マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

ペドラサ

2024-03-27 15:00:00 | スペイン日記

ペドラサの広場

 ペドラサ(Pedraza)はセゴビア県にある小さな村です。コウノトリの里だそうでその巣がたくさんあります。マドリードからは車で1時間半足らずです。週末はマドリっ子たちが溢れています。彼らの目的はコウノトリウォッチではありません。ラムの丸焼きを食べに行きます。

ペドラサの広場

 セゴビア(Segovia)はマドリードの北にあり、ローマ時代の水道橋とおとぎ話に出てくるような可愛い城があります。そしてこの地方のかまどで焼く子豚やラムの丸焼きは絶品です。昔はかまどでパンを焼いていました。パンを焼いた後その残り火で肉を焼きました。スペイン語では丸焼きをアサド(asado)と言い、子豚をコチニィジョ(cochinillo)、ラムをコルデロ・レチャル(cordero lechal)と言います。

ペドラサ

 セゴビアは豚、羊、牛の肉の味が他と違います。小さい村が点在する酪農に適した土地と涼しい気候が良いのでしょう。ペドラサにそれらを食べに行きました。レストランに予約を入れると、注文を聞かれます。丸焼きは時間がかかるのとラムや子豚は焼きたてを食べないとセゴビア産の肉がもったいないです。それにラムの脂肪は融点が高いので冷めると脂が固まります。不味くなります。食事時間は1時半か3時半なので、1時半にしてラムの丸焼き二人分と子豚の丸焼き二人分を注文しました。友達と4人です。「時間に遅れないでください」とスペインらしくない注意を受けました。

ペドラサ

 当日村を散策したら沢山のコウノトリの巣がありました。それも大きい立派な巣ばかりです(巣にもコウノトリの大工工事の上手さがみられます)。ペドラサは茶色い壁の背の低い家が並ぶカスティージャ地方(イベリア半島の中央部)にはどこにでもある村ですが、その街並み(村並み?)が昔のままで残っています。村の中心である大広場を囲む家々も昔のままです。

ペドラサの城

 ぶらぶらしながら土産物屋をのぞいたりして、指定時間にレストランに入りました。いい匂いが漂っています。リオハの赤ワインとシンプルなサラダも頼んだら、待ち構えていたようにラムと子豚の丸焼きが運ばれてきました。茶色い土鍋のような器ごとかまどで焼いたので熱々です。この器ならしばらくの間は冷めません。下には下駄のようなものが敷いてありました。

コウノトリと巣

 子豚はとろけるように柔らかい肉とパリパリの皮の相性が絶妙です。ラムは良い香りに誘われて口に入れるとジューシーで味のある肉にビックリです。まったく羊の臭みはありません。器に残った汁もパンに浸して食べてしまいました。赤ワインにぴったりの料理に大満足をしました。来たかいがありました。そして聖週間(セマナサンタ/Semana Santa)が始まりました。その間は肉を食べるのは慎むのがしきたりですが、聖週間のペドラサはツーリストでごった返します。丸焼きを食べないツーリストはいないでしょう。

コウノトリと大きい巣

手前がラム、後ろが子豚

下駄を敷いています

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ガリシア

2024-03-06 12:01:27 | スペイン日記

 

勝利を祝うPP党のルエダ氏とファミリー(El Mundo)

 先のブログでも書いたように、ガリシア州議会選(18‐Fとスペインメディアでは表記されます。2月(February)18日の意味です)はPP党(ペーペー/国民党/中道右派)の圧勝でした。スペインの現内閣・サンチェス氏が率いるPSOE党(スペイン社会主義労働者党/左派)はボロボロに負けました。ガリシア州議会の野党に躍り出たのはBNG(ガリシア民族党/左派)です。投票率は70%に近い67,3%です。立派なものです。大雑把ですがその投票者の半分近くがPP党に入れ(獲得議席数40/75議席中)三分の一がBNG入れ(25/75)、PSOE党はたったの9議席でした。

 

