徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

フレッシュであり続ける不幸/ZINE『SELL FEE』

2019-04-07 14:01:43 | News

水曜日。平野太一君のZINE『SELL FEE』を購入するために下高井戸のTRASMUNDOへ行く。『SELL FEE』はすでに4店舗ほどに置かれているのだが、TRASMUNDOでは『TRASMUNDO RADIO VOL.26「SELL FEE」feat. 平野太一、ドンババ』のCDが付録として付いてくる。ショーケンが亡くなったことが報じられた深夜に収録されたということで、本当にできたてのCDなのだが、『SELL FEE』の内容そのものについてというよりも、3.11以降の社会運動、その周辺についてスタンスの有り様を語り合い、それにまつわる音楽を聴いていくという趣向である。

一年前のGalaxyでの初上映をはじめとして、これまでもTRASMUNDO DJsとして『STANDARD』の上映会にご協力いただいてきた店主の浜崎伸二さんにも改めてご挨拶し、少々話を伺う。
3.11の年、浜崎さんはデモには行かずに店を開き、迷っていたり、悩んでいるひとたちと語り合っていたのだという。もちろん、あの当時のように、居ても立っても居られずに路上に飛び出すような瞬発力や突破力は必要だが(浜崎さん自身も4年後にSEALDsが呼びかけた国会前抗議には参加している)、まずは誰かと話したいという人たちにとっての「場所」も、やはり必要だったのかもしれない。レコード屋であり、古本屋であり、Tシャツ屋でもあるTRASMUNDOは、あの当時から抗議の「場」とは違う、「場所」を支え続けてきたのだった。抗議の場は状況によって変化し続けるものだが、その一方で、下高井戸の変わらぬ場所が「新しい人たち」を生み、路上での行動をつなぎ続けてきたのだ。そういう意味で「カルチャーが支えてきた」と浜崎さんが誇らしく言うのも腑に落ちる。

そして、平野君の『SELL FEE』。映画『STANDARD』の制作過程などの一部分はすでにweb上で公開されているものだが、書き加えられた言葉と内容はかなり衝撃的だ。作為のなさが嘘のなさに通じるのかはわからないが、少なくとも彼の言葉には借り物の言葉がない。偽るための言葉もなければ、彩るためだけの言葉もない。剥き出しの言葉である。
彼の言葉の印象ははじめて路上で出会ったときから、エモーショナルで喚起力のある天才的なコーラーだったのだが、極私的な内容と表現からその印象が蘇ってくるようだった。

映画の撮影の過程で福島と沖縄を訪れる中で、あのとき、あの場所で置き去りのままになる自分、そしてそれでも生きていかなければならないと前へ進む自分を見つける。
映画『STANDARD』が8年前のことを描きながら、まだまったく古びずに、フレッシュさを保ち続けているのは、自分たちはあの日のままに置き去りとなり(3.11? 2011年6月? 2012年12月? 2013年9月? 2013年12月? 2015年9月? どれも最悪だ!)、それでも生きていかなければならない、引き裂かれた状況が続いているからなのだろう。
それが作品にとって幸福なことなのか、不幸なことなのはまだわからない。

今週は東京・代官山、来月は名古屋で上映会が開かれます。実は昨年末から公開されている新バージョン(おそらくこれにて完全版)はまだ観ていないのでオレも行く予定です。

■ZINE『SELL FEE』販売店舗
【下高井戸】TRASMUNDO
【吉祥寺】uplink吉祥寺
【新宿】ブックカフェ オカマルト
【目白】ポポタム
※在庫切れなどの可能性もあり。

■『STANDARD』上映情報

【東京】
代官山 春のドキュメンタリー映画上映会
4月12日(金)
会場:晴れたら空に豆まいて
開場: 18:00 上映: 19:45
予約: 1800円(+1D) 当日: 2000円(+1D)
DJ:DJ HOLIDAY、TRASMUNDO DJs、宮田信
予約03-5456-8880
※都市辺境、洋楽インディーズ、社会運動…『STANDARD』と併せて3つのドキュメンタリー映画が上映されます。

【名古屋】
TwitNoNukes presents 映画『STANDARD』上映会
5月18日(土)
会場: spazio_rita (名古屋市中区・矢場町駅)
開場:17:30 上映:18:30(予定)
※上映+トークショー+DJを予定。詳細は後日発表されます。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