マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

スペインもコロナウイルスに襲われています。おわり

2020-06-26 11:00:00 | スペイン日記

バルはまだ人数制限中です(マヨール広場のバルのテラスのテーブルもこのように測って2メートル離しました)

 やっと非常事態令が解除されました。長い100日間でした。スぺイン人の友達は早速マドリードから出ていきました。田舎のオヤジやオフクロの顔を見てくると他県の村に帰へったJ君、セゴビア県に持っているセカンドハウスの様子を見に行ったA君、地中海の浜辺へ泳ぎに行ったF君、皆あたふたと出かけました。

 

 どこへ行くところもない僕はマドリードに残っています。ぶらりと街を歩いていて思ったのはチャリンコが増えたなぁ、です。車の減ったマドリード市内は自転車がスイスイと走れますし、若い人はメトロやバスの人込みを嫌がります。でも自転車を買いに行っても売り切れです。仕方がないので古い自転車を引っ張り出して修理屋へ持っていっても直ぐには直して貰えません。自転車修理屋は仕事が三倍に増えたそうです。

 

 コロナウイルス禍は「風が吹けば桶屋が儲かる」も生み出しました。反対に儲けが出ないのが、まだ店内や屋外の客の数が制限されているバルです。前の客が出るまで入れませんしテラスも座れません。僕はこの炎天下、そこまでしてバルで生ビールを飲みたくはないので、都心の飲み屋街へまだ行っていません。こうなると日本にはどこにでもあるビールの自動販売機が夏の都会のオアシスに見えてきます。ただ僕はビールの泡が好きなのでコップ付きのビール自販機が欲しいです。

 

 スぺイン人の中にはまだ人込みは避けたい、と必要以外は外出をしない人もいます。それはあくまでも見知らぬ他人との接触を避ける為ですが、これが身内となると全く話が違います。もともとハグやキスが習慣のスペイン人は家族とか友達と再会をしたら、喜んで抱き合います。初めはマスクのうえからチュツチュツしていますが、そのうちにマスクもずれて肌と肌がくっついています。もう2メートルのソーシャル・ディスタンスもへったくれもありません。

 

 大方のスぺイン人は今回の新型コロナウイルスで初めてマスクを付けました。僕はのどが弱いのでマスクをして寝ます。そのために昨年帰国した時にも日本から100枚ほどマスクを持ってスペインへ戻りました。日本ではスーパーでもマスクを置いてありますが、スペインのスーパーにはありませんでした。ところがワクチンができるまではマスク着用が義務付けられたので、今は置いてあります。10枚入りパックが6ユーロ(750円)です。

ブルーのマスクがスぺイン人用、白が日本人用

 写真のマスクは二つとも中国製ですが、ブルーはスペイン人用、白は日本人用です。縦幅は同じですが横の長さがスペインのは僅かですが、長いです。ところが広げると(着用すると)スペイン(ブルー)のはデッカイと思いませんか? 鼻の高さの違いなのか、僕がスペインのマスクを付けて寝ると朝は外れています。

広げるとスぺイン人用はデッカイです

 ところで、南のアンダルシアはもうすでに43度です。暑い浜辺で誰でも皆がマスクを付けるとは思えませんが、もししたとして、このブルーのマスク顔が浜辺に並んだら笑えます。警察はドローンを飛ばしてマスク着用の監視をすると言っていますが、そこまでするか!です。ちなみにマスクはスペインではマスカリージャ(mascarilla)と呼びます。

 

 その浜辺も、勝手にタオル敷いて家族全員で日光浴はできません。歌舞伎座や相撲場の枡席(マスセキ)のように浜辺を仕切りました。一枡に4人までです。ヤレヤレ、です。ある浜辺は老人ゾーンとそれ以外のゾーンに分けました。老人の感染が死につながるのが今回の新型コロナウイルスの怖さなので、老人の一人の僕にもその浜辺の市役所の好意は分かります。でも、誰が爺さん婆さんの水着姿に囲まれて楽しいでしょうか?

