電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮城谷昌光『呉越春秋~湖底の城(2)』を読む

2013年12月15日 06時01分27秒 | -宮城谷昌光
講談社刊の単行本で、宮城谷昌光著『呉越春秋~湖底の城』の第二巻を読みました。今のところは、楚の高官である伍奢の次男、好漢・伍子胥の物語です。
兄の伍尚が邑主として政治を行っている棠で、伍子胥は永翁を襲撃しようとした海賊の手先を捕えます。しかし、彼らも根っからの悪人ではなさそうだし、その特殊技能を惜しんだ兄・伍尚は彼らを釈放します。単に恩義がある人の頼みを承知しただけのことだとして、恨みを残さない、情のある解決です。
棠の邑主としての伍尚の貢献はまだあります。呉王の大船団が川を遡行し楚を攻めてきた規模・陣容等をいち早く楚王に報せます。楚も大船団を組織して迎え撃ちますが、引き分けの形で呉軍は撤退します。そんな貢献も、愚かな楚王と悪臣の費無極には何の効果もなく、太子の婚姻のために向かったはずの費無極は、秦の公女を太子ではなく楚王の妃にしてしまいます。息子の嫁を横取りするとは、ヴェルディの歌劇「ドン・カルロ」以来のスキャンダルです(^o^)/
愚王と悪臣の企みはこれで終わらず、太子を辺境に追いやり、傅の伍奢も同行させただけでなく、太子に誅殺の使者を差し向けます。ところがこの使者がなかなかの武人で、あらかじめ自分の用件を太子に報せたため、太子建は国外に亡命、費無極は伍奢を人質に二人の息子も殺すことを企てます。父親を人質に取られた伍尚は、弟まで死ぬ必要はないと、自分だけが都にのぼります。良主を見送る棠邑の民の嘆きは、兄・伍尚の名誉ではあっても、弟を慰めるものとはなりません。伍子胥は、少数の配下を連れて、父と兄を奪還すべく王宮に侵入します。そしてその結末は……というのが本巻のあらすじです。

とにかく息をつかせぬおもしろさです。悪役は悪役らしく、善玉は力強く頭が切れるけれど、残念ながら権力はない。そんな想定は、冒険活劇にはお約束のものです。第三巻が楽しみです。


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