マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

投票率、たったの43%だった欧州議会の総選挙2014

2014-06-02 13:00:00 | スペイン日記

欧州議会 (写真:El Mundo)

 欧州チャンピオン・サッカー・リーグで地元の「マドリィ」がチャンピオンになったのは5月24日の夜でした(マドリィ~)。勝利の美酒にマドリっ子達がまだ酔っていた翌日の5月25日の日曜日に欧州議会の総選挙がありました。欧州議会とはヨーロッパ連合(EU)の国会に当たります。その総選挙は5年ごとなので前回は2009年でした。マドリード州の投票率は48,54%だったので半分のマドリっ子たちは酔っ払って寝ていて投票に行かなかったのです。当たり前ですよね。

 僕もスペイン人じゃないので投票権がないのでもちろん行きませんでしたが、スペイン全国で45,85%、全ヨーロッパでも43,09%だったので、マドリードの数字は少しましですが大差無いですね。投票率が50%以下では投票結果の信憑性は怪しいのですが、スペインの二大政党:PPとPSOEはメチャクチャに議席数を減らしました。ほとんどのスペイン人がザマーミロと中指を立ててますね(人前でしちぁダメですよ)。

 面白いのはニ大政党が失った投票数の500万票はスペインの失業者数とほぼ同じです。書いたように、この投票率では信憑性には欠けますが就業者数と年金生活者を足したのがほぼ選挙人数でしょうから、彼らたちのニ大政党への復讐です。PPとは国民党(Partido Popular)のことでスペイン人は「ペ-ペ-」と呼びます。 PSOEはスペイン社会労働党(Partido Socialista Obrero Español)のことで「ぺ-セ-オ-エ」と呼びます。

 それぞれの政治カラーですが、PPは日本の自民党みたいで、現在の与党です。衆議院、参議院の両議会で過半数を占めてます。PSOEはその名の通り社会労働党ですが、80年代に当時の書記長でもあったゴンサレス前首相の英断(だっと思う)でマルクス主義を放棄しました。現在は野党です。悪さにも政治カラーが出るのか、PPは闇政治献金の隠匿、PSOEは公金横領です。5年前の欧州議会総選挙ではこのニ大政党で80%の議席数を確保したのに今回は49%まで落ちました。ヨ-ロッパ議会の全議席数は751で、スペインの割り当ては54席です。つまり2009年は二大政党で47席だったのが2014年は30席までに激減した訳です。

 PPが8議席減らしたのは当たり前です。スペイン経済再建に与党として国民に増税を強いて、失業者も余り減らないので、そりゃ、誰でも嫌になります。そんな党に日曜日のほろ酔い気分の時にわざわざは一票入れに行くのはよほどの奇特なスペイン人です。でも一応、一政党としては最多数の16議席だったので、与党としての面目をかろうじて守りました。

 PSOEが失ったのは9議席とPPと似たようなものですが、内容に雲泥の差があります。野党第一党としてPPの政策に2年余りもの間散々非難を浴びせ、このヨーロッパ議会総選挙でPPをひっくり返そうと全国民に呼びかけて来たのに、ひっくり返ったのは自分だったのです。PSOEが思っているほど、スペイン国民はドン・キホーテじゃなかったのです。この重税、失業者の数の張本人はPSOEのサパテロ前首相だったのを国民は分かっているのです。

 PPへの復讐はそのやり方があまりにも急できつかったので、生活に困る家庭が沢山出ました。この選挙結果に学んでPPは政策の大筋は曲げずに「おっとっとぉ、ちょっと、きつかったぁ?」と締め付けを緩めればいいだけなのです。重税に一番あえいだのが中流家庭で、納税者数では一番多い彼らが野党PSOEのだらしのなさに愛想を尽かしました。

 共産党(名前は左派連合・イーウー/IUです)は4席も議席数を増やし6席だぁ、と喜んでいますがとんでもないです。PSOEからの逃避票で、本来の支持層である低収入者層と若者層からは背を向けられました。それらの票は新しい極左翼のポデモス党(Podemos / 訳してみれば「できるぜ党」ですね)へ流れました。教員のパブロ・イグレシアスと言う青年が4ヶ月前に立ち上げた、出来たてホカホカの党なのに一気に5席も取り、スペイン政党では第4党になりました。


スペインの第四党になったポデモス党のイグレシアス青年

 マドリ-ドは首都でもあり国会もあるので、政治への関心度は高い方だと思うけど、投票率を見る限りでは“欧州議会”は“遠くにありき”です。これが村同志で50キロも離れている田舎のオッサン・オバサンには「凄~く遠い話」じゃないでしょうか。欧州議会で決まる法案はいずれは自分の国でも施行されるので大事なことなのですが(例えば「家検はコワイです」)、遠いです。

 でも、欧州議員の給料は良いのですよ。色んな手当ても含めると月に1万7千ユーロ(230万円くらい)で勤務先はブルッセルかストラスブールなのでスペイン人には遠いけど、議会は週の月~木曜日の4日間で週末は自国で過ごせるようにビジネスクラスのエアーチケット付きです。だから党員の天下り先には美味しいのです。これって、倦怠期のヨーロッパ人夫婦のどっちらかのポストにピッタリだと思いませんか?

 ヨーロッパ議員の平均年齢は51歳で64%が女性議員だそうです、やっぱりね。もっとヨダレが出るほど美味しいのは欧州中央銀行とか同投資銀行などの欧州金融機関で、頭取や役員の年収は議員の10倍~20倍だそうです。デレ~。だからかどうかは知らないが、最右翼や最左翼が甘い蜜を求めて出てくるのです。元々少ない党員数なので分ける蜜の量は大政党よりも甘~いのです。政党の政治資金にも回わせます。もちろん政治的目的もありますが、今回の総選挙でフランスの第一党となった右翼のル・ペンやスペインの第四党となった左翼のパブロ・イグレシアスが党を立ち上げるのです。


フランスの第一党よ!と喜ぶル・ペン女史

 経済危機が起こるといつも生まれるのが両極端の政党なのがヨーロッパの政治的歴史ですが、それが育たないのはいわゆる「ヨーロッパの良識」のメカニズムが働くからです。「ヨーロッパの良識」って聞こえはいいけど、武力行使もありです。


結束を始めたヨーロッパ右翼連合の国々の党首たち

 話はスペインに戻りますが、今回の欧州議会選挙の結果で2015年末のスペイン総選挙を推測すると、二大政党は大幅に議席数を失います。小党と組んでも過半数にはおぼつかないまでの落ち込みには、二大政党で「オトモダチ」を組むしかないですね。同棲までに至るかは、来年の春の地方選挙にかかってきます。ゲェー、キモチワルィですが、もしPPがマドリードでPSOEに負けたらありえます。

 2015年の末が総選挙ですが、スペインもドイツのメルケル政権のように保守党と社会党が組まなければ安定政治ができない雲行きになった、欧州議会選挙結果でした。いやぁ~、面白くなってきそうですね。政治をサッカーのリーグ戦みたいに楽しんじゃ罰が当たりそうですが、もう、スペインのバルのオヤジや日本の床屋のオヤジの政治談義のノリですね。
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1 コメント

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Unknown (オヤジ・フィフティ)
2014-06-07 13:04:15
人間どうしても、2:3:3:2に別れますからね。
「おバカ」な5割が棄権しても、当たり前かと。

ただ、移民問題なんかに火がついた時、怖いのがこの人達ですよ。
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