セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「グッバイガール」

2012-04-20 22:33:32 | 外国映画
 「グッバイガール」(「The Goodbye Girl」1977年・米)
   監督 ハーバート・ロス
   脚本 ニール・サイモン
   音楽 デイヴ・グルージン
   出演 リチャード・ドレイファス
      マーシャ・メイソン
      クィン・カミングス

 1970年代を代表するラブコメの一つだと思います。
 R・ドレイファスもマーシャ・メイソンも、今の所、この作品が頂点だったので
はないでしょうか。
 それ位、二人の演技は良かったと思います。
 速射砲の撃ち合いみたいな台詞の応酬は見事ですし、「リチャード3世」の
舞台初日の後、控え室で見せるドレイファスの表情は絶品でした。
 脚本はアメリカを代表する劇作家N・サイモン。
 都会の片隅で起こる個性的な男女の物語を書かせたら、世界を見回してみ
ても東の正横綱を張れる人。
 オシャレなセンスと、スクリュー・ボウルコメディのような台詞のやり取り、そ
こで揺れ動く男と女の心模様。
 この作品では、僕の好きなN・サイモンの一面が遺憾なく発揮されています。

 捨てられグセの付いた子持ちの女ポーラ(M・メイソン)
 いつものように終わった3人の生活。
 そんな雨の夜、ポーラのアパートに見知らぬ男エリオット(R・ドレイファス)が
突然訪ねて来ます。
 「俺が、今ではこの部屋の借主だ契約書もある、中へ入れろ」
 スッタモンダの末、仕方なく部屋へ入れるポーラ。
 始まるマシンガン・トークの応酬。
 ポーラは、とても美人とは言えない、そろそろ年齢的限界に近づいたバック・
ダンサー。
 エリオットは髭面で少しむさ苦しいけど、ようやくオフオフ・ブロードウェイで主
役を掴んだ売れない役者。
 そんな二人が反発し合いながらも、次第に惹かれ合っていく・・・。
 もう、それはそれはお決まりのラブコメ・パターンなのですが、N・サイモンの
脚本を元に緩急自在に物語を語っていくH・ロスの腕は一流です。
 安心して物語に身をゆだね、二人の成り行きを見守っている自分がいるん
です。
 H・ロスも、この頃が一番脂が乗ってたのではないでしょうか。
 「ボギー!俺も男だ」、「愛はひとり」、「愛と喝采の日々」、いずれ劣らぬ秀
作を発表し続けていました。

 いがみ合う男と女だけでは、すぐに話が膠着してニッチモサッチモいかなく
なります、ロード・ムーヴィなら話自体を転がして、その都度、誰かを介入させ
ればいいのですが、この映画のようにアパートの一室が主な舞台だと、膠着
した話を次へ動かす切っ掛けに誰かが必要となります。
 「恋愛小説家」(1997年・米)では、この役割をグレック・キニアと犬が担っ
ていましたが、この作品では、ポーラの娘ルーシーを演じるクィン・カミングス
が担います。
 オシャマで、ちょっとシニカル、それでいて母親思い、これも、よくあるパター
ンの女の子ではありますが、とにかく上手い。
 芸達者なドレイファスやメイソンに負けていない、本当に向こうの子役は大し
たものです。
 上質なラブコメを観てみたいと思ってらっしゃる方がいらしたら、この作品な
どはいかがでしょうか。

 「グッバイガール」とは、まるで「使い捨ての女」みたく、直ぐに「グッバイ」が
付いてくる不運な女という意味もありますが、わざわざ「ガール」としたのはヒ
ロインの恋愛に対する発育不全、少女みたく臆病なクセに直ぐに燃え上がる、
地に足の着いてない愛情、自分の夢ばかり追い求める、そんな少女性にオサ
ラバという意味も込められてるのだと思います(相変わらず、人の金を当てに
して模様替えに熱中してますけど)。

 名作といっていいほどの秀作です。

 

 

 
 
 
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4 コメント

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こんにちは☆ (miri)
2012-07-06 10:52:21
>1970年代を代表するラブコメの一つだと思います。

ですよね~♪
78年(高3)に見た映画のナンバー1でした。
その頃、一年少しの間に3回も映画館で見ました。
それからずっと長い間見る機会がなく(チラ見はあり)
一昨年やっと再見した記事があるのでURLに入れました。
お時間頂けたらお願いします☆

>R・ドレイファスもマーシャ・メイソンも、今の所、この作品が頂点だったので
>はないでしょうか。

まぁそうでしょうね~。
残念だけど、今後は・・・でも助演でチラチラ見かけると、嬉しくなります。

>脚本はアメリカを代表する劇作家N・サイモン。

何で別れちゃったのかな~?と思うけど
私生活とは別なんでしょうね~。

>とにかく上手い。
>芸達者なドレイファスやメイソンに負けていない、本当に向こうの子役は大したものです。

この子はこの作品だけで女優さんにはならなかったようですね~。
でもホントに「ルーシーは26歳」って、今思うと胸キュンです♪

>H・ロスも、この頃が一番脂が乗ってたのではないでしょうか。

日本では「愛と喝采の日々」も同年公開だったので、大好きになりました。
高3の一年間は他の女性映画も含めて
(ジュリア、アニー・ホール、Mr.グッドバーを探して、
さよならの微笑、マイ・ソング、雪物語、真夜中の向こう側・・・)
女性映画づくしの一年間でした。

