な作家がワクチンに反対の姿勢を公にしたりすると接種率の低下に影響する。有名な歌手や作曲家が憲法改正に反対すると政党の支持率に影響を与えるのと同じである。

 問題は彼らがことの真偽を十分理解しないままに意思表示をすることにある。影響力が大きいので普通の人の流言(デマ)とは別に考えるべきである。社会に及ぼす害も大きい。そのことを考慮すれば流言(デマ)を流すことに慎重であっていただきたい。軽率であり、かつ無責任である。表現の自由は憲法で保障されているが、このような副作用のあることも事実である。

 似た話だが近藤誠医師がガンについての本を次々と出し、一部はベストセラーになった。簡単に言うとガンには本当のガンと偽のガン(彼はこれをガンもどきと呼ぶ)とがあり、本当のガンは治らない。治ったガンはガンもどきであっただけのことである、という。そしてガンとガンもどきは区別ができないのだという。このことからガンになっても治療の必要がない。本物なら治療しても必ず死ぬし、ガンもどきなら治療の必要がない、という極論を述べる。実例はひとりしか知らないが、彼の本を信じて、治療をせずに命を落とした人は少なくないと思う。成人版の有害図書があれば是非とも指定してもらいたい。

 たいていのことには副作用がある。表現の自由に守られるこの流言(デマ)は命まで奪う。影響力のない人が何を言っても支障はないが、影響力のある人が流言(デマ)を発すると、ワクチン接種を妨げ新型コロナの蔓延を助長したりして有害である。けれどこれは「自由」なのである。

 健康食品などに誇大と思われる表現があると、消費者庁はその根拠について質問するようである。それに的確に答えられなかったら、その表現を使えないようにされるらしい。これと同様に、流言(デマ)を流す有名人には公的な機関がその根拠について質問し、的確な答えがなければ、その回答などを発表するようにすれば、無責任な発言も少しは減るだろうと思う。信教の自由も重要なことだが、それがオウムの温床になり、イスラム過激派を育てたことも事実である。自由権は重要だが何にも優先するというほどではない。