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重力波から分かるブラックホールが衝突するまでのプロセス

2016年07月10日 | 宇宙 space
はるか昔に起こった2つのブラックホールの衝突。

この時の衝撃が、時空のさざ波“重力波”として直接検出されたというニュースが、
先日、大きな話題になりました。

これを例えていうと、
「古生物学者が誰も見たことのない新種の化石を手にした」ようなものでした。

衝突した太古のブラックホールは、
生前にどのような姿をしていたのでしょうか?

今、その化石を手がかりに、
モデルを使ったシミュレーションによって、
ブラックホールの生前の姿を再現しようとする研究が進められているんですねー
O型星の連星の一方が他方から物質を吸い上げる様子(イメージ図)。
O型星は宇宙で最も高温で明るいタイプの恒星。
“LIGO”が初めて検出した重力波も、こうした巨大な連星がそれぞれブラックホールになり、
さらに合体することで発生した可能性がある。


連星が存在した証拠

合体した2つのブラックホールは、
もともとはお互いの周りを軌道運動する2つの巨大恒星でした。

質量はそれぞれ太陽の96倍と60倍で、
ビッグバンから約20億年後に形成されたようです。

その後、2つの恒星は別々の時期に死に、
ともにブラックホールになって軌道運動を続けるのですが、
やがて渦を巻くように接近し、衝突して合体することになります。

ブラックホール同士の衝突は巨大な衝撃波を引き起こし、
それが時空のゆがみとなって波のように宇宙空間を伝わり、
ついに2015年9月14日に地球を通過。

アメリカにある“LIGO(レーザー干渉計重力波天文台)”が検出した重力波は、
かつて、この連星が存在し、死んでいったことの唯一の証拠になります。


ブラックホールの衝突は頻繁に起こっている

今回のシミュレーションでは、
見つかった重力波の成り立ちを明らかにするだけではありません。

ブラックホール同士の合体が原因で発生する重力波が、
「中性子星同士の衝突」や「ブラックホールと中性子星の衝突」などが原因で発生する重力波に比べて、頻繁に発生することを示しているんですねー

つまり、今後検出される重力波の多くが、このタイプのものになるということです。

ブラックホール同士が合体する頻度についての今回の見積もりが正しければ、
2020年に“LIGO”の改良が終わって感度が向上した際には、
年間1000件のブラックホールの合体が検出されるようです。

そうなれば重力波天文台は、
太古のあらゆる種類のブラックホールを研究できることになります。

古生物学者が恐竜の化石から、その生前の姿や行動を知ることができるように、
天文学者も恒星が残した重力波から、その進化について知ることができるようになる、
重力波考古学のようなものが実現するのかもしれません。


連星は特殊な領域にあった

先日検出された重力波は、
異例の大きさのブラックホール同士の合体によるものでした。

今回発表されたモデルは、その理由を説明するのにも役立っています。

このモデルでは、ブラックホールの前身の2つの恒星は、
やや特殊な領域にあったことになります。

そこは、恒星の材料になる水素とヘリウムのみからなる、
重元素に汚染されていない巨大な雲の中。

こうした原始的な領域で生まれた恒星には、質量を失いにくいという特徴があるようです。


衝突までのプロセス

2つの恒星の質量は、それぞれ太陽の96倍と60倍もあり、
質量が大きい恒星ほど年をとるのが速くなります。

このため大きい方の恒星はどんどん年をとって膨れ上がり、
その外層のガスは、若々しい小さい方の恒星の重力によって、
吸い上げられていきます。

やがて両者の質量は逆転。

大きい方の恒星はつぶれて太陽の約31倍の質量のブラックホールになり、
小さい方の恒星の周りを軌道運動しながら外層のガスを剥ぎ取り、
恒星とともにガスの雲に包みこまれていくことに。

そして、巨大なミキサーのようにこの雲をかき混ぜながら、
軌道運動をするためのエネルギーを失っていきます。

その結果、ブラックホールと小さい方の恒星の距離はどんどん小さくなり、
ついには太陽から水星までの距離になる6400万キロまで近づきます。

この頃に小さい方の恒星も死んで、
太陽の31倍以上の質量を持つ巨大ブラックホールが出来上がります。

このあと沈黙がつづき、
100億年もの間、2つのブラックホールはお互いの周りを軌道運動し、
エネルギーを放出しながら、さらに接近していきます。

そして今から約14億年前、
観測可能な宇宙のすべての恒星を合わせたよりも大量のエネルギーが放出、
そう、2つのブラックホールはついに激しく衝突しというわけです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 2例目! 重力波を直接検出、今回もブラックホール同士の合体で発生



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