マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

スペイン新国王・フェリペ六世

2014-06-23 12:30:00 | スペイン日記
写真はTV1と El Mundoより

フェリペ六世スペイン国王

 2014年6月19日よりスペインはフェリペ六世・ボルボン・ギリシャ国王(FelipeVI de Borbon y Grecia)の時代になりました。日本の昭和から平成へ変わった時のようなものですが、東京ではそれなりの儀式が続いたのではないでしょうか?


王宮でのファン・カルロス国王の退位の式典

 スペインは“あっさり”でした。2回式典がありましたが、それも簡素なものでした。前日の18日、午前中は前国王・ファン・カルロス一世の退位式、夜はブラジル・ワールドカップでスペイン代表の生き残りをかけた、スペイン-チリ戦でした。リオまで応援に行ったマドリっ子たちもいますが、先月のリスボンでのチャンピオン・カップで金を使い果たしたので(マドリッ、マドリィ、マドリィ~♪)、3万人がベルナベウ・スタジアムの大画面の前に集まりました。

 だからマラカナン・スタジアムはチリ人サポーターで溢れました。試合結果はご存知のようにスペイン代表は0-2で、これも大敗!前国王と一緒に王者の「退位」です。スペイン代表のデ・ボスケ監督がブラジルへ発つ前から言っていましたが、問題はモチベーションです。選手は皆ベテランなのでそのモチベーションさえあれば2回目のチャンピオンも夢ではないのです。まさしく、その「再び栄光を!」の飢えが欠けました。チリ代表はスペインの試合VTRを繰り返し見て、それだけではなくスペインのポジション変更も研究していたそうです。スペインはそこまでやったのか?勝者のおごりはなかったのか?

 スペイン人と長い付き合いの日本人から見ても、勝って兜の緒を締める、国民性とは思えません。バルのオヤジが「負けるにしても、チャンピオンらしい負け方があるんじゃないのか」と言ってました。屈辱のオランダ戦が終わった夜同様に、お通夜みたいなマドリードの街でした。サヨナラ、ブラジル、です。


退位書にサインする国王とラホイ首相


パパ、39年間おつかれ様、明日から僕がやります、とフェリペ皇太子(まだ)

 おっととうぅ、話は国王のことだった。その18日のファン・カルロス国王の退位式はあっさりでした。政府の要人(160人くらい)が王宮に集まり、王の書いた「退位の願い」を読み上げ、それに該当する憲法の条文を読み上げ、衆参両議会で承認された退位証明に王とラホイ首相が署名をして終わりました。30分もかからなかったです。一応招待客にワインくらいは振る舞われたようですが、居酒屋でやる部長の退職祝いよりもあっけないものでした。


国会議事堂での戴冠式に参加した議員や家族

 翌日のフェリペ六世新国王の戴冠式も退位式同様に質素でした。立憲君主国家なので国会議事堂で戴冠式をします。戴冠式と言っても、新王が冠をかぶるのではなく、冠を置いた横で神のもとに憲法への忠誠を誓います。それを議会で承認するので王位認証式が近いかもしれません。だからスペインの王冠はかぶるためには造られておらず、あくまでも「王の証」なのでデカいのです。


国会議事堂で演説をするフェリペ六世国王と王妃、皇太妃。左下にあるのが王冠です。

 誓いの後、新国王となったフェリペ六世は演説をしました。明確な言葉を使い曖昧な言い回しを避けた、僕ら外国人にも分かるスペイン語でした。内容は、国民それぞれが異なる自治州を造りながら一つのスペインとなり、画一したスペインである必要は無い。そして今日のスペインの抱えている社会問題の深さを分かっているので、21世紀の新生スペインを国民の歩みに合わせて作り上げます、と目うえ視線を避けました。46歳の若い国王の等身大の演説内容は素直だったので、若者たちは「一緒にやっていこうぜ」と思ったようです。


国会前で軍隊の謁見


それを上から


シベレス広場を後にするパレード


沿道の市民同様に立ちっぱなしの新国王

 その後は、ロールス・ロイスのオープンカーでのパレードでした。本来は屋根付きの防弾ガラスの車の方が警備は楽ですが、新王自から前日に決めたそうです、いい天気なのでオープンカーにしましょう、と。せっかくオープンカーにしたのですから、立っている沿道の国民同様に自分も立ち続けて手を振りました。レティシア新王妃は横で座っていました。国会議事堂から3, 4キロ離れた王宮までのパレードでしたが、沿道には旗を持った国民で埋まりました(でも、4年前のスペイン代表のワールドカップ・パレードには負けましたね)。王宮のバルコニーから国民に新しいフェリペ六世・ボルボン・ギリシャ王室を披露しました。


6月の陽光が似合う若いスペイン国王ファミリー


王宮前のオリエント広場に集まった人々

 レティシア王妃、レオノール・アストゥリアス皇太妃、ソフィア王女が並びました。後から、退位したファン・カルロス前国王夫妻が加わり、この6人がスペイン・ボルボン・ギリシャ王室で、他は全て王の家族です。王宮でのレセプションには3000人近くが集まりましたが、今回は時間と費用の関係で外国のVIPや王室の招待は取りやめになりました。国民の手前、不況時のスペインを考慮して、式典は質素に済ませました。


旗で埋まった王宮前


王宮のバルコニーから手を振る新旧国王


列をつくる招待客と握手をする新国王夫妻

 招待されたのはスペインの政界、財界、司法の人々ですが、もちろん、文化人や芸能人、闘牛士もスポーツ選手も呼ばれました。その3000人の招待客を迎え入れるに、フェリペ六世国王夫妻は立って一人ひとりと握手をしました。その歓迎の仕方も新国王が決めましたが、握手を交わしながら全員が国王夫妻の前を通過するのに2時半もかかりました。金は使わずに、真心で迎える式典にしたのは正解でした。新国王は国会での演説、パレード、と半日は立ちっぱなしでしたが、体力のあるスペイン人だから出来ました。大雑把に言えば、スペイン王家はハプスブルク王家とボルボン王家の二つの血を継いでいますが、窮屈な感じの王室ではなく普段から庶民との距離は近いと思います。

 新しい王制となりましたので、国旗の紋章が変わり肖像画もコインも変わります。肖像画と言えば、18年前にファン・カルロス国王夫妻がラ・マンチャの画家アントニオ・ロペスに肖像画を依頼しました。画料30万ユーロ(4千万円)はすでに支払い済なのにまだ描き終わらず、国王は退位してしまいました。今年の秋には仕上がるようですが、18年間!!ですよ!仕上がってもどこに飾るのでしょうか?ロペスは新国王夫妻の肖像画も注文を受ければ描く、と言ってますが、自分の寿命と筆脚を考えたほうがいいです。


ロペスが18年間描いている前国王夫妻の肖像画

 しつこいようですが、またブラジルの話です。ヨーロッパチャンピオン2回、ワールドチャンピオン1回とこの6年間は王者でいたロホ(Rojo/スペイン代表のユニホームです)の名に恥じない試合を6月23日のスペイン-オーストラリア最終試合にスペイン人は期待をしています。スペイン人の気持ちが伝わる写真一枚を最後に載せますが、引き分けでもいいからと神に祈るのみです。なんでここまで転落したのか?と唖然としているマドリっ子たちです。


どうしょうもないけど、唖然としています。
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