石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(ニュース解説)アザデガン油田開発で試される日本の資源外交(全4回)

2006-09-07 | 今週のエネルギー関連新聞発表

全文をHP「中東と石油」に一括掲載しました

第1回:アザデガン油田開発の実行を迫られるJAPEX

 2004年2月に調印したイラン・アザデガン油田の開発契約について、今月22日に迫った開発着手期限に対し9/15までの正式回答を迫られている 国際石油開発帝石ホールディングス(INPEX)は、仏の国際石油企業Total社をパートナーに巻き込んで 、開発に踏み切ろうとしている 。

 イラン側は動きの鈍い日本に対しこれまでにも、契約を破棄し同油田の開発権益を他国(例えば中国)に譲渡する、とほのめかして、ゆさぶりをかけていた。現在米国とイランは国連を舞台に激しく対立している。日本は対米協調を基軸とする外交方針と、イランとの関係を強化して石油の安定確保を図りたいとする国家エネルギー戦略の板ばさみ状態にある。

 INPEXの最大の株主は日本政府であるため、同社は政府の意向に従って煮え切らない態度に終始したまま今日に至っている。民間企業である同社としては、開発着手の遅れが日米関係あるいは米イラン関係などの政治的な問題であるとは主張しにくい。このためINPEXトップは、遅延の理由として、イラク国境沿いにあるアザデガン油田地帯には、1980年代のイラン・イラク戦争当時に多数の地雷が埋設されており、これら地雷を除去して安全が確認されるまでは開発に着手できない、と説明している 。

 アザデガン油田とその開発の概要については次回に詳しく触れるが、同油田の推定可採埋蔵量は260億バレルであり、本格的な生産段階に入れば日量26万バレルの生産が予定されている。これは日本の一日当たり消費量540万B/D(2005年、BP統計)の約5%に相当する。本格生産までには8年を要し、総投資額は20億ドルと見込まれる大型プロジェクトである。

 このためINPEXは当初から石油開発の経験が豊かな国際的な石油企業を引き込むことを検討してきた。しかしスーパーメジャーと呼ばれるエクソン・モービル、シェブロン、シェル、BP4社はいずれも米英の企業であるため、IRSA(イラン・リビア経済制裁法)を振りかざす米国政府の意向を恐れてイラン進出のパートナーになる気配はない。仏TOTAL社の名前が浮上したのはこのような経緯によるものである。

 アザデガン・プロジェクトは当初から政治的環境に翻弄されてきた。日本を牽制し続ける米国、それに対して石油の安定供給と言う「飴」と契約の破棄と言う「鞭」をちらつかせるイラン。そして地球規模で繰り広げられるエネルギー資源の争奪戦に国を挙げて割り込む中国やインド。さらには中東イスラム圏と欧米先進国とのパレスチナ和平、テロ或いは核開発疑惑などの問題をめぐる対立があり、複雑なジグソー・パズルの様相を呈している。アザデガン油田の開発を軌道に乗せるには解決すべき難問が多いのである。

(次回以降の予定)

2.アラビア石油に代わる中東石油開発のビッグ商談

3.イランの石油と天延ガスに触手をのばす中国、インドなど

4.対米追随では全てを失う日本、小泉後の中東資源外交に明確な姿勢を

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