徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

そして僕らは大人になる/「いびつな絆 関東連合の真実」

2014-02-01 22:12:17 | Books

工藤明男「いびつな絆 関東連合の真実」(宝島SUGOI文庫)

昨年のハードカバー刊行後の反響と著者に対する関東連合見立派の殺人予告、そしていまだ海外逃亡を続ける見立容疑者を残し、刊行後に行われた「六本木クラブ襲撃事件」裁判の模様を大幅加筆した文庫版。ということで400ページ超ながら、一気の読ませるのは、その話題性もさることながら、どの程度編集部が手を入れているのか、ゴーストがいるのかわからないけれども、文章と構成のテンポの良さにある。また「六本木クラブ襲撃事件」で不幸にも人違いで撲殺されてしまった被害者の描写(検視した解剖医の証人尋問など)は生々しく残虐なものだけれども、基本的にこの暴力集団の残虐描写は本書ではメインテーマとはされていない。まるでそんなスキャンダリズムは必要ないと言わんばかりに、著者は本書から“武勇伝”をさらっと排除してしまう。まあ、本書は武勇伝ではなく、あくまでもギャングスタとしての関東連合の成立と、その告発なのだから、それはそれで当然なのだろう。

ということで、本書で強調されるのは不良少年特有の強烈なタテ社会と世代論である。
出身中学や学年の違いや、先輩後輩の関係は不良少年にとっては実に大事なファクターではあるのだけれども、昭和53年(52年)生まれから昭和58年生まれまでの6世代しか(新)関東連合として認めないというスタンスは、持続する集団としてはかなり異様ではある。
“6世代”の中では年長者のカリスマで、実質的なリーダーであった見立容疑者は「俺たちは横並びの組織で、それぞれが独立した組を持っているようなもの」と言っていたという。“卒業”や“引退”をしなかった彼らは、カリスマの強烈な存在を認めながら、そんな曖昧な関係を結び、グループを維持しながら社会に関わっていく。
少年、青年時代ならば、それはそれで強烈な仲間意識や帰属意識、そしてカリスマの隠然たる力を育むだろう。たとえそれが石元太一被告が自身の著書で書いたように「同調圧力」であったとしても。
しかし、誰だって大人になる。一般社会だけではなく、裏社会であっても、勿論彼らは大人になることを求められる。同世代に限られた不良少年たちの閉じた関係は、当然いびつなものに変質していく。

唐突に競馬の話だが、人生はオープン戦である。
2歳、3歳ならば、ただひたすら同世代の中でダービーやオークスを争えばいいのである。しかし4歳以上はオープン戦だ。百戦錬磨の古馬と渡り合って行かなければならない。
人間だって高校、もしくは大学を卒業してしまったら百戦錬磨の“大人”と闘わなければならない。子どもたちが馬鹿にするような駄目な大人がたくさんいる代わりに、若さの勢いだけではちょっとやそっとでは勝てない、物凄い大人も本当にたくさんいるのだ。
条件戦で戦える時間は、そう長くない。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