風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

映画/ビール・ストリートの恋人たち

2019年07月27日 | 映画


秀作です。主人公の二人の設定が10代なのですが、演じる役者は20代後半ですっかり大人なのが残念。
また、ストーリー展開が間延び・冗舌になってしまったのも失敗でした。もっとさらりとした方が私好
みです。
前作『ムーンライト』では、黒人差別批判の直球でしたが、今度は恋愛映画を装っていますがやはり
根は今日のアメリカの「人種差別」批判と思います。
無実の青年を救うために、ふたつの家族が力を合わせて巨大な権力や法律、偏見社会の壁に立ち向か
っていく姿が感動的です。何度も黒人たちが自分たちをニグロと自称していました。私はその意味
がよくわかりませんでした。ファニー(男)の家庭は、インテリで女性たちはちょっとすっ飛んだ高
慢さですが、父親はティッシュに暖かい言葉をかけ無実を証明しようと走り回ります。父親二人は、
お金を工面するため市場の商品の窃盗までしてしまうのですから。
他方ティッシュの家族は、そろって彼女を支えます。母親は、高卒ですが、大卒一家のファニー家の女
性たちよりはるかに知的で上品で、流石でした。助演女優賞を獲得したレジーナ・キングさんは、ハッ

とする美人で特に彼女の「愛を信じるならうろたえないで」は心に残ります。強い母の言葉に、ティッ
シュも強い母になって行きます。若い白人弁護士ヘイワードも差別せずに精一杯頑張ってくれます。
彼は、白人ですが新しい考えを持っていて、正義感もあり戦いますが、若いが故の経験不足から上手
くいかないのが悔しい部分。スペイン料理店の店主ペドロシートはスペイン系、行きつけの売店のお
ばちゃんはイタリア系、不動産仲介のレヴィはユダヤ人、手伝ってくれるバーテンダーのピエトロは
プエルトリコ人やメキシコ人など、移民やマイノリティたちはわずかな時間しか画面に登場しません
が、何とも魅力的な彼らは警察の横暴と戦い、彼ら黒人たちを応援します。
私は、映画ではファニー家の女性たちは否定的に描かれほとんど登場しません。私は原作を読んで

いませんが、原作ではファニー家の女性たちも後半では若い二人を支えて行くようですがどうなので
しょうか。この映画は表向きは「ラブロマンス」として描かれていますが、内実はアメリカのひどいレ
イシズム・マイノリティ差別に負けずに健気に生きる人々の賛歌と私は思います。日本の現状もひど
いので、外国のことは強く批判できませんがやはりアメリカの現状、その闇・病は恐ろしいほどです
が、同時にこうした映画が作られ、ヒットするのもアメリカなのですね。     【7月15日】
映画「Moonight」の私のブログはここです

映画/マイ・ブックショップ

2019年07月19日 | 映画



何を描きたいのかよくわからない映画でした。
舞台は1960年代初頭のロンドンからかなり離れた東部の海岸の田舎町と言います。ドンヨリ感漂ういか
にも古めかしい町です。

書店が無いこの町で、フローレンスは書店を開きます。でも、この町で無ければならない理由などは不明
ですし、彼女の動機はただ本好きなだけです。長い間空き家になっていた「OLD HOUSE」というお屋敷を
買います。この古い屋敷で無ければならない絶対性もよくわかりません。本屋ビジネスで成功すること
が夢では無くただ本屋を持ちたい願いであれば古い屋敷でなく小さな店でも良いはずです。彼女が歴史
建造物にこだわる訳が私にわかりません。
 この屋敷を「アートセンター」にしたいと思う保守的な町の有力者ガマート夫人は、この屋敷を奪い取
ろうと画策します。彼女は、なぜ、もっと以前にこの屋敷を買わなかったのでしょう。
 フローレンスは、当時評判になった小説「ロリータ」がこの狭い町で200部(確か)も予約するのですが、
行列ができるほど売れたと言うのです。もう一つの鍵となる本は「華氏451度」です。ガマート夫人との争
いに負けたフローレンスはこの島を去ります。この映画の陰の主人公はクリスティーンと言う、フローレ
ンスの店で雇われた小生意気なませた少女ですが、彼女が突然最後の場面に現れて、フローレンスに別れ
を告げながら屋敷方向を指さすと、屋敷は燃えていました。本が燃える温度・華氏451度という落ちです。
唐突に、書店オーナーになった成人したクリスティーンが店内を闊歩する場面で映画が終わります。
 映画全編、ストーリーがよくわかりませんでした。耳の心地よいイギリス英語でしたが、何とも鼻持ち
ならない「大言壮語的」で古くさいイギリス文化にも辟易気味でした。
フローレンス、ガマート婦人、そしてクリスティーンの美しい三人の女性でした。
【7/15】