>安心して物語に身をゆだね、二人の成り行き>を見守っている自分がいるです。
>名作といっていいほどの秀作です。

記事に書かれてあること、全部共感です!!!
主題歌が、たまに耳の奥から聞こえてきます。(特に雨の夜)
このような良い作品を、多くの人に見てもらいたいですよね~☆☆☆

鉦鼓亭さんは、大学4年生くらいでしたか?
返信する
社会人2年目、‘80.2月、近所の名画座が初見です (鉦鼓亭)
2012-07-07 02:23:29
miriさん、いらっしゃいませ!
コメント、ありがとうございます。

いい映画ですよね、5年位前にDVD買っちゃいました。
この前、ウチに来るラブコメ好きの営業さんに貸したら、えらく気に入ってましたよ。
(今まで貸したDVDの中で一番のヒットだとか)

ラスト、電話の音が鳴ってルーシーが振り付きで、
「このベルの音、不吉な予感がする」(笑)から、エリオットの
「ギターを濡らすな!」
そこへ、優しい歌声でテーマ曲が流れ出す。
このシーンは何度見ても、心が暖まります。
(ポーラの後ろで、ルーシーが一生懸命、母親の支度に駈けずり回ってるのが、また健気なんですよね)

「グッバイガール」と「ウィークエンド・ラブ」が、僕の‘70年代ラブコメの双璧。
(「フォロー・ミー」をラブコメの範ちゅうに入れなければ)
「ウィークエンド・ラブ」の方が笑えるけど、ジンワリくるのは「グッバイ・ガール」かな。
どちらも雨とタクシーで始まって雨とタクシーで終わるのが共通しています。
(「ウィークエンド・ラブ」は何故か今もって未DVD化で、待ちすぎて既に「ろくろ首」状態~笑)

子役繋がりで言えば「アリスの恋」も、ちょっと落ちるけど、好きな作品です。
向こうの子供は、本当に子役っぽくなくて凄い。
M・メイソン、G・ジャクソン、E・バースティン、(M・ファロー)、どうも僕は、顔が個性的な女優さんの恋愛モノが好きみたいです。(笑)

エリオットの口説き文句。
「早くしろ!メーターが回ってる!!」
落としに掛かる時は、いつもレンタル。(笑)

「ジュリア」、「愛と喝采の日々」、「アニー・ホール」は見ています。
確かに女性映画でした・・・。(汗)
H・ロスでは「ボギー!俺も男だ」と「愛はひとり」を見直したい。
どちらも未DVDなんですが、特にC・バーゲン主演の「愛はひとり」は、もう一度見てみたい作品のベスト10に入っています。

一年少しの間に3回も映画館で見ました>本当に好きな映画って、そうですよね。
僕も「フォロー・ミー」なんか、名画座巡礼みたいでした。

多くの人に見てもらいたいですよね>そうなんですよ!!「午前10時の映画祭」に選ばれなかったのが非常に残念でした。
返信する
連日お邪魔しま~す (マミイ)
2013-10-16 20:32:20
>安心して物語に身をゆだね、二人の成り行きを見守っている自分がいるん
です。
ラブコメはベタな方が安心して観れますね。
ホント、気楽に二人を見守る事ができました。

確かに、ルーシーがいないと
二人だけではちょっときつかったかも。
(最初はポーラの事苦手でした(^^;)
『恋愛小説家』のグレッグ・キニアと犬も納得!です。

あとから振り返ってみたら
二人の出会いから、屋上でのシーン、そしてラスト
すべて雨が降ってるんですよね。
どちらかが雨男もしくは雨女なのかしら?と思いました。笑
返信する
どうぞ、どうぞ! (鉦鼓亭)
2013-10-16 23:43:06
 マミイさん、コメントありがとうございます

連日>全然、大丈夫ですよ、3連荘でも4連荘(麻雀用語)でも結構です。

ラブコメはベタな方が安心して観れますね>
手垢で真っ黒な王道を如何に面白く見せるか、脚本と演出の腕の見せ所で、一番、力量の差異とセンスの有る無しが出易いジャンルだと思います。

二人だけではちょっときつかったかも>ツッコミ二人では漫才になりません。(笑)

すべて雨が降ってるんですよね>雨も雪もロマンティックにするのに楽ですから。
雨なら傘を差し出す、自分の上着を彼女に被せる、雪ならマフラーとかコートを貸してあげる。
それだけで絵になりますからね。(笑)
雨の屋上>レンタルで「ボギー」を気取ったりして、可愛い努力が微笑ましいです。
大好きなシーンなんですけど、提灯の飾り付けに雨、が嫌いな「真夜中のパーティー」を思い出しちゃうんですよ。(笑~多分、あれのパロディなんだと思う、ボギーもパロってますから)

miriさんへのレスにも書いたんですけど、この作品、僕の‘70年代ラブコメの「西の横綱」なんです。
ただ「東の横綱」、「ウィークエンド・ラブ」(アカデミー賞4部門ノミネート、主演女優賞を獲得)が、今だ未DVDなので、再見してみない事には、本当に「東の横綱」なのか確信が持てないでいます。
(「大人の物語」なんですけど、何せ、アッケラカンとした正真正銘の不倫コメディー、今観たら、どうなるか自信が持てません)

※「グッバイガール」もアカデミー賞5部門ノミネート、R・ドレイファスが主演男優賞を獲得しています。
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