中国西安で奮闘する大学教師Mの日々

日本人教員として中国の陝西省西安市の大学生・大学院生に対し、「日本文化・社会」や「卒業論文」などを教えています。

中国の档案、档案館について(走り書きメモ)

2013年03月06日 03時24分31秒 | Mの研究活動や成果
最近、自身の研究課題の調査で中国の档案館へ行く必要が出ているMです。

ちなみに档案とは、
1、中国における歴代政権の公文書。
2、各種組織、機関或いは個人が業務処理を行う際に発生し保管される記録、文書、資料。
を意味し、要するに中国の行政関係文書と理解すればいいでしょうか。
 
これまで日本近現代史を看板に研究してきた私は、中国にいながらほぼ档案館へ行く機会を持っていませんでした。
博論が片付き、新しい大きな課題に取り組む中で、こうした必要性が出てきたというわけです。

なお、中国の代表的なアーカイブとしては、
1、中国第一歴史档案館
2、中国第二歴史档案館
3、中国国家図書館

などがありますが、各地方にも档案館があり、私の暮らす上海にも档案館がいくつもあります。
その中でも現時点では、上海市档案館と同済大学档案館に行きたいと計画しています。

上海市档案館
http://www.archives.sh.cn/
同済大学档案館
http://www.tongji.edu.cn/~archives/

理由は単純ですが、上海市档案館は上海で最も大きく、所蔵档案数も最も多いことから、そこへまず行く必要性が高いこと。
同済大学は上海で最も建築学分野で著名な大学で、調査している第二次大戦以降の日中の建築界交流記録がある可能性が高いからです。
ただ、正直まだ調査不足で、他にも研究に活かせる档案を所蔵している档案館がないかと現在調査を続けています。


なお、調べていくと中国の档案館を利用するにあたり、知っておくべき情報が幾つか分かってきました。

1、まず、档案は図書館などに「文物」として所蔵されているケースもあるということです。
(これらは国家档案法の枠組みからは外れる)
※よって、档案館だけでなく、図書館の所蔵档案にも目配りが必要

2、档案館は基本的に行政機関で、改革解放後の档案を扱うのが原則であること。

3、中国において「歴史」は過去ではなく一面で現在であるので、档案館にとって歴史档案は、時に解放後の档案以上に敏感な存在となること。

4、档案館は経営面では独立行政法人的で自己収入を一定程度確保する必要があること。
このために、史料集の刊行、また利用者からの手数料徴収がおこなわれるのが通常であること。

ただ、「4」に関しては少々補足が必要です。
最近、公民に対する情報公開が主張され、上海市档案館などではいち早く市民対応型のサービスを採用しています。
ですが、こうした動きはまだ一般的ではないようです。


档案館における档案公開が徐々に進む中国にあって、これら档案を中国史研究者が利用することは既に通常化しています。
ただ、まだ中国の档案館の全体像は不明な個所が多く、全体の档案が研究に有効に活用されているという状況にはありません。
そして、1949年以後の档案を使用した「現代」中国研究は依然決して多くないというも事実で、中国の行政をめぐる研究でも同様といいます。

今後私が進めようとしている課題は、まさに1949年以後の档案を使用した「現代」中国研究であり、同時期の日中関係史です。
ですから、こうした研究を進めるうえで、档案を有効に活用していくことは不可欠であると同時に、意義があると言えます。

思いつくまま走り書きした今回の記事ですが、次回以降は少し整理し、実際に档案館を利用した後でその経験なども紹介したいと思います。