電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

映画「おくりびと」を観る

2009年02月03日 06時33分43秒 | 映画TVドラマ
ついにオスカーの候補作にもなった、映画「おくりびと」を観て来ました。秋に上映が始まったときは、老父の葬儀の直後でもあり、とても観る気分にはなりませんでしたが、最近いろいろと話題にのぼるたびに、内心残念に思っておりました。そんな気配を察したのか、妻が東根市の「たんとくるセンター」での上映チケットを入手してくれましたので、先週末の午前の部に、二人で行ってきました。



全席完売だそうで、すごい人出です。なんでも、同市内の老人クラブでも多数参加しているのだそうで、テーマがテーマだけに、大丈夫なのかい?と心配しました。でも、それはまったくの杞憂でした。ほどよい笑いあり、ちょいと切ないエピソードありで、納棺師というなじみのない職業を通じて、人の世の生と死を見つめます。しかも、抽象的な生と死でなくて、どちらかというとこの世に残された側にシフトした見方です。
NKエージェントの女事務員を演ずる余貴美子さんが、棺桶を前にしてのセリフ「人生最後の買物は、自分では決められないのよね~」。いやいや、今は全部自分で決めて、覚悟の上で旅立つ人もいるのですよ。しかしこの女優さん、いい味出してますね~。巷で一時話題となった、ヒロスエさんが出てくる映画を、始めて見ました。なんだか蒸留水みたいな人ですね~。

美しい庄内の自然の中にあって、スナック「和」の内装は不思議なレトロ感たっぷりです。三角形のテーブルも、レトロでモダン。昔の西洋館ふうのNKエージェントの建物も、ローカルでありながら地元の伝統の中ではやや異質な存在として受け入れられていることを象徴しているようです。涙もたくさん流れましたが、後味の良いものでした。

そういえば、昔は葬儀屋さんというのは、町にしかないものと思っておりました。家族の誰かが亡くなれば、地域の長老や和尚さんの指示のもとに、その家の主や嫁さんが、死者の体を浄め、死装束を整えたものでした。死後硬直の起こる前に、下顎骨が下がらないように包帯や手ぬぐいで顎をしばっておくことなども、青年期に何度か目にして覚えました。いつのまにか、家族が死に向き合う機会が後退しているのは、悲嘆にくれる家族を支える近隣の地域社会の弱まりによるものでしょうし、その原因は、交替制勤務や長時間労働の会社勤めの人が増加したことによるものでしょう。隣人の死を悼むいとまもない、チャップリンの「モダンタイムス」のような世の中には、なってほしくないものです。

そういえば、第九の演奏シーンは、山響でした。チェロの茂木さんは何度も出ていましたし、ヴァイオリンの中島さんも、はっきりとわかりました。飯森さんにいたっては、主演男優級のどアップ。もし、「おくりびと」がオスカーを取ったら、山響の皆さんも、オスカー受賞俳優の仲間入りをするのでせうか(^o^)/
ピツィカートでお腹の子どもに聴かせた「ブラームスの子守歌」も良かったが、全編に流れる久石譲のチェロの音楽が素敵でした。
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