Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

い、き、た、い。

2012-08-19 00:15:00 | コラム
WOWOWで黒澤の全作品がハイビジョン放送中なので、高めのブルーレイに最高画質で録画している。

最低でも3度、最高では20度ほど観返しているものばかりで、
後者は『酔いどれ天使』(48)と『用心棒』(61)と『天国と地獄』(63)を指しているのだが、この三作品は目を閉じれば「頭から尻まで」の映像が自然と脳内で再生され、1度も観たことのないひとに対し「弁士であるかのように」物語ることが出来るほど、完全に自分のものにしている「つもり」、、、である。

先日―。
ちょうど晩飯時に『生きる』(52)が放送されており、ビールを呑みながら再鑑賞した。

いつもは脇にまわる志村喬が堂々の主演、市役所の市民課長「渡辺勘治」が胃癌であることを知り、数日はヤケを起こすも、「まだ私にも、出来ることがある」と住民たちが要望していた「公園の完成」に情熱を注ぎ込む・・・という物語。

名作の誉れ高いが、個人的な評価は「ちょうど真ん中」くらい。
初めて観たのが中学生のころで、勘治さんの「あのー、」「そのー、、」という「おどおどした」喋りかたに不快感を抱いてしまったからである。
大事な大事なキャラクター描写のひとつであるのに、黒澤と志村さんには申し訳ないと思う。
しかし黒澤ダイナミズムの凄さが分かりかけた年頃だったからね、ガキというのはそういうものである―と開き直ることも出来る。

以来、脚本執筆の参考―勘治さんが死んだあとの展開が、この映画の白眉―にと観返したことはあったけれど、それでも再評価しようという気にはならず、自分にとっては相変わらず「ちょうど真ん中くらい」の映画だった。

それはそうと。
黒澤自身も本作の出来に納得していなかったようで、後年「あまり語りたくない映画だ」と発言しているのが、意外といえば意外。
そんな風に発したこと、『生きる』以外になかったのではないか。

数年前まではフランク・ダラボンあたりが監督を担当し、トム・ハンクスでアメリカ版のリメイクが制作される―というニュースが聞こえてきたが、あれはどうなったのだろう。
亜流が沢山生まれたので、新味に欠けるといえば欠ける、、、ということが、リメイクが進まぬひとつの要因かもしれない。

さて。
ビールを呑みながらも「相変わらず勘治さんの喋りかたは、イライラするな」と思って観返していたのだが、
前述した勘治さん亡きあとの展開から、いままでとはちがう感情に襲われ始めた。

とくに、住民たちの「無言の弔問」場面で。

ほとんどが主婦だが、彼女たちは遺影を見つめ続けるだけで、(すすり泣くものは居るが)誰ひとりとしてことばを発しない。
その光景を見て、遺族たちは意外という表情を、助役(と、その仲間たち)は苦々しい表情をする。

このあたりで落涙し・・・
こうなってくると、もう止まらない。最後のほうは、もうほとんど号泣といっていいほど泣いた。

こうして「ちょうど真ん中くらい」の映画は、瞬時にして大傑作と化す。

いままでなにを観てきたんだろうと、自分が恥ずかしくなった。
黒澤信者なんて、自称する資格はなかったのかもしれない・・・などと思った。


まぁでも。
「つまらんと思っていた映画を、後年になって面白く感じる」その逆に「モノスゴ好きだった映画のはずなのに、大人になって観返したら、なにが面白いのか分からなくなった」という現象は、「よくあること」ともいわれている。

それまでに積み上げてきた人生が反映された結果―などと解釈されることが多く、そういうことなのかもしれないなぁ、、、と。

とくに自分の場合、黒澤とスコセッシの映画に関しては、物語そのものより「作劇」に注目し歓喜することが多く、そういう意味では「よき観客」といえないのかもしれない。

『生きる』も脚本にばかり注目し、かつては「脚本のつくりは、凄いけど、、、」というような評価をしていた。
いまごろになって初めて、物語そのものに目を向けることが出来たのだ。


あぁ無駄に歳を喰ったなと。
なにが映画小僧だよと。

久し振りに、落ち込んだよ。
自意識の、ダメダメさ加減に。

やっとのことで、精神に毛が生えてきたのかもしれない。

いままで「ツルッツル」だった、、、ということだから、これは映画小僧として「かなり」恥ずかしいのだよね。


※なぜこの曲を流したのか―という疑問は残るが、編集そのものは優れている「誰だか知らないものによる」黒澤のトリビュート映像。




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コメント (2)
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