 ガリシア州は漁業で成り立っています。その漁民は漁に出たら投票に戻っては来られませんので今回の投票率70%は驚きです。そのガリシアについて軽く書きます。イベリア半島の北西部-地図上ではポルトガルの上-に位置します。雨の多い土地なので、スペインでは日本に近い景色がみられる土地です。4つの県からなるガリシア州ですが地方や国外へ出た移民者が多いのもガリシア人です。南米のアルゼンチンには多くのガリシア人が移民したので、アルゼンチン人はスペイン人を“ガジェゴ/ガリシア人”と呼びます。

 

 海のないマドリードで海産物が食べたくなったらガリシア・レストランへ行きます。スペイン人はタコを食べるならガリシアのタコと言います。パエジャの本場はバレンシアですが、エビ、カニ、ムール貝をふんだんに使うガリシアの魚介パエジャも人気です。サンティアゴ巡礼で有名なサンティアゴ・デ・コンポステーラはガリシアの州都です。独自の言葉・ガリシア語を話すのはケルト人の血が混ざっているからです。ガイタ(gaita)と呼ばれるバックパイプを奏でるのもケルト音楽です。ガリシアサッカーチームのセルタ(Celta)もケルト人の意味です。アパレルメーカーのZARA(日本ではザラですがスペインではサラと発音します)はガリシアの大企業です。

 ZARAがガリシアで生まれたのはそれなりの理由があります。夫が漁に出ている間は主婦の手は空いるので多くの女性が服を縫いました。今は世界中に縫製工場を持つZARAですが地元の工場をとても大切にしています。賃金の安さだけで工場能力を評価せずに自分たちのアイデンティティーも大切にします。彼女らはその工場で働くだけではなく仕事前やその後は浜で貝を採ります。スペイン一の働き者が集まっているのがガリシアです。

 僕がガリシアの村で夏を過ごした時の話ですが、彼らは自給自足です。お隣さんに「近くにコンビニある?朝のミルクのため」と聞いたら「朝、鍋もっておいで」と言われました。朝食前に持って行くと鍋に絞ったミルクをくれました。普通のサラリーマンの家でも猫の額程度の庭があれば野菜を植え、もう少し広ければ鶏はもちろん牛も飼ってミルクを絞ります。もちろんその生ミルクは飲む前に煮沸しました。

 

 無駄遣いをしないのもケルト人の血でしょう。南欧とはかけ離れたスペイン・ガリシアを味わうには旅ではなく滞在をお勧めします。そして政治家を出すのが多いのもガリシア州です。今のスペイン国会の野党は前記したガリシア州議会選に勝ったPP党ですが、その党の前身AP党を造ったのはガリシア出身のフラガ氏です。フランコ総統もガリシア出身でキューバのカストロ議長の父親もガリシア出身です。前首相のラホイ氏も次期の首相候補のヘイホー氏もガリシア人です。ガリシア州の政治が与えるスペインの政治への影響力は大きいです。

辣な風刺画:エデンの園を追われるアダムとイブのようにガリシアから追われたサンチェス氏とディアス氏(獲得議席数0のスマル党)(El Mundo)

 政治ですが、サンチェス首相は退陣を考えておらず、サーカスの綱渡り状態の内閣を続けるつもりです。ですが今、マスコミはそのサンチェス氏を首相にした影の立役者・アバロス氏(Abalos)の汚職問題で大騒ぎです。マスコミが“コルド事件/Caso Koldo”と名付けた汚職事件はアバロス氏の右腕コルド氏がした“マスク汚職”です。2020年のコロナウイルスの時ですが、ヨーロッパ連合(EU)は特別医療費(マスク購入費、殺菌剤購入費など)をばら撒きました。サンチェス内閣の当時の大臣たちはそれで私腹を肥やしました。アバロス大臣が中心になり各大臣、社会主義労働者党の州長も巻き込んでやりました。

 

 それを首相が知らない訳がありません。身の回りがきな臭くなったサンチェス首相や社会主義労働者党はアバロス氏を切り捨てました。彼は自分を切り捨てたサンチェス首相と社会主義労働者党と真っ向から争うつもりのようです。党から脱会されても辞職を拒否して国会議員を続けます。お先は真っ暗のサンチェス内閣です。政府にやってほしいのは今月の電気代ガス代の請求書にビクビクする庶民を救うことです。それらの消費税が10%から21%に戻りました(トホホ)。こっちの問題に真面目に対処して欲しいです(ヤレヤレ)。

アバロス氏(El Mundo)

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