古代より中国では、龍は霖旱を支配する神と考えられてきた。『霖』は長雨、『旱』は日照りのこと。龍は、「春分に天に昇り、秋分に淵に潜む」と。そして、東山 魁夷(ひがしやま かいい)は風景画の分野で昭和を代表する日本画家の一人、その中から句に切り取ったのは、山口県の青海島の瀬叢 (せむら) と呼ばれる岩礁をモチーフにしたとされる《満ち来る潮(岩にしぶきを上げる波の動き)》と《朝明けの潮(穏やかなゆったりした波の動き)》ではないだろうか。竜という水の神は一年の糧である稲が十分に育ち、収穫が間もなく終わる頃、淵に沈んで来春を待つ。作者の連想の独自性にいつも魅かれる。(博子)