風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/わたしは、ダニエル・ブレイクL,Daniel Blake

2017年07月17日 | 映画


秀作です。
大工のダニエルは、59才、心臓発作で倒れます。妻は、数年前に他界し、一人暮らしです。
さて、これから彼はどうやって生きていけば良いのでしょうか?
「ゆりかごから墓場まで」を謳う歌うイギリスの田舎町・ニューカッスル、彼は職安や社会福祉事務所に行きます。
職安では、「心臓病で仕事は出来ない、福祉事務所に行け」と言われ、福祉事務所では「求職活動をしろ」と言われます。
手続きは「オンライン」=コンピュータを通してと言われます。「マウスを画面上で動かして」と言われます。

受け狙いでイヤ味なシーンでしたが、桂文珍の新作落語・「老楽風呂」を思い出しちょっぴり笑いました。
社会福祉事務所で彼は、ロンドンから移住してきた若いシングルマザー、ケイティが事務所で「冷たい仕打ち」を
受けているのを見て、「何故手を差し伸べないのだ」と、大声をあげます。
屈強な職員とガードマンによって彼らは排除されます。
私は、「福祉の国」と言われるイギリスやユーロ諸国の福祉の実態については全く知りませんが、
日本と同じように、役所は「貧者、弱者に冷たく」、窓口をあちこちたらい回しさせられます。
それを契機にダニエルとケイティは親しくなります。もちろん男女の関係ではありません。
ケイティを巡る印象的三つのシーンがありました。
一つは、フードバンク(食糧支援施設)で、ケイティはもらった缶詰の封を開け手づかみで食べてしまうシーンです。
何日も食べてこなかった彼女でした。ここの職員の彼女への何とも暖かく優しい態度は感動的でした。
二つは、スーパーで万引きしてしまうシーン。ガードマンに呼び止められ、「困った時は電話を」と言われます。
頑張った彼女ですが、子どもが貧しさの故にいじめられ、彼に電話をし「危うい仕事」に手を出してしまいます。
三つは、ダニエルが倒れた時、彼女は敢然と「福祉事務所」と渡り合い、支援のボランティア団体を紹介するシーンです。
ダニエルは、福祉事務所の「お情け」を拒否し、「俺は、誰でもない、ダニエルだ」と福祉事務所の壁に落書きします。

それは、「オレは其の他大勢」ではない、名を持つ、一人の人間なんだと言う、強烈なメッセージです。
それがこの映画の"題名"となりました。
ボランティア団体での面接の時、トイレに立った彼は、そこで心臓発作で倒れ、死にます。
ハッピィエンドでない、残酷な結末でしたが、映画としてはそれはとても良かったです。
ケイティは、葬儀で、「敬意ある態度」こそ大事だと言います。
葬儀の場には、福祉事務所の女性が参列していました。彼女は、パソコンが使えない彼に優しく接するのでしたが、
上司は、「特例を作ってはダメだ」と指示されたりして居たのです。
その他、彼のアパートの隣人や、職安で職を求める人々、街頭の庶民など、「貧しき大衆」の優しさと、人への共感、
そして最後に敢然と前を向いて歩いていくケイティに、私達は勇気づけられるのでした。
弱者に目を向ける作品を撮り続けてきたケン・ローチ監督の面目躍如の作品でした。      【7.10】
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