徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

健太無残/最終節 ガンバ大阪戦

2010-12-05 13:08:36 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス06~10
アウスタで最終節ガンバ戦
ゲームの入り方は悪くなかった。あまりにも悲痛というしかない西部のアクシデントが起こるまでは。

しかし何という既視感だろうか。ガンバ相手にこの展開は観た事がある。昨年11月22日のアウスタでのガンバ戦を思い出させる完敗。アクシデント絡みで早めに失点を喰らうと、ガンバは幾分引き気味になり、しかし中盤での寄せは激しく、相手のミスを誘発させてショートカウンターでゲームを支配する。
スカパーでのインタビューでも健太が言うようにチーム力の差があったとは思えないが、3点目を決めた佐々木の投入にいたるまで西野のプランに完全に乗せられてしまった。確かに素晴らしいゲームだったと思うし、ガンバにとっては素晴らしい結果だったと思う。
しかしリーグ戦のホームラストゲーム、健太の6年間を締めくくるゲームで、この完敗はあまりにも無残すぎる。

西野朗監督「選手が自分たちで立てられる最高の目標設定を、今日このゲームで出したいということで、その目標を明確に持って、今日のゲームで実践できたんじゃないかと思います。何となくという目標ではなくて、“必ず”という全員の気持ちが伝わったゲームだったと思いますし、非常にハードワークして集中した素晴らしいゲームをやったと思います」(J'sGOAL 12月4日付

西野の言う<何となくという目標>は、ゲーム前に健太が口にした「3-0で勝ってシーズン最多得点」発言への当てこすりと取れなくもない。このゲームでの西野のアクションはそれほど激しかった。そして、やはり、それほど清水は<何となくという目標>しか持ち得なかったと思わざるを得ない。
勝利によってACL出場圏を確保するという明確な目標設定を立てるガンバに対して、前節終了時点でもはや今日勝ったとしても順位を上げ、リーグ戦でのACL出場圏に喰らい付くことも叶わない清水。11月に入って敗戦処理の報道が繰り返され、6年に及んだ健太体制のリーグ戦での、ホームでのラストマッチも、プレーヤーには「目標設定」にはなり得なかったのか。外的な目標設定ではなく、自ら目標を設定し、モチベーションを上げゲームに臨むというメンタリティをこのチームはとうとう獲得できなかったのかもしれない。
本当のところはわからないが、身体は正直だよね。

まあそれはスタジアムの雰囲気にも表れていた。つまり、どこか、もう「このチームは終わってしまうのだから誰も責められない」という雰囲気。この日も珍レフリングを繰り返したレフリーの柏原には相当罵声が浴びせられたが、もはや健太やプレーヤーに野次を飛ばす人はほとんどいない。
スタジアムにいた誰もがわかっていることで、それは、このチームは間もなく終わってしまうからだ。
それでもガンバに3点目を取られて席を立つ人たちがいた。まあ、おそらくそれには何のメッセージもなくて、単に「もうゲームは決まったからとっとと帰ろう」程度の気持ちしかなかったろうけれども、闘っているチームに対して「席を立つ」という行為そのものには何らかのメッセージがある。
しかし、この日、終わっていくチームに対して「席を立つ」というメッセージはほとんど意味がない。

この後、アウスタで天皇杯準々決勝が行われるとはいえ、天皇杯予選ではクラブによるセレモニーは行われない。
公式にこのチームを見送るのはリーグ戦最終節しかないのだ。
それは、勝とうが負けようが、である。
その雰囲気は、仕方がないとはいえ温さを生む。ゲーム終了後に行われたセレモニーでの健太やプレーヤーのさばさばとした表情を見れば、それがわかる。
だから、残念だけれどもチーム力に差がなくても完敗するのだ。それは最終節で感動的な奇跡の残留を果たした神戸と前節対戦したときに見せつけられたことじゃないか。それは<何となくという目標ではなくて、“必ず”という全員の気持ち>の違いに他ならない。あのゲームは神戸にとっても、清水にとっても実に大きな分岐点になった。チームスポーツにとって目標を失うことの恐ろしさを改めて感じる。
セレモニーで健太は苦笑いしながら挨拶をしたが、ちょっと、これは無残としかいいようがない。
綺麗な富士山が見えて、冷たく澄んだ空気に花火も映える冬のアウスタは最高なんだけれども、この6年間に行われたセレモニーの中では実に微妙で、別の意味で切ない空気が流れた。
このままで本当に天皇杯は大丈夫なのか。

健太「この1週間、色々終わったあと、何を言おうかなと考えたんですが、『まだやっぱり終われない』という想いが強くてですね、何とか天皇杯、最後の気持ちを皆さんに観てもらいたいなという風に思ってます」(Sの極み 12月4日付)

確かに「6年間、楽しかった」し、「健太、ありがとう」なんだけれども、それは本当にすべてが終わってから書くことにする。このまんまじゃ終われないよな…とサポならば思うだろう。
しかしプレーヤーがどう思っているのかは、正直わからない。これから25日の天皇杯山形戦までは三週間が空く。公式の移籍情報の類は出るだろうが、プレーヤー自身の情報は極端に減っていくだろう。彼らが改めて自らのモチベーションを上げ、果たして<何となくという目標ではなくて、“必ず”という全員の気持ち>を獲得することができるのか。考えれば考えるほど絶望的な気持ちになるが、淡い期待も捨て切れない。
西部の怪我の情報もまだ公式には出ていない。まだ「終わっていない」のに、だ。
このまま不完全燃焼で終わってしまうのか、それとも元日まで完全燃焼できるのか。はっきり書くが、この期に及んで闘えないプレーヤーはもはや必要ない。クラブ公式サイト用の空虚なスローガンも必要ない。個々のプレーヤーやクラブ関係者、サポーターの、このチームに「かける想い」が問われている。
普段ゴール裏はアウエイ専だけれども、次のアウスタ天皇杯はゴール裏へ行って精一杯声を出そう。

リーグ90勝目は、第二次健太体制で実現しよう。その日がきっとやってくることを信じている。



<日本代表としても活躍した現役時代には、これほど「勝利」が遠いと感じたことはなかった。今季J1最年少監督としてようやく1勝に届いたが、その相手は同最高齢63歳のオシム監督で、年齢差は24。「リーグ戦で勝つことが、そんな簡単なものではないと先輩方が教えてくれた。プレッシャーの中で、どうやって勝つか。勝つことの難しさをあらためて思い知らされた」。勝ち気で負けず嫌いな監督が、しみじみ言った。>
<会見でオシム監督は「気持ちというのはすごく大事です」と切り出した。「清水はメンタル的に何かを成し遂げようという準備がきちんとできていた。反面、うちは全くできておらず、実力を発揮できなかった。(中略)試合後のミーティングも約30分と長引き「今日のような戦いぶりではいつか下位に低迷する」と警鐘を鳴らした」(以上日刊スポーツ 2005年4月24日付)


セレモニーの演出は非常に良くなったと思う。
しかし泣くと思ったけど、泣けなかったな。まあ、まだやっぱり「終わってない」からなんだけど。
それにしてもスタジアムのPAは何とかならないのか。

駅南で呑んで、東京帰ってから地元でもちょっと呑んだ。
ということで店長に無理強いして地元の酒場にエスパルスのポスターを貼らせてもらうことにした。静岡・清水とはまったく関係ない土地ですが。ちょっと嫌そうな顔をしていたような気もするからポストカードにしこうかなァw
(12月6日加筆・修整)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