 

 海のないマドリードはプールですが、そのプールも厳しい人数制限がされます。ちなみに、うちの共同プールも今年は初めて人数制限になりました。一緒に泳げるのは16人までです。隣人たちは全部で22軒ですが、24時間オープンなのでノープロブレムです。僕が泳ぐ午前中はたいてい僕一人です。もちろんプールは泳ぐためですが、人数制限をされると日本の銭湯っぽいです。まぁ、体を冷やすか温めるのか、の違いです。

 

 その首都マドリードですが、国際空港と言う問題を抱えています。ヨーロッパ人のリゾート客はスペインのリゾート地に自国からの直行便があるので問題はありません。マドリードのバラハス空港は24時間オープンのスペインの大玄関です。大方の外国人観光客はマドリードで入国か乗り換えです。ここを通してスペインにコロナウイルスが入り出ていきました。マドリード州長・アユソ氏(Ayuso)はサンチェス内閣に出発国でのコロナウイルス検査を義務付けるように要請しています。観光業はスペイン経済の大黒柱なので規制をどこまで押し通せるか?です。

 

 マドリード空港は検査員、警官、医者などを増員中ですが、出るツーリストも検査しないと搭乗できないのでその数が半端ではありません。まだEU内のツーリストだけなのに、検査・通関に2時間かかっています。これが世界のツーリストで溢れるようになったらどうなるのでしょう?

 

 再発が怖いマドリードを捨てて、今のうちに疎開する手もあります。今回の“引きこもり100日間”で食料品は滞らずどこででも手に入るのが分かったので、どんな田舎の村でも今から引っ越してしまえば溶け込めそうです。スペインに残っている住民50人程度の村の問題はWi-FiATMです。まぁ現金と公衆電話(あれば)でどうにかなるでしょう。

 

 マドリード州の北にもそのような村が点在しますが、感染者がゼロでした。非常事態令が出されるかもしれない、と噂された時点で村長が村へ入る道にトラクターを置いて塞いでしまいました。それが法的に許されるのかどうかは知りませんが、村民はウイルスから救われました。

 

 サンチェス首相は厳しい規制を敷いたので100日で新型コロナウイルスをコントロールできた、と自画自賛しています。そうではなくて、ヨーロッパでも一番長い100日間もの非常事態令を続けなければウイルスをコントロールできなかったのは、貴方の責任でしょう!です。一番の失策は非常事態令を出すのがひと月も遅れたことで、遅くても2月中に出すべきでした。

 

 38日の国際女性デーは全国で大規模のデモ行進をしてしまいました。これで一気にコロナウイルスが広がりました。結局非常事態令が出たのは314日でした。その3月ではマスクは不要です、と言っておいて、今は手のひらを返したようにマスク着用が義務付けられました。しないと罰金はやりすぎです。

 

 こんな政府の言うことには誰も信じなくなったので、コロナウイルスの死亡者数・28.313人を誰も信じません。この100日間のスペイン全土の死亡者数は43.300人なので、15千人程の方々が交通事故や他の原因で亡くなったことになります。でも外出禁止の間は誰も車は運転しませんでした。どうも、このサンチェス内閣はコロナウイルスでの死亡者数世界ランキングにスペインが上位に入らないように、数字を操作しているように見えます。世論調査結果の数字も操作するくらいですから、何でもやるでしょう。

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スペインもコロナウイルスに襲われています。その4

2020-06-04 13:00:00 | スペイン日記

6月の太陽は真夏の輝きです

 スぺインは夏の太陽になりました。マドリードの気温はまだ30度を少し超えるくらいですが、日差しが強いので日中のマスクが辛くなりました。もう90日間も非常事態の状態が続いていますが、先週より区のロックダウンから州のロックダウンに緩和(?)されました。それまでは自分の住んでいる区や市や村からは外には出られませんでした。やっとマドリード州内の移動が自由になったわけです。でも、隣の州へは出られないので、トレドへ遊びに行ったり、セゴビアへ子豚の丸焼きを食べに行ったりはできません。

 

