「童は見たり野中のバラ」の歌詞で有名なシューベルトの「野ばら」。だれもが小中学生の頃に歌った想い出がある曲です。「童は見たり 野中のばら 清らに咲ける その色愛でつ あかず眺むる 紅におう 野中のばら」というゲーテの詩に曲をつけたものですが、この野バラとは日本でいえばノイバラになるわけです。
西洋の数々の新種のバラを作り出すためにこの日本のノイバラが使われたそうですが、里山ではなかなかに厄介なしろものなんです。日当たりのいい山地の林の縁に繁茂すると、森の中に入って行けなくなってしまうばかりか、林下の風通しが悪くなってしまうのです。また、植林地では半ツル性のため木にからみついて成長を妨げたり、手入れを困難にしてしまいます。
ということで、除伐の対象になってしまうわけです。美しい花を咲かせるヤマフジや、美味しい実がなるミツバアケビなども同様です。といってもノイバラは、挿し木で簡単に増えるほど繁殖力が旺盛なので、切り株を残しておくとどんどん増えてしまいます。
今回も妻女山で除伐をしたわけですが、脚がバラの刺で傷だらけになってしまいました。あげくに一番大きな株は、鉈鎌の柄が折れてしまい、且つあまりの株の大きさと蜂の巣で、除伐は冬に持ち越すことにしました。幸い蜂には刺されずに済みましたが、本当に厄介です。今日もオスズメバチの威嚇を受けました。これからの季節、妻女山に来られるときは、黒い服や帽子は厳禁です。
作曲 シューベルト
作詞 ゲーテ
訳詞 近藤 朔風
1.童は見たり 野中のバラ
清らに咲ける その色めでつ
あかず眺む
紅におう 野中のバラ
2.手折りてゆかん 野中のバラ
手折らば手折れ 思い出ぐさに
きみを刺さん
紅におう 野中のバラ
3.童は折りぬ 野中のバラ
手折りてあわれ 清らの色香
とわにあせぬ
紅におう 野中のバラ
一番は清らかですが、二番三番はなかなか意味深で激しい歌詞です。学生のゲーテは村の牧師の娘フリーデリーケ・ブリオンと恋に落ちるわけですが、勉学のため、または束縛を嫌ったため、結婚を望む彼女との恋愛を断ち切ってしまったといわれています。一見素朴で純粋可憐な野バラですが、刺は相当に痛いです。また、巻き付かれた木が低木の場合、葉で覆い隠して枯らしてしまうこともあります。
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