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中国の嘘と、詭弁の要素

2011-01-20 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.87 )

 日中戦争最中の1937年、重慶の国民党政府の国際宣伝処に勤務し、後に著名なジャーナリストとなった米国人セオドア・ホワイトは書いた。
「アメリカの言論界に(対して、中国政府が)嘘をつくこと、騙すこと、中国と合衆国は共に日本に対抗していくのだとアメリカに納得させるためなら、どんなことをしてもいい、それは必要なことだと考えられていた」(『「南京事件」の探究』)
 日本を貶め、日本こそ米国の敵、国際社会の敵であると国際社会に信じ込ませるためには、どんな嘘も騙しも正当化されると中国政府が考えていたと、中国の宣伝報道に携っていたホワイトは述懐したのだ。
 05年11月24日、駐日中国大使として初めて東京有楽町の外国特派員協会で会見した王毅氏の発言を聴くと、日本を貶める虚偽の宣伝、情報の歪曲は、現在に至るまで中国政府不変の政策であることがよくわかる。
 近代史上、日本は中国にも米国にも、旧ソ連にも、度々情報戦で敗れ、国益を損ねてきた。それは、決して過去のことではなく、現在も同様なのだ。満席の記者を沸かせた王大使の記者会見は、情報操作を苦手とする日本の不利と悲劇を見せつけた。
 内外の記者200名以上を前に王大使はゆっくりした日本語で、歴史問題から東シナ海の資源開発問題まで、巧みに事実関係を歪曲して紹介した。だが、驚くことに幾つもの虚偽を、日本人記者も含めて誰ひとり、追及した者はいなかったのだ。日本国は「世界中のメディア」の前で、歪曲した事実によって、またもや悪者とされたのだ。一例が靖国神社問題だ。
「中国は寛容な国家」だが、「A級戦犯」合祀の靖国神社への最高指導者の参拝は受け容れ難いとして、王大使は以下のように述べた。「中国の立場ですね、継続性のあるもので、変わっておりません。1985年、このことですね、A級戦犯が祀られていることが公になってから、我々も反対の立場を貫いてきております」
「A級戦犯合祀」が公になった85年以来、"一貫して反対" してきたと言うのだ。だが、事実は全く違う。

★外敵は「ソ連」から「日本」へ

 靖国神社への「A級戦犯」合祀が大きく新聞で報じられたのは1979年4月19日、春の例大祭直前である。例大祭に合わせて参拝した時の首相・大平正芳はその日、記者団から、執拗に参拝の是非を質問された。また、後日の6月5日には、参議院内閣委員会でも質問を受けた。これらはいずれも広く報道された。したがって、「A級戦犯合祀」が公にされたのは85年ではなく、79年4月である。
 一方、中国政府が靖国問題で日本に注文をつけたのは1985年9月7日、彭真(ほうしん)全人代常務委員長が長田裕二氏を団長とする自民党田中派の訪中団に、首相の公式参拝は日中関係に「不利なこと」だからやめた方がよいと「強く警告した」のが初めてである(『靖国公式参拝の総括』板垣正著、展転社)。
 それ以前の中国は「反対態度を貫」くどころか、「A級戦犯」合祀や首相の参拝に触れもせず、逆に日本に軍事大国になれと要求した。典型例が1980年4月末からの中曽根康弘氏の訪中だ。氏は中国人民解放軍ナンバー2の副参謀総長・伍修権(ごしゅうけん)に会った。伍は日本は軍事力を強化する必要があると強調、軍事予算をGNP比1%にとどめずに2%に倍増せよと要求した。日本人にとって思いがけないこの発言は、大きく報道された。
 さらに、その前年、つまり1979年5月16日、時事通信の田久保忠衛氏は最高実力者、小平に取材したが、は、中国の周りはすべてソ連の軍事的な脅威にさらされており、日本も中国と共に立ち上がって日中両国は軍事的に協力すべきだと述べた。これも大きく報道された。
 小平発言も伍修権発言も「A級戦犯」の靖国合祀が公にされた後である。以降も中国政府は大平、鈴木善幸、中曽根歴代三首相の参拝については、85年9月まで一言も批判しなかった。小平発言からも明らかなように、当時の中国が最も恐れたのは旧ソ連の軍事的脅威で、その脅威に備えるために、むしろ日本も軍事大国になれと促したのだ。
 ちなみに、中国は1978年締結の日中平和友好条約を機に、日本から多額のODAを受け取り始めた。中国は消極的な日本を説得して、同条約に旧ソ連を念頭に置いた反覇権条項を入れさせた。いかなる国の覇権主義にも反対との立場を打ち出すことで、事実上ソ連の覇権主義に反対の構えを作り、二重、三重にソ連の脅威に備えようとしたのだ。さらに中国は79年1月1日に米国と国交を樹立し、日米中の対ソ連合の形を整えた。そのことは、当時の中国の国益にかなっていた。
 1985年9月に靖国批判に転じたのは、中国がソ連脅威を言いたてなくとも、81年1月に就任したレーガン大統領がソ連を悪の帝国と非難し、ソ連自身、80年代前半に顕著に力を衰えさせたことが背景にある。もはやソ連を恐れなくてもよい状況になったとき、中国の外なる敵が日本になっただけの話だ。
 大使は「国と国の付き合い」では、「約束をお互いに守る必要があります」と述べた。であれば、日中両国は1972年の国交樹立時に共同声明で相互内政不干渉を誓約している。その約束を守って中国こそ即時、内政干渉をやめるべきだ。