映画/家(うち)へ帰ろう

2019年07月08日 | 映画



佳作です。ブエノスアイレスに住む88歳のユダヤ人仕立屋アブラハムは、自分を老人施設に入れようとしている
家族から逃れポーランドに向かいます。ワルシャワでホロコーストから逃れた彼を救ってくれた親友と交わし
た「自分が作ったスーツをプレゼントすると言う約束」を果たすためです。
 私には、ホロコーストを生き延びたユダヤ人は「穏やかで実直な好々爺」のイメージを勝手に持っているのです
が、このアブラハムはまさに今日の我々同様の我がままで偏屈で「可愛くない」わからず屋の高齢者、行き先々で
人々に突っかかり、悪態をつきます。ユダヤ人独特の小さな帽子もかぶっていません。しかし、突っかかられた人
は、皆「善い人」で、この老人を信じられないほど手厚くケアするのです。最初の人だけが男、後は安ホテルの女主
人、次が文化人類学の先生、最後が看護婦、この四人はまさに「無償の愛」を施すのです。ドイツの地には足を触れ
たくないなどと子供じみたわがままを言う彼に人類学者の先生は地面にシャツを敷いて地下鉄に乗せるなんて
下りは大笑い、飛行機で行けばいいのだし、靴を履いているのだから。でも鉄道を選んだのは、かつて自分が通っ

た道なのでしょうか、でも昔は地下鉄はなかったのじゃないかな。やっとのことで故郷の家にたどり着きます。
そこはかつて仕立屋の父の店、しかしアブラハム一家が追放された後そこの従業員一家が勝手に住み込んでい
て、その息子にその家の地下室に彼はかくまわれた家です。彼は再開したアブラハムに「家(いえ)に帰ろう」と
抱き合います。送ってきた看護婦が彼らに何の言葉も交わさず微笑みを浮かべながらその場を去るラストはこ
の映画の「珠玉」シーんでした。
 彼を助ける赤の他人4人は、本当に「善き人」です。このメッセージを私は考えたのですがよくわかりませんで
した。ヨーロッパ人のユダヤ人に抱く「原罪」意識だけではないと思うのです。現在世界を席巻しているレイシズ
ムや移民排斥、ポピュリズムへの警鐘・批判のような気もします。思い出しました。この映画の唯一の悪い人は、
ホテルの部屋からアブラハムのお金を盗んだ人がいたことです。そして、アルゼンチンはナチ戦犯が逃れ、ユダ
ヤ人が移住した国でもありました。楽しい映画でした。     【7月1日】

映画/小さな独裁者

2019年07月06日 | 映画



実話をベースにしているそうです。社会派的警句的ともいえますが、同時に一種の
「コメディ」とも言えます。
若きドイツ兵が脱走します。彼は、将校の服を拾います。弱々しい兵士から自信に
満ち溢れた将校の顔に変貌します。彼は「ヒトラー総統の特命を受けている」と次
々に「小さな独裁者」となって「過激」になって行きます。
それは、まさにヒトラー・ナチスが「大きな独裁者」になっていく過程そのもののよ
うです。若干21歳の若造に、大人たちが次々と騙されひれ伏していくのは「作り物
過ぎる」感なのですが、「狂気」・今日のファナティックな大衆迎合主義とはそうい
うものかもしれません。「映画/帰ってきたヒトラー」はまさにコメディでしたが、
昨今テレビ・映画でヒトラーものが目につきます。
彼は、映画では処刑されたとだけ文字で紹介されましたが、裁判の過程も映画化
されたら面白いのにと思いました。
それらの私のブログは、 帰ってきたヒトラー ヒトラーの忘れもの です。