 スぺイン国内の移動が自由になるのは6月21日からです。7月1日からは国境閉鎖も解除されるので、海外渡航も自由になります。僕は早速、4か月振りに床屋に行ってきました。「夏カット」にしてもらったので、首の後ろに風が通って気持ちがいいです。僕の行く床屋は郊外の「V村」にあります。マドリードの中心地・ソル広場から20㎞離れた村です。なぜ?そんな遠くの床屋へ行くのか?は話が長くなるので今回は飛ばします。初めての床屋へ行くと「お客様、どのようにカットしましょうか?」となります。残っている髪も少ないので、いちいち注文を付けるほどの髪型ではありません。

 

 去年、帰国しているときの話です。個展のオープンにはお客様が来られるので、小ぎれいにしようと宿泊マンションの周りで床屋を探しました。東京の神保町ですが、昔ながらの床屋が見つかりませんでした。あの“赤白青のねじり棒”はありませんでした。見つかったのがデザイナーズカットと言うのでしょうか、ヘアーサロンでした。先生自らカットしてくれて、女性スタッフの肩もみも入って6000円でした。僕がもう15年くらい通っているスぺインの床屋は主人一人でカットして、マッサージはありません。ねじり棒もありません。

 

 主人の名前はデシデリオさんですが、客は皆“デッシー”と呼んでいます。もう50過ぎです。2か月ごとに通っています。椅子に座ったら「デッシー、夏カットね」と言えば、プール用に短くカットしてくれます。冬は心持ち長めなので「デッシー、冬用に」と頼めば事足ります。春夏秋冬と通いますが、それだけのスぺイン語で事足りるのは“ガイジン”にはリラックスできます。デッシーの床屋はチップも入れて2000円でおつりが来ます。

 

 カットは30分もかかりませんが、今は、その後が大変です。ハサミからバリカン、櫛まで次の客のために消毒をしなければなりません。椅子も殺菌します。今は店内でのマスク着用と手の消毒が義務付けられたスぺインです。話し相手と2メートルの間隔をとれない場合もマスク着用です。メトロやバスもマスク無しでは乗せてもらえません。床屋の後は、村の友達とバルのテラスで落ち合って、マスク姿で生ビールを飲みました。

スぺイン人もマスク着用が当たり前になりました

 マドリード州内のバルはまだ屋外のテラスしか営業ができません。屋内は禁止です。不便な毎日のうっ憤を彼とサンチェス首相にぶつけて、首相をののしりながら飲みました。輝く太陽の下ではビールが一番です。スぺインはまだホテルもバルも閉まっています。観光業と飲食業がストップしたので、一時的な失業者が急増しました。日産がスぺインからの撤退を決めたように、他の外国企業の閉鎖や事業縮小も出てくるでしょう。完全失業者が増えるのは避けられません。

 

 家族全員が失業中は100万所帯もあります。生活苦の庶民も急増しました。お手伝いさんや老人の世話で日銭を稼いでいた人たちはロックダウンで仕事へ行けませんでした。収入がゼロの家庭は60万です。街の救済施設には食料品の配給を受ける市民の長い列が毎日できます。

 

 でも、助け合い精神が旺盛なのがスぺイン人です。救済施設の倉庫には寄贈された食品が溢れています。13万人のスペイン人がそのおかげで生き延びています。3月に政府は救済金案を出しましたが、まだ誰も救済金を受け取っていません。法的に効力のある非常事態令は国民を縛り付けるだけではなく、国会の審議を通さずに決めることもできます。スピードが不可欠なときの独裁令です。サンチェス首相は何のために非常事態令を出したのでしょうか?サンチェス内閣は船頭が多すぎます。

 

 新型コロナウイルスが落ち着いたら増税が襲ってきます。赤字財政の上にコロナ対策のために借金が倍増したスぺインはお先真っ暗ですが、国民は至って明るいです。スペイン人の頭の中は、6月の太陽を浴びて夏のヴァカンスの夢でパンパンに膨らんでいます。世の中ってどうにかなるものです。

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