風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/未来を花束にしてSuffragette[女性参政権]

2017年07月13日 | 映画


とても刺激的でした。
イギリスの女性参政権運動に関する映画です。
舞台は1912年、ロシア1905年革命、第一次世界大戦、1917年ロシア革命の直前の時代です。
先進国では、猛烈な帝国主義が席巻し始め、たくさんの農民が都市に流入し労働者となりました。
彼らは、職と食を得るため、資本による苛烈で劣悪な労働・生活環境を強いられました。
特に、女性と子どもを取り巻く環境は凄まじいものでした。
女性参政権運動を展開するWSPU(女性社会政治同盟)は"言葉より行動を"と直接行動をよびかけ、活動も活発となり、
アイルランドでテロ対策に辣腕をふるったスティード警部が赴任してきます。
彼は歴史上初となるカメラによる市民監視システムを導入した人物だそうです。
WSPUのカリスマ的リーダー、エメリン・パンクハーストをメリル・ストリープが演じていますが、
その演説はまるで詩の朗読の様にきれいで、力強かったです。
イギリス英語は私には耳触りがとても優雅できれいですが、階級間でその違いはあったのでしょうか?
しかし、運動は行き詰まります。彼女たちの中の一人が選んだ戦術は、「ダービーのレースの馬の前に飛び出る」でした。
このシーンと音響はとても素晴らしいものでした。
今日、こうしたシーンをや運動を描くことは商業的にはかなり勇気が要ることは疑う余地がありません。
しかし、当時先進国では、共産主義運動や無政府主義者の運動やテロリズム運動など今日から比べるとかなり過激な
行動が行われていました。
Suffragetteは馴染みの薄い英語で、ちょっと前までは「婦人参政権」と訳されていました。
ところが、邦画の題名は"未来を花束にして"、これは陳腐を通り越して、二の句が継げない、です。
しかし、残念ながら映画の出来としては、傑作とは言えません。
主人公モードの視点からストリーを展開しているのですが、この種の映画として参政権運動の啓蒙・紹介を
どうしても避けて通れないことから、彼女の内面の葛藤や苦闘を充分に描くには少し時間が足りないのです。
当時置かれた男性労働者、女性・子ども労働者の苛酷さをことさら描かなかったことも良かったです。
映画の最後に、女性参政権を獲得した国々が獲得順に紹介されます。
トップは、ニュージーランドでなんと1893年です。
女性参政権運動は、18世紀からフランスで始まったそうですが、オーストラリア(1902年)、フィンランド(1906年)、
ソビエト=ロシア(1917年)、カナダ・ドイツ(1918年)などと続きます。
日本は、何と1945年12月でした。スイスは、1970年になってでした。
モードは、子どもを夫に奪われ、さらに彼は息子を養子に出します。
映画は子どもの養育権についても最後に少し触れています。それは、女性の参政権よりはるかに遅れています。
女性、子ども、人の人権についての「不条理」は今なお強固に存在しています。  【2017.7.10】

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