★嘘に嘘を重ねる中国の手法

 王大使はB、C級の戦犯について「我々はいわゆるB級、C級戦犯ですね、全部釈放し、日本に帰らせたのです」と述べた。
 中国各地にB、C級戦犯として拘束され、命を奪われた日本兵は171名にのぼる。拘留中の病死者もいるが圧倒的多数は処刑された。「全部釈放し」たとは、どういう意味か。これも虚偽だ。
 大使はまた、「反日教育はありません」と言う。中国が長年、愛国主義教育に名を借りた反日教育を実施してきたことは、私も度々具体的事例を以て報じてきた。反日教育否定の大使発言も虚偽である。
 東シナ海の資源開発問題でも、日本の主張する中間線は「もうすでに交渉を通じてお互いに認め合うラインではないのです」と断言した。中間線を認めないのは中国のみで、日本ではない。「お互いに」の表現は虚偽である。また、過去30年ほどの国際司法裁判所における海洋上の境界線は、すべて中間線を基本として引かれている。中間線を基本とする解決こそ、日本だけでなく世界の常識であり、中国こそが非常識なのである。
 大使は日中は競合ではなく相互補完関係にあるとも語った。が、この夏(05年夏)、中国は日本の国連安保理常任理事国入りに断固反対し、猛烈に働きかけてアジア諸国に日本の常任理事国入りへの支持を断じて許さなかった。同じく05年12月の東アジア首脳会議では、中国が日本をおさえて覇権確立を目指して熾烈な鍔迫り合い(つばぜりあい)を演じた。靖国神社はその目的達成のための材料のひとつである。靖国問題を日本の歴史認識の "悪質さ" の象徴に仕立てあげ、これを国際問題とすることによって、アジア、ひいては国際社会での日本の地位を貶めたいのが中国だ。


 中国の嘘が列挙されています。



 ここで引用した部分に記載されている (著者の主張する) 中国の嘘と歴史的事実を整理すると、次のようになります。

  1. 靖国神社への日本の最高指導者の参拝について、「中国の立場ですね、継続性のあるもので、変わっておりません。1985年、このことですね、A級戦犯が祀られていることが公になってから、我々も反対の立場を貫いてきております」
    ★実際には「A級戦犯合祀」が公にされたのは85年ではなく、79年4月である。「A級戦犯合祀」後の首相、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘の参拝について、中国は85年9月まで一言も批判しなかった。中国は "一貫して反対" などしていない。むしろ中国は、中国と共同で旧ソ連に対抗するため、日本に軍事大国になれと要求していたのである。中国が靖国批判を始めたのは、旧ソ連の軍事的脅威がなくなった後である。
  2. 「我々はいわゆるB級、C級戦犯ですね、全部釈放し、日本に帰らせたのです」
    ★実際には日本兵の圧倒的多数は処刑された。
  3. 「反日教育はありません」
    ★実際には、中国は長年、愛国主義教育に名を借りた反日教育を実施してきた。
  4. 東シナ海の資源開発問題について、日本の主張する中間線は「もうすでに交渉を通じてお互いに認め合うラインではないのです」
    ★実際には、中間線を認めないのは中国のみで、日本ではない。「お互いに」の表現は虚偽である。また、過去30年ほどの国際司法裁判所における海洋上の境界線は、すべて中間線を基本として引かれている。中間線を基本とする解決こそ、日本だけでなく世界の常識であり、中国こそが非常識なのである。
  5. 日中は競合ではなく相互補完関係にある
    ★実際には、中国は日本の国連安保理常任理事国入りに断固反対し、猛烈に働きかけてアジア諸国に日本の常任理事国入りへの支持を断じて許さなかった。同じく05年12月の東アジア首脳会議では、中国が日本をおさえて覇権確立を目指して熾烈な鍔迫り合い(つばぜりあい)を演じた。




