勝利を祝うPP党
7月23日のスペイン総選挙は国民党PP(ペェペェ)が勝ちました。PP党は保守党ですが、中道右派路線を今回の選挙ではスローガンに挙げました。スペイン国会の議席数は350なので過半数の176議席数取れれば安定した政治ができます。PP党は136議席を獲得し、ライバルの社会主義労働者党PSOE(ペセオエ)は122議席でした。ここまではPP党バンザイの話ですが、選挙前のメディア予想ではPP党146議席、PSOE党110でした。つまりPP党は予想を10議席下回り(がっくり)、PSOE党は12議席上回りました(大喜び)。
カタルーニャ州とバスク州で票を伸ばしたのでPSOE党は予想を上回る議席数獲得となりました。さて選挙の後は国会での首相選です。それには176議席が必要です。PP党の首相候補はヘイホー氏(Feijóo)でPSOE党はサンチェス氏(Sánchez)です。サンチェス氏はスペイン現首相です。その議席数に達しなくてもライバルの党の議席数を上回り、他党全てが棄権票を出せば首相になれます。しかしそれは夢の話です。
ヘイホー氏
ここで必要になるのが“お仲間”です。PP党は同じ保守系の右翼ヴォックス党(VOX / 33議席)と合わせれば169議席、小さい民族党にも頼めば171議席を確保できます。PSOE党も左翼連合のスマル党(SUMAR / 31議席)と合わせれば153議席です。“お仲間”の民族党を集めれば172議席に なります。“お仲間”とはカタルーニャ州独立派のエスケラ党(ERC)、テロ集団エタ(ETA / バスク独立戦線)のビルドゥ党(Bildu)です。
今回は同じカタルーニャ州独立派のジュンツ党(Junts)が首相選のキーポイントとなります。ジュンツ党首プイデモン氏(Puigdemont)はスペイン司法を逃れてベルギーに亡命中です。ジュンツ党は党首の恩赦と引き換えでサンチェス首相に票を入れるか棄権をするつもりです。彼らが加われば過半数の176を超え179議席になります。反乱者のジュンツ党やテロリストのビルドゥ党と組むのは社会的常識に欠けるだけではなく「政治的モラル」にも欠けます。でも首相の座にしがみつくサンチェス氏はそれをするでしょう。
このような状況ではPP党は今回の首相の座はあきらめて、サンチェス首相を続投させるのが得策のようです。2024年はサンチェス内閣がEU(欧州連合)と交わした社会改革が始まります。補助金を受け取るためですが、年金の改革や自動車専用道路の通行税徴収などは国民の反感を買うのは目に見えています。何も今“火中の栗を拾う”ことはありません。ここでは自分で蒔いた種はサンチェス首相に刈らせるべきです。PP党は5月の地方選挙で60%を超える地盤を造りました。今回の総選挙でも上院(SENADO)の議席数は過半数以上を獲得しました。
国会で法案を可決するためにはサンチェス首相は“お仲間”にお願いをするしかありません。それが上院で否決されたら国会で再審議、再評決で再び“お仲間”にお願いです。そのようにして決まった法案を執行するのが州議会なら、そこでもPP党は反発ができます。サンチェス内閣は疲労がたまっていきます。4年間は持たないでしょう。数年後に内閣不信任案を出し総選挙に持ち込むのが得策です。それらを見越して、サンチェス首相がヘイホー氏に首相の座を譲るとは思えません。8月中旬には誰がスペイン首相か? が決まります。決まらなければ再び総選挙です。
サンチェス氏