噛みつき評論 ブログ版

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戦力としてのモラル

2023-04-10 21:21:43 | マスメディア
 ロシアはウクライナへの侵攻後、ブチャなどで多数の民間人に対して拷問、略奪、強姦、殺戮、さらに子供の拉致を行ったとされる。このことが世界に知れわたるとウクライナに同情が集まり、ロシアの残虐行為には強い批判が起きた。結果として、ロシアの蛮行は世界により多くの敵を作り出したわけで、それはロシアの戦力が低下したのと同じ意味を持つ。この蛮行は愚行でもある。

 かつて日本は真珠湾を奇襲攻撃した。直前に宣戦布告をする予定であったらしいが時間が遅れ、結果として卑怯な不意打ちと受け取られた。それが何をもたらしたか。アメリカ国民の戦意を一気に高め、日本が開戦当時意図していた、途中での講和交渉の道を遠ざけてしまった。奇襲攻撃の戦略上の利点を上回る失点であったとも言える。

 民主主義国では国民の意識が政府の動向に反映される。ロシアの蛮行が明らかになったとき、こんな野蛮な国に支配されることになってはかなわないという意識が周辺の国に広がった。ポーランドやバルト三国、フィンランドなどの周辺国のロシアに対する強硬な態度には納得がいく。

 それにしてもロシアはなぜ戦略上、不利となることが明らかな蛮行を繰り返すのだろうか。それは彼らが自分たちの行為を蛮行だとは認識していないからではないだろうか。戦争にはつきものの普通の行為だと思っているのではないか。1945年8月、突然日本に攻め込んで満州や千島で残虐行為をしたソ連から変わっていないのではないか。困ったことだが、彼らの伝統的な文化とも言える。

 西欧諸国でも百年前は残虐なことが許される社会であった。だが現代はかなり違う。アニマルウェルフェア(動物福祉)までが叫ばれ、福祉は動物の世界にまで拡大した。残虐な行為に対する拒否感はとても強くなっている。今はそのような文化なのである。だが悲しいことに、犬や猫を食べる国が存在するのもまた現実である。

 モラルという観点から言えば、ロシアがウクライナに侵攻したこと自体、重大な反モラル行為である。他の国の領土、生命、財産などを力づくで奪うのだからとても許せるものではない。こんなことを許せば世界の秩序は崩壊するだろう。暴力団が警察に勝利して、好き勝手するようなものである。悲しいことに、力づくで他国に侵攻しようとする意図は中国や北朝鮮にも見られる。ロシアと同様、我々とは別の文化圏なのである。

 世界は民主主義体制の国と独裁体制の国に分かれるとされる。独裁体制のロシア、中国、北朝鮮などの国は政治体制が異なるだけでなく、文化も異なると言ってもよい。エイリアンみたいなものである。少なくとも我々と共通のモラルと文化をもつ国ではない。平和憲法を持つ国には攻め込まない、とは決して考えない。攻めるかどうかの判断は勝てるかどうか、利益になるかだけにかかっている。平和を守るのには抑止力が最も重要である。しかし、防衛力拡大に反対するなど、こんな簡単なことが理解できない人が大勢いるのは残念なことである。少なくとも我々の文化圏ではモラルは戦力としての意味を持つし、そうあってほしいものである。