マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

大雪フィロメナ

2021-01-20 09:30:00 | スペイン日記

大雪

 昨年はコロナウイルス禍で家こもりを強制されたので制作は全く進みませんでした。小説家は天才的創造頭脳とペンがあれば家に籠って名作を書けます。画材が手元にない下手な絵描きはアトリエに籠って何ができるでしょうか?それでなくても小心者の僕には不安が雪のように積もったのが2020年でした。それが終わり、ワクチンもできたので2021年に明るい希望を持って迎えた新年です。

 

 ところが初めから出鼻をくじかれました。スペインのクリスマス週間ナヴィダァ“Navidad”(1224~16日)が終わった翌日からマドリードは雪が降り始めました。189日は大雪になりました。10日の日曜日は膝上まで雪に埋もれ外に出られなくなりました。50年ぶりの大雪です。まさか、スぺインに来て雪かきをする羽目になるとは僕は思いませんでした。一応、スぺインは南欧と呼ばれています。雪国の人なら降り始めにしなければならない作業は分かっていますが、僕はただあれよあれよと積もる雪を眺めていたアホでした。まさか50センチも積もるとは思いませんでした。甘く考えていました。ガス、水道、電気の生活インフラが心配になりました。

通りは雪で埋まりました

 雪がやんだ日に外にある水道の口にボロ布をかぶせました。そのうちに屋根に積もった雪から雨漏れが始まりました。バケツを置きました。玄関から門までの雪かきをしました。初めてなので一人歩ける幅の道を雪かきするだけに1時間はかかりました。使ったのは鉄のスコップなので雪がのると重いです。足元がおぼつかないので腰で体を支えたので、腕だけに雪の重さがかかりました。すぐに肩が痛くなりましたが、だましだましどうにか門にたどり着きました。その門は凍っていました。カギが入らないので台所へ戻り瞬間湯沸かし器でお湯を沸かしました。そのお湯をかけ開錠しておくことにしました。車も雪に埋もれたので、スコップと箒で下ろしましたが2時間かかりました。これでは除雪車が来るまでは買い物にも出られません。マドリード市には沢山の除雪車があるとは思えません。毎年雪は降りますが積もっても1センチなので翌日には溶けていまいました。

 

 仕方ないので、市は軍隊に要請をして大通りの除雪が始まりました。その大通りでさえ車が一台通れるほどの除雪幅(量)なので、僕の家の前の通りが除雪されることはまずありえません。状況が把握できたら自分で解決をするしかありません。雪を踏みつぶして買い物へ行きました。ボスッボスッと長靴が雪に埋まりました。滑りながら着いた近くのスーパーの生鮮食品の棚は空っぽでした。鶏肉、牛肉、豚肉はもちろん羊肉のパックまで見事に消えていました。スーパー内の肉屋には長蛇の列でした。客は肉をミンチにして貰っていたので普段よりも待たされたのです。休校なので子供たちの肉団子やハンバーグのためでした。僕は煮込みに使う牛のもも肉(冬のスぺインでは牛肉、腸詰、豆を煮込んだ鍋プチェロ“Puchero”が一番です)が欲しかったのですがあきらめました。

門まで雪をかきました

 野菜や果物はまだ棚にありました。日本リンゴの富士を買いだめしました。毎朝リンゴ富士を食べています。卵を2ダース、牛乳、ヨーグルト、パスタ、米を買い、そうそう「体温が下がらないため」にワインも買いだめました。買い物袋二つの量になり両手が痺れました。帰り途中のバルも閉まったままなのでトボトボと雪道を帰宅しました。毎晩マイナス10度まで下がるので雪はどんどん凍っていきます。日中は2~5度です。日ごとに雪はコンパクトになりますが、カチンカチンになりました。雪が積もった初日から比べたら滑って転ぶ回数が増えました。もう気温が上がって溶けるのを待つしかありません。今回の大雪では街路樹が倒れ、数多くの枝が折れました。

 

 1週間経ちましたが家の前の道路は雪で車での買い物はできません。全ての用事は歩いて行ける範囲で済ませています。失敗したのは、雪がやんだ時にマメに除雪をすべきでした。そのうちに溶けるだろうと高を食っていました。雪の下の部分が歩道やアスファルトに凍り付いてスコップで剥がせなくなりました。雪の上の部分だけでも数センチを削っておくべきでした。晴れた冬のマドリードでは気温は上がりませんが太陽は輝きます。地表に残っている雪や氷が1センチなら溶かしてくれます。空気は乾燥しているのでついでに乾かしてくれます。その太陽の輝きだけは南欧なのです。

車に積もった雪

 マドリード市内のメトロは全線動いていますが、混んでいます。バスは除雪された大通りの運行のみなので空いています。封鎖されていたバラハス空港もやっと発着できるようになりました。ネットで済ませられることが多いので、このネット社会には救われています。今回の大雪に付けられた名前はフィロメナ(Filomena)です。女性の名前ですがスぺインには1万人ほどの珍しい名前です。

降り始めの公園は綺麗でした

コメント (1)
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