 以下では、著者の指摘する事実関係 (中国側の主張内容、および、本当の歴史的事実) が真実であるとして、話を進めます。

 上記に整理した内容を見ていて、気になる部分が2か所あります。以下、順に述べます。



 (1) 中国側が「反日教育はありません」と述べているのに対し、実際には、中国は長年、愛国主義教育に名を借りた反日教育を実施してきたと批判している部分

 この部分ですが、中国にしてみれば、「愛国教育」をしてきたのであって「反日教育」はしていない、ということなのでしょう。「愛国教育」の内容が「たまたま」反日的になっている、ということなのかもしれません。

 とすれば、中国側の主張は「嘘ではない」ということになります。

 もちろん中国側の主張は「嘘ではない」と言い得るとしても、実質的には「嘘」であると言ってよいとは思います。つまり、中国側の主張には「詭弁」の要素があるということです。

 とすれば、中国側は「嘘をついている」か「詭弁を弄して(ろうして)いる」ということになります。

 ★詭弁のテクニックその1=「言い換え」



 (2) 東シナ海の資源開発問題について、中国側が日本の主張する中間線は「もうすでに交渉を通じてお互いに認め合うラインではないのです」と述べているのに対し、実際には、中間線を認めないのは中国のみで、日本ではない。「お互いに」の表現は虚偽である、と批判している部分

 この部分も、中国にしてみれば、「お互いに認め合うライン」「ではない」と主張したにすぎない、とも受け取れます。つまり、

   「お互いに認め合うライン」
       = 日本と中国がともに認めているライン

   「お互いに認め合うライン」「ではない」
       = 日本が認め、中国が認めていないライン

ということになり、中国側は「嘘をついていない」ということになります。

 もちろん著者のように、「お互いに」「認め合うラインではない」と解釈すれば、

   「お互いに」「認め合うラインではない」
       = 日本も中国もともに認めていないライン

ということになり、中国側は「嘘をついている」ということになります。

 「お互いに認め合うライン」「ではない」にしろ、「お互いに」「認め合うラインではない」にしろ、どちらであっても、「過去30年ほどの国際司法裁判所における海洋上の境界線は、すべて中間線を基本として引かれている。中間線を基本とする解決こそ、日本だけでなく世界の常識であり、中国こそが非常識なのである。」という著者の批判は成立しますので、

 全体として、著者の主張が正しいことには変わりありません。

 しかしここでも、中国側の主張には「詭弁」の要素があるといえます。なぜなら、詭弁を弄する(ろうする)者は、相手の主張を「おかしい」と徹底的に批判する傾向がある一方で、自身の主張は「わざと、あいまい」にする傾向があるからです。つまり詭弁を用いる者には、自分は「どちらにも取れる」「あいまい」な主張をしつつ、相手がその「あいまいさ」を「勝手に」確定すれば、「そうは言っていない」と、相手を徹底的に批判してくる傾向があります。

 ★詭弁のテクニックその2=「あいまい」な主張



 以上、中国側の主張がいかなる意味であれ、全体として、著者の主張が正しいことはあきらかですが、中国側の主張に詭弁の要素がみられることが、気になるのです。

 上記、詭弁のテクニックは次のようなものでした。

   その1 「言い換え」
   その2 「あいまい」な主張

 「言い換え」は相手が批判することを難しくします。「愛国教育」なのか「反日教育」なのかの水掛け論になりやすく、「愛国教育」なのか「反日教育」なのかを争っているうちに、「本当の問題」がなおざりになってしまうからです。「本当の問題」とはすなわち、「愛国教育」であれ「反日教育」であれ、要は「教育内容に反日的要素があることが問題の要点」だということです。

 同様に、「あいまい」な主張も、相手が批判することを難しくします。「どちらかに意味が確定」されなければ、批判しづらいからです。「お互いに認め合うライン」「ではない」にしろ、「お互いに」「認め合うラインではない」にしろ、どちらであっても、中国側の主張に問題があることはあきらかなのですが、批判するために日本側が「どちらかに意味を確定」した途端、「いや、そういう意味で言ったのではない」と逆に批判し返すことができます。すると議論の形勢は一転、中国側に有利に運びやすくなるわけです。日本側は勘違いしてトンチンカンな批判をしている、という状況が作られてしまうからです。

 中国側が詭弁を弄しているとすれば、日本側の反論・批判はかなり難しくなります。しっかり対策を練ることが必要だと思います。



 なお、詭弁のテクニックとその問題点は、私が「弁護士による「詭弁・とぼけ」かもしれない実例」などを経験するうちに、詳しくなりました。機会をみて、「詭弁対策」についても書きたいと思います。

 また、「専守防衛について」において、日本は国連常任理事国入り後を目安に専守防衛を放棄すべきである (=それまでは専守防衛を継続すべき) と私は述べていますが、(中国は日本の国連常任理事国入りを阻止する工作をしているので) こちらについても考え直したいと思います。



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